1.結膜炎ー猫の目が開かないときに考えられる病気と治療
猫の結膜炎の症状
猫が結膜炎にかかると、目やにや膿、涙が多く出て目が開かないという症状が見られます。白目が充血し、頻繁に目をかこうとしたり床や壁に擦りつけたりします。結膜がぶよぶよとむくみ、重症化すると、瞬膜(水平に開く目の保護膜)が腫れて目が閉じられなくなります。
猫の結膜炎の原因
猫風邪などの感染症により、まぶたの裏側にある粘膜(結膜)に、ウイルスや細菌が侵入して炎症を起こします。片目だけ開かないときは、砂やゴミ、目の周りの被毛など異物によって結膜が刺激されている可能性が高いです。
また、猫同士のくしゃみや鼻水、舐め合い、噛み傷から感染する場合もあります。症状が進行すると失明に繋がるので、感染した猫に近づけないことが重要です。
猫の結膜炎の治療法
軽度であっても、自己判断せず必ず動物病院を受診しましょう。治療には抗生物質や抗炎症剤、点眼薬の投与が有効です。被毛が入って炎症を起こしている場合は、目の周りの毛をカットしてあげてください。目が開かないことを猫が気にするときは、擦って悪化しないように、エリザベスカラーを装着しましょう。
2.角膜炎ー猫の目が開かないときに考えられる病気と治療
猫の角膜炎の症状
黒目の部分を覆っている角膜が炎症を起こすと、猫が目をシパシパさせる、目が開かない、本来透明な角膜が白く濁るといった症状が見られます。涙や目やにで目の周りが汚れ、重症化すると失明する場合もあります。また、正常な角膜には存在しない血管が生じるのも特徴です。
猫の角膜炎の原因
猫が角膜炎で目が開かないとき、異物の侵入やケンカでの外傷などが主な原因です。結膜炎や緑内障などを発症している猫が、角膜炎を併発する場合もあります。他にも、アレルギー反応によるものやビタミン不足といったことも原因のひとつと考えられています。
猫の角膜炎の治療法
軽度の場合は、目を洗って清潔に保つことが大切です。内的治療法として、抗生剤や抗炎症剤、飲み薬の内服による治療が有効です。猫が薬を飲まないときは、注射による薬剤の投与もできます。重症化した場合、保護用コンタクトの装着や病院での外科手術が必要になります。
3.角膜穿孔ー猫の目が開かないときに考えられる病気と治療
猫の角膜穿孔の症状
角膜穿孔とは、角膜潰瘍が進行して猫の角膜に穴が開いてしまっている状態です。角膜潰瘍の段階では目が開かない、目を細める、涙が出るといった症状が見られます。潰瘍が深くなり角膜穿孔に進行すると、最悪の場合は失明する危険性があります。
猫の角膜穿孔の原因
角膜穿孔の初期段階である角膜潰瘍は、主に角膜の外傷が原因で起こります。鼻の短い猫は、眼球の露出範囲が広く、誤って眼球表面を引っ掻いてしまうことが多いためです。また、乾性角結膜炎や眼瞼内反症など、基礎疾患がある猫は角膜穿孔を発症しやすくなります。
猫の角膜穿孔の治療法
発症の原因で治療法は異なり、フルオレセイン染色やスリットランプを用いた検査によって診断されます。角膜潰瘍の段階では抗コラゲナーゼ作用のある点眼薬の投与が一般的です。重症化し角膜穿孔になった場合は、動物病院で角膜縫合や結膜有茎被弁術などの外科的治療を行います。
4.角膜分離症ー猫の目が開かないときに考えられる病気と治療
猫の角膜分離症の症状
角膜分離症(角膜黒色壊死症)は、黒目の部分を覆う角膜に黒い斑点が現れる猫特有の病気です。発症すると、薄膜を形成するコラーゲンが茶色から黒色になり、壊死して分厚くなった部分が剥がれ落ちます。痛みを伴い、目が開かない、瞼が痙攣するといった症状が見られます。
猫の角膜分離症の原因
角膜分離症のはっきりとした原因は不明です。ヘルペスウイルス感染症やカリシウイルス感染症など、上部気道感染症と併発する場合が多いため、ウイルス感染が原因のひとつと考えられています。
猫の角膜分離症の治療法
軽度の場合、角膜再生や保護を目的として抗生剤を投与します。症状が悪化し、角質層の深い部分まで進行した場合は、外科手術によって壊死部分を切除する方法が取られます。他にも、角膜を覆うためにフラップと呼ばれる透明の蓋状の器具を用いる方法もあります。
5.緑内障ー猫の目が開かないときに考えられる病気と治療
猫の緑内障の症状
緑内障は、猫の眼球内部の圧力が高まることで起こる病気です。白目の充血、瞳孔の散大、角膜が白く濁るといった症状が見られます。悪化すると、視覚障害によって柱や壁によくぶつかるようになります。痛みを伴う場合は、目が開かない、涙が多くなることも特徴です。
猫の緑内障の原因
通常は眼球内部で一定の量に保たれている液体(房水)が、外傷や水晶体の変異など、目の疾患により過剰に溜まります。これにより眼圧が上がることが緑内障の原因です。緑内障の中でも多く見られるのが、猫伝染性腹膜炎やトキソプラズマ症といった目の病気が引き金となる「続発性緑内障」です。
稀に遺伝的に起こる「先天性緑内障」や、 眼球に異常が無く原因も不明な「原発性緑内障」などのケースもあります。
猫の緑内障の治療法
眼圧を下げるための内用薬、点滴による眼圧降下剤の投与などの内科的治療法があります。内科的治療だけで症状が抑えられない場合、レーザーによって眼圧を下げる手術を行うこともできます。術後は目を擦らないようエリザベスカラーの装着、点眼薬の投与も必要です。
6.ぶどう膜炎ー猫の目が開かないときに考えられる病気と治療
猫のぶどう膜炎の症状
猫の目の内部を覆っているぶどう膜が炎症を起こすと、痛みによって眩しそうに目をしょぼしょぼさせる、目が開かないといった猫の仕草が見られます。白目が充血し、目の中にモヤがかかったように見えることも特徴です。虹彩の色が変化して視力の低下が起こる場合もあります。
猫のぶどう膜炎の原因
棘や引っかき傷などの外傷や、眼や全身への感染症が主な原因です。角膜潰瘍や白内障、目の周辺にあるリンパ腫など、目の疾患と併発して起こる場合も多いです。突発的に起きた場合は、猫伝染性腹膜炎の発症が原因の可能性も考えられます。
猫のぶどう膜炎の治療法
ぶどう膜炎は原因によって治療法が異なるため、まずは感染症の検査や血液検査超音波検査などが必要です。症状に合わせて抗菌剤や炎症剤の点眼薬、内服薬の投与などの治療を行います。
子猫の目が開かないときの原因と対処
生まれたての子猫は、両目が開かない期間中、感触だけで母猫の乳を探しています。一般的に子猫の目が開くのは、生後10日前後や生後16日以内と言われています。その期間を過ぎても子猫の目が開かないときは、目やにが多いか、目に異物が入っている可能性があります。
この場合は、ぬるま湯で濡らしたガーゼかコットンで目元を優しく拭き取りましょう。子猫が暴れてしまうときは、首元をしっかり抑えるか寝起きに行い手早く済ませます。それでも開かないときは、炎症による病気を防ぐためにも動物病院へ連れて行きましょう。
まとめ
猫の目が開かない原因はさまざまな可能性が考えられます。目やにの分泌量や異物の混入などが原因の場合も、放置しておくと目の炎症に繋がります。心配なときは動物病院を受診しましょう。
目の疾患は、他の目の病気を誘発する場合もあります。猫の仕草や目の状態に異常を感じたら、すぐに病院を受診することで重症化を防ぐことができます。獣医さんに症状を伝えるときは、いつ頃気づいたか、通常時との違いを伝えることがポイントです。
日頃から外傷を避けるために爪を短く切る、感染症予防のワクチン接種をするといった対策と合わせて、猫の健康維持を心がけましょう。