猫のトリコモナス症とは?症状や人にうつる確率、治療と予防の方法

猫のトリコモナス症とは?症状や人にうつる確率、治療と予防の方法

猫のトリコモナス症とは、どんな病気なのでしょうか。猫のトリコモナス症の症状や、人にうつる確率、治療や予防の方法についてまとめました。愛猫の健康を守るために、猫のトリコモナス症について改めて確認しておきましょう。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫のトリコモナス症とは?

たんぽぽで遊ぶ子猫

トリコモナスは猫の寄生虫による感染症

猫のトリコモナス症とは、トリコモナス(トリトリコモナス・フィータス)と呼ばれる原虫が猫の大腸に寄生することによって引き起こされる人獣共通感染症です。

トリコモナスに感染しやすい猫

人間では、性感染症の一種である「膣トリコモナス」が有名です。猫のトリコモナス症は、年齢に関わらず感染することがありますが、症状が出るのは免疫力の低い生後1歳未満の子猫とされています。

猫のトリコモナス症の感染率は、9.8%~32%と比較的高いのに対して知名度が低い病気ですが、体力がない子猫が感染した場合、栄養失調などで死に至る可能性もある病気です。

成猫がトリコモナスに感染した場合、免疫力によってトリコモナスを抑え込むことができるため、無症候性のキャリアになることが殆どです。

トリコモナスの感染ルート

猫のトリコモナス症の感染経路は経口感染であるため、多頭飼いやペットショップなどで上記のような無症候性キャリアの猫を毛づくろいしたり、共有トイレで糞便を口にすることで感染が拡大する可能性があります。

猫がトリコモナスに感染した時の症状

子猫と猫トイレ

猫がトリコモナス症に感染した場合の症状は、主に以下のようなものです。

猫がトリコモナス症に感染した場合の症状①下痢

猫のトリコモナス症は、大腸に寄生するため、腸に関わる症状が多く出るとされています。下痢が続き、粘液便や血便が出ることもあります。激しい下痢が続くと、脱水症状を引き起こすこともあるので、注意が必要です。

特に体力のない子猫の場合は、下痢が続くことで栄養失調や脱水症状に陥り、命に危険が及ぶ可能性もあります。

猫がトリコモナス症に感染した場合の症状②肛門の腫れ

猫がトリコモナス症に感染した場合の症状として、上記のような激しい下痢が続くことで肛門が腫れたり、赤くなったりすることがあります。痛みを伴う場合もあり、猫が執拗に舐めることで二次感染の恐れもあります。

猫がトリコモナス症に感染した場合の症状③直腸脱

猫がトリコモナス症に感染することで、慢性的な下痢症状によって直腸脱を引き起こすことがあります。猫の直腸脱とは、肛門の直腸が飛び出してしまう病気のことで、肛門から赤い直腸が目視できるような状態に陥ってしまいます。

猫の直腸脱は、自然治癒することは難しいため、人の手によって何らかの処置をする必要があります。

猫がトリコモナス症に感染した場合の症状④貧血や臭い

猫がトリコモナス症に感染した場合、大腸に寄生したトリコモナスが、血液を吸ってしまうことで貧血を引き起こすことがあります。上記の他にも、便のニオイが強くなることもあります。

ただ、トリコモナス症の症状が出やすい1歳未満の子猫は、環境の変化やフードの切り替えによって、下痢をすることも多く、トリコモナス症と診断されるのに時間が掛かる場合も多いようです。たかが下痢と安心せずに、かならずかかりつけ医に相談しましょう。

猫のトリコモナスは人にうつる?

眠る女性と猫

猫のトリコモナスは人にうつる

トリコモナス症は、人獣共通感染症です。しかし、猫のトリコモナス症は腸トリコモナスであり、人間が感染しても無症状であることが殆どです。症状が出たとしても、軽い下痢や腸炎程度で、トリコモナス症であると診断されることは殆どありません。

トリコモナスが人へ感染する経路

感染経路に関しては、猫のトリコモナス症と同じ経口感染で、トリコモナス症に感染した猫の糞便によって感染します。猫のトイレを掃除した後は、きっちり手洗いをしましょう。

猫のトリコモナス症が人にうつる確率は、生活環境や猫との接し方によって様々なので一概には言えませんが、決して低いものではありません。便の後にグルーミングをした口で、飼い主さんの手を舐めることで感染する場合もあります。

猫がトリコモナスに感染した時の治療法

獣医師と猫

猫がトリコモナスに感染した時の治療法は、以下の通りです。

猫がトリコモナスに感染した時の治療法①投薬治療

猫のトリコモナス症には、内服薬の投与と対症療法を行います。下痢がひどい場合は脱水を起こしてしまう可能性もあります。特に子猫で、下痢が長期化すると低血糖を起こす可能性もあり命にかかわります。再感染が起きてしまうと治療に長期間を要するようになりますので、排せつ物の処理は早めに行い、下痢などで体が汚れてしまった場合は、体力消耗させないように気を付けながら清潔を保てるようにシャンプーすることも必要になります。体調が悪い猫に内服薬を飲ませることは困難ですが、治療するうえで投薬は必ず必要になりますので頑張って飲ませましょう。

猫がトリコモナスに感染した時の治療法②投薬治療

猫がトリコモナス症に感染した時の治療法として、投薬治療が用いられることがあります。主に抗原虫薬として用いられることの多いメトロニダゾール(アスゾール、フラジール)や、チニダゾールなどが投薬されます。

しかし、猫の状態などによって効果を示さないこともあり、強い副作用があることから基本的には、対症治療が優先されます。

猫がトリコモナスに感染しない為の対策

たくさんの子猫とトイレ

猫がトリコモナスに感染しない為の対策法についてご紹介します。

猫がトリコモナスに感染しない為の対策①完全室内飼いの徹底

トリコモナスは、ありふれた原虫であるため、外へ自由に出入りしている猫の場合は他の猫の糞便などとの接触でトリコモナスに感染してしまう可能性があります。完全室内飼いの徹底で、野良猫との関わりや、糞便を口にしてしまう機会を避けましょう。

猫がトリコモナスに感染しない為の対策②定期的な検査

猫のトリコモナス症は、検便によって診断することができます。多頭飼いなど、猫を新たに家族に迎える場合などはトリコモナスが寄生していないかを検査しておくと安心ですね。

トリコモナスの寄生が発覚した場合は、キャリアの猫とその他の猫の食器やトイレを分けるなどの工夫で感染拡大を防ぎましょう。また、人の手に付着したトリコモナスが、別の場所に付着してしまう可能性もありますので、トイレ掃除をした後は必ずすぐに手洗いをしましょう。

猫がトリコモナスに感染しない為の対策③免疫力の向上

猫がトリコモナス症に感染してしまった場合でも、トリコモナスに対抗できるだけの免疫力があれば無症状であることが殆どです。良質な食事と生活環境などを整え、猫の免疫力の向上を心がけましょう!

猫がトリコモナスに感染しない為の対策④消毒

猫がトリコモナスに感染しない為には普段から清潔を保つことが大切です。多頭飼いの猫ちゃんであれば猫の感染症に効果のある消毒液(次亜塩素酸)で食器やトイレなどを清潔に保つようにすると予防に繋がるでしょう。

まとめ

眠る子猫

猫のトリコモナス症の症状や、治療などについてご紹介しました。猫のトリコモナス症は完治が難しく、再発も多い病気です。また、発症率も比較的高い病気なので、激しい下痢が続く場合は注意が必要です。

実際に、ペットショップから引き取った子猫の下痢が治らず、治療に長期間を要したという話も実際にあります。

子猫の下痢が続く場合は、便を動物病院へ持ち込み検査してもらいましょう。猫のトリコモナス症は、人にうつることもあるので、特に小さいお子さんがいるご家庭は注意しましょう!

投稿者

40代 女性 さおり

トリコモナス症は怖いとききました。
そんな矢先に従兄弟の猫ちゃんがトリコモナス症になりました。
すぐに獣医師の治療が始まりました。
下痢と肛門の腫れがひどかったので、点滴をしていただき、お尻には軟膏を塗ってもらいました。一泊入院したあとは、毎日通院して、治療が続いたそうです。
二週間ほどで完治したあとは、元通り元気になりましたが、従兄弟はトイレを消毒したり、大変だったそうですが、無事で良かったです。
投稿者

40代 女性 しまこ

我が家の猫ちゃんを、保護したときトリコモナスに感染している子猫ちゃんでしたので、獣医師の治療がすぐに始まりました。
まずは、抗原虫薬の投薬が始まりました。
あとは、検便を一日2回したり忙しい様子でした。しかし、お薬がよく効いて一晩で寄生虫が便と共に出て、食欲が出てよく食べるようになり、体力もつきはじめました。
そうすると、元気になりまして、一週間目には家に引き取ることができました。それ以来は、大きな病気になることなく、過ごしてきました。体力がつけば病気も遠のくので、日頃から体調管理に注意しなければいけませんね。
投稿者

50代以上 女性 匿名

2歳のシャムとベンガルです。子猫の時から下痢気味で検便もしましたが、ビオフェルミンを飲ませるように指示され。下痢のたびにビオフェルミンを飲ませていました。最近ベンガルが血便迄出るようになり調べたらトリコモナスでした。しかしお薬を飲ませるのに苦労しています。獣医師3人がかりでも泡を吹いて飲ませられません。それでも飲ませろと言われますが一人で途方にくれています。どうすればいいのでしょうか?
投稿者

40代 女性 匿名

5月にペットショップから迎え入れたスコティッシュフォールドちゃんがトリコモナス 腸炎で3カ月間下痢軟便を繰り返し動物病院に通い詰めでした。2回PCR検査をしましたが、駆虫出来ずに、海外からロニダゾールを個人輸入して1週間投与してやっと駆虫できました。

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