猫慢性腎臓病の新薬『ラプロス』発売から1年…継続は力なり?

猫慢性腎臓病の新薬『ラプロス』発売から1年…継続は力なり?

慢性腎不全(CKD)の新薬、ラプロス(ベラプロスナトリウム)が発売されてはや、一年半経ちます。慢性腎不全の成り立ちからお話していきたいと思います。

猫の慢性腎臓病の新薬ラプロス発売開始から1年

ラプロスの注意紙

2017年4月に猫慢性腎臓病の新薬として、ラプロスが発売開始され、現在では広く普及しています。

そもそも猫の慢性腎臓病(CKD)とは?

看護婦の格好をした猫

慢性腎臓病とは、猫ちゃんの腎臓が長期間に渡って機能低下していく病気の総称で、加齢とともに増加し、10歳以上の猫ちゃんの3〜4割が罹患していると言われています。
病気の進行は一般的に不可逆的、つまり一度腎組織が壊れてしまうと、もう元には戻れないということです。

また、慢性腎臓病とは病態の総称であり、そうなる原因となった疾患は不明なことが多いのですが、大半の症例では、腎間質の炎症が起こっていると言われています。

監修獣医師による補足

腎臓は様々な組織の集合体で、糸球体・尿細管などが代表的です。尿細管と尿細管の間の組織を腎間質と言います。尿細管は、糸球体から排出された尿のなかの水分や電解質など、体に必要な成分を再吸収して血液中にもどし、不要な成分を尿として排出する役割をしています。

獣医師:長谷川諒

ヒトのCKDの定義

  • ①尿検査、画像検査、血液検査、病理検査で腎障害の存在が明らか
  • ②糸球体濾過率の低下

この2点のいずれか、又は両方が、3か月以上持続するものと定義されています。

猫の慢性腎臓病はなぜ起こるがわからない

残念ながら、猫ちゃんのCKDでは定義が明確ではないので、ヒトと同様の定義が適応されているのが現状です。

堅苦しい書き方になりましたが、上記が猫ちゃんの慢性腎臓病のまとめになります。
ザックリ言うと、なぜ起こるがわからないが、歳を重ねた猫ちゃんは徐々に腎臓を悪くしやすく、一度かかってしまうと、薬などの治療で治るものではないということです。

猫の腎臓が悪くなるとどうなるの?

病院で注射をされている猫

腎臓の役割

腎臓は大きく分けて3つの機能に分かれています。

排泄

尿を作って体内で発生した老廃物を体外に排出する。

体液調節

体内の水分、イオン、pHを調節し常に一定の状態を保つ。

内分泌

造血ホルモンを作る。

これらの機能が障害を起こすと、多飲多尿、食欲低下、体重減少、嘔吐、貧血などの実際の症状がみられるようになり、脳卒中、心筋梗塞、認知症などの病気を合併しやすいとも言われています。

しかし、これらの症状が目に見えてわかる頃には、腎臓の約75%が失われてからと言われているのでとても厄介ですね。
なので早期発見、早期治療で病態の進行を抑えていくことが、とても大切になってきます!

猫にラプロスはどう効くの?

術後服を着た猫の顔アップ

先ほども書いた通り、猫の慢性腎臓病における治療の根幹は、いかに進行を遅らせるかです。
なので、ラプロスの主な目的も腎機能低下の抑制及び、臨床症状の改善となっています。

腎臓は酸素をとても多く消費する臓器なのですが、慢性腎臓病では炎症などにより、腎臓への血流が少なくなることで酸素不足になり、低酸素が原因でさらに悪化していきます。

そこで、ラプロスは血流を維持するために様々な作用を持っています。

  • ①血管内皮を保護し毛細血管の減少を抑える
  • ②血管を拡張させて血流減少を抑える
  • ③腎臓の炎症を抑える
  • ④抗血小板作用により血栓の発生を防ぐ

これらの作用によって、病態の進行をできる限り抑えて効くお薬です。

猫には飲み合わせでダメな薬はあるの?

薬の匂いを嗅ぐ猫

猫ちゃんの慢性腎臓病には、他にも飲み薬が存在し、すでにそれらを始めているという猫ちゃんも多いと思います。

全国的にメジャーなお薬ですと、セミントラやフォルテコール、コバルジンなどがあると思いますが、ラプロスに関してはこれらの飲み薬と併用しても、特に問題はないとされています。

注意点

ラプロスの錠剤は、フィルムコーティングされているのですが、中の主成分は劇薬で刺激性があるので、錠剤を割ったり、すり潰したりして投与することは禁止されています。
ですので、そのような形で投薬した場合は、副作用が出てしまう可能性はあります。

最後に

獣医師に抱かれている猫

ここまで、ラプロスの大まかな説明をしてきましたが、慢性腎臓病の進行を抑えるのに臨床的な証拠があり、1番効果的だとされているのは、リンやタンパク質の含有量が調整された療法食に切り替えることとされています。

なので、療法食への切り替えも慢性腎不全と診断された猫ちゃんには重要になります。
ねこちゃんの中には投薬が難しい場合もありますし、療法食が苦手だという猫ちゃんもいます。慢性腎不全の治療方法は様々ありますが、担当の獣医師とよく相談して猫ちゃんにとってストレスにならず最良の方法を見つけてあげましょう。

参考文献

  • IRIS Guidelines http://iris-kidney.com
  • A Double-blind, Placebo-controlled, Multicenter, Prospective, Randomized Study of Beraprost Sodium Treatment for Cats with Chronic Kidney Disease 2018

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