猫の抗がん剤治療について。副作用や費用、延命の長さまで

猫の抗がん剤治療について。副作用や費用、延命の長さまで

概要

  • 猫に抗がん剤を使う治療方法は「プロトコール」に基づき、1クールは1~8週間と様々
  • 猫に抗がん剤治療を行う場合の副作用は、ひどい場合ばかりではない
  • 猫に抗がん剤治療を行うと、1回につき50,000~80,000円前後の費用がかかる

人間同様、猫も「癌」を発症することがあり、抗がん剤で治療します。人間の抗がん剤治療といえば、副作用がとても強いイメージがありますが、猫の場合はどうなのでしょうか。猫の抗がん剤治療の副作用や、抗がん剤治療にかかる費用、治療の方法、余命についてまとめました。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫に抗がん剤を使う治療方法

治療器具とタオルに包まった猫

猫に抗がん剤を使う治療方法は、プロトコールと呼ばれる治療計画に沿って行われます。

プロトコールによって1クールの週数は異なり、1週間~8週間を1クールとして定め、治療を行っていきます。プロトコールの種類は、がんの種類、がんの進行、体調などによって変わり、通院頻度を抑え、自宅での内服が可能な抗がん剤を用いたもの、短期集中型のものなど様々です。

つまり、猫に抗がん剤を使う治療方法は、猫のがんの状態はもちろん、猫自身の性格や飼い主さんの希望なども考慮した治療方法を選ぶことが可能だということです。

猫の抗がん剤治療で最も優先されるのは、「生活の質(QOL)」です。

なるべく飼い主さんのそばで、いつも通りに生活することを前提に治療が行われるます

愛猫に苦しい思いをさせたくないと思うばかりに、「抗がん剤治療」そのものに拒否反応を起こしてしまう飼い主さんも多いようですが、人間に比べて猫の抗がん剤への副作用は少ないとされています。

まずは、信頼できる獣医師と納得がいくまで相談し、愛猫にあったプロトコールを見つけてあげましょう。

猫に抗がん剤を使用したときの副作用

人の手から薬を飲む猫

猫の抗がん剤は、主に全身性のリンパ腫や白血病、癌を外科手術で切除しきれない場合、癌が全身に広がっている場合などに用いられる治療法です。

人間の抗がん剤治療と言えば、酷い吐き気や脱毛などのイメージが強いですが、猫の場合はどうなのでしょうか。

そもそも抗がん剤は、分裂している細胞を「がん細胞」と認識して、死滅したり、増殖を抑制したりする役割を持ちます。

ただ、「分裂しているかどうか」を見極めることはできても、その分裂した細胞が「がん細胞」なのか、「正常な細胞」なのかまでは判別できないのです。そのため、正常な細胞までを攻撃してしまい、副作用を引き起こします。

動物の場合、ほとんどの細胞は、成長期を過ぎると増殖をやめるのですが、中には常に活発に分裂を繰り返す細胞も存在します。

その部分に、抗がん剤が作用することで以下のような副作用がでることがあります。

①食欲不振、嘔吐

猫の抗がん剤治療においての副作用として、まず挙げられるのが食欲不振や吐き気、嘔吐などの症状です。

抗がん剤を投与すると血液中や消化管内にい薬が入ってきます。抗がん剤はがん細胞をたたく一方で、正常な細胞にとっては異物です。そのため、外に追い出そうとして吐き気が起こります。

といっても、癌の進行や加齢によって食欲不振を引き起こしていることもあり、抗がん剤治療の副作用であるかどうかは、はっきりしない場合も多いようです。

②骨髄抑制

猫に抗がん剤を使用したとき、骨髄の働きが抑制されることがあります。

白血球、赤血球、血小板を作っている骨髄が抑制されることによって、様々な副作用が起こります。猫の体を守る免疫役を担う白血球が減少することによって、細菌感染の危険性が高まり、結果的に敗血症を引き起こしたり、赤血球の減少によって貧血を引き起こしたりすることもあります。

発熱などの症状が現れた場合は、すぐにかかりつけの獣医師に相談しましょう。

③脱毛

人間の抗がん剤治療の副作用としてイメージの強い脱毛ですが、猫の場合はヒゲが抜け落ちることがありますが、全身の被毛が抜け落ちるようなことは、ほとんどないとされています。

猫に抗がん剤を使用したときの副作用についてご紹介しました。

人の抗がん剤治療といえば、非常に辛い副作用があるというイメージが強いかもしれませんが、副作用は抗がん剤の投与量や種類によって異なります。

抗がん剤治療=酷い副作用があると決めつけずに、獣医師の説明をしっかり受けましょう。

猫に抗がん剤を使うときにかかる費用

コインで遊ぶ子猫

猫に抗がん剤を使うときにかかる費用についてご紹介します。

と言っても、使用する抗がん剤の種類や、腫瘍の場所、状態によって必要になる費用は大きく異なります。あくまでも目安としてご覧ください。

①抗がん剤の費用

1回につき15,000円~35,000円程度が必要になるようです。

猫の抗がん剤治療では、猫用の抗がん剤というものはなく、人間用の抗がん剤を使用します。一般的な抗がん剤治療では、複数の抗がん剤、主にドキソルビシン、ビンクリスチン、シクロフォスファミドなど、それぞれ抗がん作用の強さが異なる抗がん剤を状態に併せて使用していきます。

②ステロイド投与

ステロイド剤投与にかかる費用は、7~10日間で1,000円~2,500円程度であることが多いようです。

猫の抗がん剤治療では、プレドニゾロンと呼ばれるステロイド剤(副腎皮質ホルモン)を併用することも多く、炎症を鎮めたり、免疫を抑制させたりする効果があります。リンパ腫の場合は、プレドニゾロンに細胞が反応を示すため、抗がん作用のある薬として使用されることもあります。

③内服薬

処方内容によって費用は異なりますが、800円~1,500円程度であることが多いようです。

猫の抗がん剤治療では、猫の状態によって対症治療(そのときにある症状を緩和させるために行う治療)のための内服薬や、抗生剤などの処方がある場合もあります。

④検査

猫に抗がん剤治療を行うとき、状態をしっかり把握するために定期的に検査が必要になります。検査項目は状態によって異なりますが、主に血液検査、レントゲン、超音波検査です。

血液検査は項目によって費用に差があり、1回につき5,000円前後、レントゲンは1部位につき3,000円前後、超音波検査は、1,500円~5,000円程度です。

⑤入院費用

動物病院によって異なりますが、5,000円~10,000円程度となっています。

猫に抗がん剤を使うとき、副作用を含めた抗がん剤投与後の経過を確認するために半日~1日、状態によっては数日間の入院が必要になる場合もあります。

猫の抗がん剤治療に必要になる費用は検査や薬代金などを含め 、1回の治療につき50,000円~80,000円前後であることが多く、決して安いものとは言えません。
動物病院によっても金額に大きな差がある場合もありますので、事前にしっかりと確認しておきましょう。

猫に抗がん剤を使ったときの余命

ピンクの毛布にくるまる猫

猫に抗がん剤を使ったときの余命については、残念ながら人間と比べて動物に対する抗がん剤治療の歴史は浅く、はっきりしない場合もあります。

ただ、無治療の場合の余命と比べると3倍近い差がでることもあり、抗がん剤治療によって症状が一時的に消えるなど、平均で6か月~9か月、長いと1年以上の延命が確認されています。

猫の体力や気力、抗がん剤との相性によって差があるのは事実ですが、実際に抗がん剤治療を行いながらも、以前とさほど変化のない生活を送れているという猫もいます。

猫の抗がん剤治療の歴史は浅いものではありますが、動物医療は日々発達しています。猫に抗がん剤を使ったときの余命については、獣医師でさえもはっきりと分からないことの方が多いかもしれません。ただ、飼い主さんが信じてあげることが愛猫の生きる気力に繋がることは、間違いありません。

まとめ

猫を抱きしめてベッドで眠る女性

抗がん剤治療と言えば、とにかく強い副作用をイメージしてしまいますよね。

しかし、猫の抗がん剤治療は生活の質を落とさないためにも、「副作用が出ないこと」に重点を置いて治療を開始することが多く、副作用が起こっても軽度のこともありますし、副作用が起こった場合は治療を中止したり、別の治療方法を選択することもあります。

人間の抗がん剤治療とは、異なる点も多々ありますので、抗がん剤治療は副作用がこわいから嫌だ!と頭ごなしに否定せず、まずは獣医師の説明をしっかりと受けることが大切ですね。

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