猫のてんかんとは?
「てんかん」とは脳ある神経細胞の多くが興奮状態となり、異常な電気信号が出てしまうことで体のコントロールが不能に陥り、ケイレンなどを起こす脳の病気です。
猫がてんかんを起こすとケイレンや四肢がピーンと硬直して暴れる、口からヨダレや泡を吹き出す、失禁などがあげられます。 てんかんの症状は個体差があり、体や四肢を大きくバタつかせ完全に意識を失う場合もあれば、意識はあるが四肢の一部などがピクピクとケイレンすることもあります。
てんかんは急に起こります。場合によってはてんかんが起きる前に猫がそわそわと落ち着きない行動をしたり、普段と違う行動をとることがあります。通常は数秒〜数分続き、てんかんの発作後は通常通りの状態に戻ります。
抗てんかん薬
てんかんの頻度が多かったり、たて続けに起きた場合は、てんかんの発作を抑えるために抗てんかん薬を服用する必要があります。抗てんかん薬は基本的にてんかんを抑えたりするなどの目的なため、その場合は一生、猫に抗てんかん薬を飲ませなければいけません。
てんかんの猫に処方される薬
フェノバルビタール
てんかんの治療薬としてよく使われている薬がフェノバルビタールです。この薬はてんかんによるケイレン発作防止の他に鎮静効果もあるため、寝つきをよくしたり、不安や緊張状態を緩和する効果もあります。この抗てんかん薬の特徴として長時間作用する催眠鎮静薬です。
ゾニサミド
日本で唯一作られた抗てんかん薬です。商品名としてエピレスやコンセーブがあげられます。フェノバルビタールと比べてゾニサミドは副作用が少なく、原因不明の突発性てんかんに対して有効でもあるので、第1選択薬として使われることが多いです。てんかん薬のエピレスは10〜80mg、コンセーブは25mgと容量が小さく、かつ細かく選択できるため猫や小型犬に対しても錠剤の投薬が容易できる利点があります。
ジアゼパム
こちらのてんかん薬は、脳の神経細胞の興奮を抑制するため、鎮静作用により不安や緊張状態を緩和したり寝つきをよくする効果があります。また筋肉の収縮を抑制する作用を持っているため、脳による筋ケイレンを改善する目的で使用されることがあります。
ジアゼパムは脊髄内に素早く吸収するため、迅速にケイレンを抑制します。そのため短時間に効果が現れますが効果が長続きしないため、頓服薬として用いることが多いです。
私が勤務している動物病院では比較的軽い症状で頻度が少なかったり、夜鳴きや徘徊など高齢に伴う脳の異常が起きている場合に鎮静目的で主に処方しています。
猫のてんかんの薬には副作用はある?
どの薬にも副作用があるように抗てんかん薬も種類や容量、服用期間などによりますが副作用が生じる場合があります。
薬による感度の度合いは個体差がありますので強く副作用が現れる場合もあれば、全くないこともあります。しかし副作用が恐いからと薬を服用せず、発作の回数や時間が増えてしまうと脳に障害が起きてしまう恐れがあります。
あくまでも抗てんかん薬を飲ませることで、てんかんの発作を予防しQOL(生活の質)の向上・維持のため、長期間服用しなければいけません。抗てんかん薬にはどのような副作用が生じるのか、いくつかあげてみました。
薬の服用で猫の肝臓に負担がかかる
抗てんかん薬を含め、薬は体内に入った後肝臓で分解し、最終的に腎臓にて排出されます。そのため抗てんかん薬も肝臓で代謝されるため肝臓に負担がかかってしまいます。
症状が現れた時にはすでに肝臓に大きなダメージをあたえていることがあるため、抗てんかん薬を服用している場合は定期的に血液検査にて影響がないかどうかチェックする必要があります。(ゾニサミドのコンセーブは肝臓にて薬物代謝酵素を誘導しないため、比較的肝臓の負担が少ないといわれています)
食欲増進・肥満により糖尿病などの病気の併発
抗てんかん薬の投薬により肝臓に負担が生じるため、食欲に刺激を受けやすく食欲増進します。特にフェノバルビタールを服用している猫が投薬開始してから太ってきたケースが多いです。
体重が増え、肥満体型になると糖尿病などの病気を発症する恐れがあるため、食事量をコントロールし体重管理をする必要があります。
食欲低下・元気喪失
逆に食欲が落ち、活動低下が見られることもあります。場合によっては体重が減少することもあります。
意識がハッキリせずボーッとしたり体がふらつく
抗てんかん薬の容量が多く効きすぎてしまうと体がフラついたり、意識が薄くボーッとします。また過剰投与により四肢や頭など部分的に震えたり、活動低下、食欲低下も起こることがあります。
嘔吐・下痢
稀にヨダレの量が増えたり、嘔吐や下痢、軟便などの消化器症状が現れる場合があります。
猫にてんかんの薬を飲ませる方法
抗てんかん薬を継続的に飲ませることで、てんかんの発作を予防しコントロールすることが大事です。一般的に抗てんかん薬は1日2回(約12時間間隔)で投薬します。食事と一緒に薬を飲ませるとよいでしょう。最初は薬の容量を少なめからはじめ、投薬後効果があるのか、副作用はないかなどチェックしながら投薬していきます。
そのため薬がしっかり効いているかどうか定期的に血液検査をおこない、服用している抗てんかん薬が血液中にどの程度入っているか(血中濃度測定)調べる必要があります。血中濃度の数値と発作の度合いを評価して、その猫に合った薬の適正な容量を調節して投薬していきます。
猫にてんかんの薬を飲ませる時の注意点
自己判断で勝手に投薬を中止しない
一般的な猫のてんかんの治療は、てんかんの発作を起こらないようにする予防のため、決められた量をしっかり飲ませる必要があります。しかし中にはてんかんが起きなくなったことで、薬を飲んでいなかったり、勝手に投薬を止めていることがあります。
再びてんかんが起きるようになり、症状が悪化するため自己判断で投薬を止めてはいけません。最悪の場合、発作が繰り返し起きたり、発作の時間が長く続いてしまうことで脳に大きなダメージをあたえ、死亡する危険性があるからです。
投薬量を間違えない
抗てんかん薬を飲ませる場合は、投薬量を間違えないように注意することです。薬の量を間違って飲ませてしまうと、量が少ないことで効果がなかったり、逆に過剰摂取で副作用が生じてしまうため大変危険です。必ず獣医師の指示に従い、決められた投薬量を守ることです。
同じ時間帯に投薬する
基本的に抗てんかん薬は1日2回飲ませる必要がありますが、投薬する時間帯がバラバラだったり、12時間以上間隔をあけてしまうと発作が起きてしまう場合がありますので同じ時間帯に飲ませるようにしてください。
猫にてんかんの薬を飲ませても発作が起きる場合は
抗てんかん薬はあくまでも、てんかんを起きないように予防するものなため、猫に薬を飲ませてもてんかんが起きてしまうことはあります。
獣医に相談
発作の頻度が数ヶ月に1回程度であれば緊急性はありませんが、抗てんかん薬を投薬している場合は定期的に血中濃度を測る必要があるため、発作の頻度や副作用の有無の確認とともに獣医師の指示に従って受診することが大事です。
そのため薬を飲ませても発作の頻度が増えたり、発作の時間が長くなった、発作後も完全に回復せず体がふらつくなどが見られた場合は、薬の量を調節する必要があるため必ず動物病院に受診してください。
獣医に伝える事
てんかんの症状はそれぞれ猫によって異なりますので、いつ頃発作が起きたのか、どれくらい発作が続いたのか、発作時の状態(度合い)、発作が起きる前の猫の行動などをメモするようにしておきましょう。
まとめ
てんかんは脳の神経細胞が過剰な興奮状態となることで、全身のケイレンなどを起こす病気です。個体差があり体や四肢をバタバタと暴れる場合もあれば、顔や体の一部だけがケイレンすることもあります。
ケイレンの度合いによっては意識がなくなり口からヨダレや泡を吹き出たり、失禁したりする場合もあります。てんかんの発作時にキャットタワーなどの高い所からの落下や、嘔吐物が気道に詰まるなどによって命を落とすことがあります。
またてんかん発作が立て続きに起きてしまい脳に大きなダメージをあたえてしまう恐れがあるため治療をおこなう必要があります。そのため抗てんかん薬を飲ませることで発作を予防するため、場合によっては継続して飲ませなければいけません。
一般的に抗てんかん薬は1日2回投薬となります。最初は低容量からはじめ薬が効いているのか、副作用はないかなどチェックしながらおこないます。
また薬がどの程度入っているのか血中濃度を定期的に調べ、適正な量を決め投薬していきます。そのため自己判断で勝手に投薬を中止してしまったり、投薬量を間違ってしまうと再びてんかんが起きてしまい症状が悪化する恐れがあったり、副作用が生じる場合があるため必ず獣医師の指示を守ってください。
また薬を飲ませたとしても発作の頻度が増えたり、発作の時間が長くなった、発作後もシャキッとせず体がふらつくなどの場合は薬の量を調節する必要性があるため動物病院に受診してください。
てんかんの症状は猫によって様々ですので、いつ頃発作が起き、どの程度だったなどをメモしておくようにしましょう。またてんかんが起きないように大きな音や高い音を出さないようにするなど、発作の引き金にならないように日常生活に気をつけることも大事です。