猫の療法食とは?
猫に与える食事には「総合栄養食」「間食(オヤツ)」「療法食」「その他の目的食」に大きく分けることができます。その中の「療法食」はある特定の病気に対応したフードのことを指します。
療法食は栄養バランスや成分量などを病気ごとにそれぞれ調節してつくられています。猫も人と同様に年齢を重ねるとともに何かしらの病気にかかりやすくなり、その分食事内容を変えなければいけません。
そのため猫を含めペットも病気に対する治療をおこなうためにはフードによる食事管理が必要です。体に負担がかかる栄養素を制限したり、効果のある栄養素が配合されているなど、病気に合ったフードを与えることが大事になってきます。
猫がかかった病気に合わせて数多くある栄養素やそのバランス比を調節してフードを作ることは非常に難しく、少しでも間違えてしまうと返って病気を悪化させてしまったり、他に何かしらの病気や症状をおこしてしまう場合があります。
そのため病気や症状ごとに調節された療法食が製造されるようになり、各メーカーでも豊富な種類の療法食が販売されています。
猫に療法食を与える時の注意点
獣医に相談してから与える
療法食は一般的な猫用フードとは違い、病気や症状ごとに合わせて栄養素のバランスや量を調節しているフードです。そのため特に病気にかかっていない健康な猫に療法食をあたえたり、間違った療法食を与えてしまうと栄養が偏ってしまい何かしらの病気や症状を引き起こしてしまう恐れがあります。
そのため自己判断で勝手に選んで与えることは猫の健康に害を招く危険があるため、必ず獣医師が選んだ療法食を与えることが必要です。また病気ではなくても元々の猫の体質によっては療法食を与える方がいい場合がありますので、その際も獣医師との相談の上で選択することが大事です。
自己判断で勝手にやめてはいけません
飼い主さんの中には療法食を途中でやめていたり、他のフードに変更していたケースが非常に多いです。
病気によっては療法食を継続して与え続ける必要がありますので自己判断で療法食をやめてしまったり、獣医師の相談もなしでフードを変えてしまうと病気の進行度を早めてしまったり、再び病気にかかってしまう恐れがあるため大変危険です。
場合によっては検査する必要もありますので自己判断で勝手に療法食をやめたり、フードを変更してはいけません。
定期的に診察や検査を受け、給与期間を守る
猫がかかった病気や症状、元々の猫の体質・状態によっては療法食の種類を変更する必要があります。必ずかかりつけの獣医師の指示に従い、定期的に検査や診察を受けることです。
オヤツを与えない
猫用のオヤツ(間食)は総合栄養食や療法食とは違い嗜好性が高く味も美味しいですが、特に栄養バランスや量を調節して製造しておりません。そのため猫に与えるフードを療法食に切り替えていてもオヤツをたくさんあげてしまうと療法食の意味が全くなくなってしまいます。
猫の中には療法食よりもオヤツの方を多く食べていることもあり栄養バランスが崩れてしまいます。基本的にオヤツは与えない方が好ましいですが、もし与える際は量に注意したり獣医師に相談を受けましょう。
1日に与える療法食の量を守る
療法食も総合栄養食と同様に猫に1日に与える食事量が決まっています。
例えば肥満体型の猫が減量のために、カロリーが制限された療法食に切り替えていても、多く与えてしまうと体重が減るどころか増えてしまいます。与え過ぎないように1日に与える給与量を決め、守ることが大切です。
猫の療法食の選び方とおすすめの商品
猫が食物アレルギーを起こさない療養食
人と同様に猫も食べ物によるアレルギーがあり下痢や嘔吐、皮膚の痒みなどの症状が現れてきます。その場合はアレルギー用の療法食に切り替える必要があります。
食物アレルギーをおこす主な原因であるアレルゲンはタンパク質といわれており、特に肉食動物である猫はフードに多くのタンパク質が入っています。通常であればタンパク質は体内で分解・吸収されますがアレルギーの場合は上手くタンパク質を分解することができません。
そのためアレルギー用の療法食は加水分解したタンパク質を使用しています。
また猫は小麦やトウモロコシなどの穀物類を消化・吸収する能力が劣っているためアレルギー症状をおこしやすいともいわれています。そのためアレルギー用の療法食の中には穀物類が入っていない穀物フリーの療法食があります。
ヒルズ z/d
このアレルギー用の療法食は消化性が良い加水分解タンパク質のチキンと米でできています。また皮膚のバリアや被毛の維持を保つオメガ3系・オメガ6系脂肪酸が入っています。
カナガン キャットフード
猫が消化しにくい小麦やトウモロコシなどの穀物類を一切使用していないアレルギー用の療法食です。その代わりに消化が良いサツマイモや乾燥チキンを使っています。またビタミン類やリンの他、皮膚の健康維持を保ってくれるセレンが入っています。
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腎臓病の猫のための療養食
猫が腎臓病にかかった場合は低タンパク質の療法食に切り替えます。5代栄養素の1つでもあるタンパク質は猫の体をつくるエネルギーとして必要ですが、猫の体内に入ったタンパク質は消化・吸収されたあと尿素となります。
この尿素にはアンモニアと呼ばれる有害物質が含まれており体に害を及ぼすため、尿素は腎臓により濾過されて最終的にオシッコとして排出されます。
しかし猫の腎臓の機能が低下すると尿素を濾過することができず、さらにオシッコと一緒に排出されず体内に残ってしまい、尿毒症を引き起こしてしまいます。そのため猫が腎臓病および腎臓機能が低下している場合はタンパク質含有量を制限した療法食に切り替える必要があります。
ロイヤルカナン 腎臓サポートセレクション
腎臓病の猫に対応した療法食で、腎臓に負担をかけないようにタンパク質の量を制限してつくられています。また腎臓の機能が低下するとミネラル成分であるリンが増えてしまい更に腎臓機能を悪化させてしまうため、リンの含有量も調節しています。
またこの療法食のフード粒は外と中の2層構造になっており、2つの食感で食欲に刺激をもたらす工夫をしています。一般の猫用フードと比べてカロリーが約17%も高く調節されています。
ヒルズ k/d シチュー缶
タンパク質は嗜好性が高いため、どうしても低タンパク食の腎臓用療法食は嗜好性が劣ってしまいます。そのためこの療法食は猫が大好きなマグロや鶏肉を使用しており、栄養バランスも考慮して野菜類もしっかり入っています。
嗜好性が高くウェットタイプなので食いつきが非常に良く、シチューのような美味しそうな見た目なところも特徴的です。
下部尿路疾患の猫の療養食
下部尿路疾患は膀胱結石や膀胱炎など、猫の泌尿器系に関わる病気の総称のことであり、猫の下部尿路疾患はFLUTDやFUS(猫泌尿器系症候群)とも呼ばれています。
猫は泌尿器系に関わるトラブルを起きやすく、下部尿路疾患は猫がかかりやすい病気のトップ3に入っています。下部尿路疾患の中で特に特発性膀胱炎や尿石症の発症率が高く頻尿や血尿、排尿痛などの症状をおこします。
猫の体質も関与しますがフードに含まれているミネラル成分の量やストレス、飲水量の低下などが原因といわれています。猫の下部尿路疾患は再発しやすいため専用の療法食による食事管理が必要になります。
ロイヤルカナン phコントロール オルファクトリー
この療法食は下部尿路疾患(ストラバイト結石およびシュウ酸カルシウム結石)に対応しており、尿石症の原因といわれているマグネシウムやリンなどのミネラル成分の含有量やそのバランスを調節してつくられています。また肥満も下部尿路疾患を引き起こす要因でもあるため、この療法食はカロリーを低く調節しています。
ヒルズ c/d マルチケア コンフォート
猫に多く発症している特発性膀胱炎治療を目的とした療法食です。生活環境によるストレスが関与していると考えられているため、この療法食にはリラックス効果のある加水分解ミルクタンパク質を使用していたり、幸せホルモンであるセロトニンをつくってくれるL-トリプトファンが配合されています。
歯周病予防
猫は虫歯になりにくい一方で歯周病になりやすく、全体の約80%が発症しているといわれています。歯に付着している歯垢や歯石が原因であり、歯磨きすることが1番大事なのですが、ほぼ全ての猫は歯磨きが嫌いなため難しいのが現状です。
そのため少しでも猫の歯に付着している汚れを取り除き、歯周病予防目的でつくられた療法食があります。
ヒルズ t/d
この療法食は猫の歯・歯茎の健康を維持させる目的でつくられており、実際に科学的に証明された療法食でもあります。t/dは一般な猫用フードの粒と比べて大きいため、噛むことで歯の表面に付着している汚れを取り除き、歯垢や歯石を蓄積しにくくしてくれます。
毛玉・便秘対策
猫は自分の被毛を毛づくろいする習性をもっています。猫の舌がザラザラと突起状になっているので被毛が絡みやすくそのまま飲み込んでしまいます。毛づくろいした際に抜けた被毛の約3/2は飲み込んでしまい、飲み込んだ被毛は便と一緒に排出されます。
しかし便と一緒に排出されず胃の中にたまると被毛の塊(ヘアボールや毛玉)ができ、毛玉を吐くことがあります。また胃に飲み込んだ被毛が停滞したままの状態だと消化吸収を妨げたり、腸に詰まってしまう恐れがあります。
ブラッシングによる不要な被毛を取り除くことも大事ですが、毛づくろいした際に飲み込んだ被毛を胃にためないように便と一緒に排泄を促すように調節された療法食を与えましょう。
消化器サポート 可溶性繊維
この療法食は消化性が良い原材料を使用しており、毛玉により胃腸の働きが低下している場合や便秘体質の猫に対応しています。
またサイリウムやフラクトオリゴ糖などの可溶性食物繊維および不溶性食物繊維をバランスよく調節してつくられた療法食です。他にもEHA/DHA(オメガ3系不飽和脂肪酸)が含まれています。
肥満対策
最近では猫の肥満も大きな問題として取り上げられており、飼い猫のほとんどが標準体重よりもオーバーしており肥満傾向にあたります。人と同様に猫の肥満も健康を損ねてしまい、肥満になると糖尿病や泌尿器系の病気などのリスクを高め、更に病気の悪化を招きます。
特に去勢(避妊)手術後は太りやすくなるためフード量に注意しなければいけませんが、減量を目的とした猫に向けてカロリーを調節されている療法食を与えましょう。
満腹感サポート
この療法食は減量が必要である猫を目的としてつくられており、一般的な猫用フードと比べてカロリーが低めに調節されています。その分食物繊維が多く、脂肪分は制限されており健康的に減量することができ、満腹感を保つことができます。
体重が減少すると筋肉量も落ちてしまうため、この療法食は減量時の筋肉量を維持させるためタンパク質含有量を調節しています。
猫が療法食を食べない時の対処法
数種類のサンプルを試してみる
療法食によっては一般の成猫用フードと比べて風味や嗜好性が落ち、食べないことがあります。猫の性格にもよりますがフードの味に強いこだわりを持っていたり、味に敏感な傾向があるため療法食自体に抵抗を感じてしまうことが多いようです。
しかし同じ目的の療法食でも各メーカーによっては食感や味、風味、粒の大きさなどそれぞれ異なるので、数種類のサンプルを試して猫が食べてくれる療法食を探すとよいでしょう。
フードタイプを変えてみる
同じ療法食でもドライタイプとウェットタイプなどがあり、中にはドライタイプは食べないがウェットタイプは食べるなど、フードタイプによって食欲が出ることがあります。他の質感のフードタイプを試してみることも療法食を選ぶ上で大切です。
今まで与えていたフードと混ぜる
いつも食べ慣れているフードから一気に療法食に切り替えてしまうと戸惑ったり警戒して食べない傾向があります。また急にフードを変えてしまうとお腹を壊し下痢を引き起こしてしまいます。
最初は今まで与えていたフードと療法食を混ぜることからはじめ、徐々に療法食の割合を増やしていき慣れさせてあげます。およそ1~2週間かけて療法食に切り替えるとよいといわれています。
お湯でふやかしたり温める
猫は冷たいものより温かいものを好むためドライフードの場合はお湯でふやかしたり、ウェットフードはレンジで人肌程度に温めてあげると食べてくれる傾向があります。ふやかしたり温めることで風味が増すので食欲の刺激をあたえてくれます。
猫の療法食はいつまで与える?
療法食の中には続けて食べさせる必要があるものもありますが、中には推奨使用期限が設けられているものがあります。療法食は病気の治療を目的としてつくられているため、それぞれ栄養成分の量やバランス、種類などが調節されています。
そのため必要な栄養が不足してしまったり、逆にいつまでも食べ続けてしまうことで病気を発症することがあるため、病気の予防用として調整されたフードに切り替える場合もあります。
通常であれば獣医師による診察や検査の結果に応じて、療法食をいつまで食べさせる必要があるのか判断します。そのため推奨使用期限はあくまでも平均的な日数であり目安でもあるため、必ず獣医師の指示に従いながら療法食を与えることが大事です。
しかし同じ療法食を食べたとしても個体差によって症状および病気の状態が良くなる子もいれば、そうでもない子もいます。
まとめ
療法食は一般的な成猫用フードとは違い、ある特定の病気に対応しているフードなため含まれている栄養バランスや量、成分などを調節してつくられています。
動物医療の進歩により年々、猫の寿命が伸び続いていることもあり年齢を重ねるとともに様々な病気にかかりやすくなります。そのため猫が何かしらの病気や症状が現れた際は、治療のためにも食事内容を変えなければいけません。
療法食は薬ではないですが、病気や症状に合わせて栄養バランスを調節しているフードなので自己判断で勝手に与えたり、やめてしまうと猫の健康を損ねてしまいます。
また療法食の中には推奨使用期限が設けられているものがあり、食べ続けることでも健康に害を及ぼすこともあります。必ず獣医師の診断の上で療法食を選び、自己判断でおこなわず指示に従うことが大事です。
また定期的に獣医師による診察や検査を受け、給与期間を守ることも必要です。
一般な猫用フードと違い療法食は嗜好性や風味、食感などにより食いつきが悪い傾向があり、食べないケースが多いです。しかしそこでいつものフードに戻したり、勝手に変更すると猫の状態が良くならないですし、かえって療法食を全く食べなくなります。
最初の頃は療法食に対して抵抗を感じ戸惑いますので、今まで与えていたフードと混ぜて食べさせ、徐々に療法食の割合を増やして時間をかけながら最終的に療法食に切り替えましょう。
中にはフードに対して強いこだわりがある子もいますので、中々食べてくれない時はお湯でふやかして温めたり、フードタイプを変える、違うメーカーのものを試してみるなど、少しの工夫でも食べてくれることがあります。