猫の肛門絞りとは?
肛門腺の分泌物を出すこと
猫の肛門絞りとは「肛門腺絞り」とも呼ばれ、肛門腺から出る分泌物を絞り出してあげることをいいます。猫には、肛門の左右に肛門嚢という袋があり、その中の肛門腺から強い臭いのする分泌物が出てきます。
通常、分泌物は排便の際に肛門腺が圧迫され、便と一緒に出ていくのですが、体質によっては溜まってしまう猫がいます。この分泌物が溜まってしまうと、肛門腺が詰まり肛門嚢が破裂する恐れがあり大変危険です。
肛門腺の詰まりを解消し、肛門嚢が破裂してしまうのを防ぐため、猫に肛門絞りをする必要があります。
肛門絞りが必要な猫
- お尻を床にこすりつける、過剰に舐めている
- 肛門腺の分泌物が泥状
- 過去に肛門嚢破裂を経験している
すべての猫に肛門絞りが必要なわけではありません。上記の症状がみられる猫は、肛門絞りが必要だといえるでしょう。
お尻を過剰に舐めたり床にこすりつけたりしている猫は、肛門腺の分泌物が溜まっていることに違和感を覚え、そのような行動をとっていると考えられます。
また、分泌液がドロドロした泥状である場合も、肛門絞りをしなければならないサインです。このような状態が続くと肛門が詰まり、肛門嚢の破裂が起こりやすくなります。
肛門嚢の破裂は再発しやすいため、過去に経験したことのある猫は肛門絞りの必要があることを覚えておきましょう。
猫の肛門絞りのやり方
肛門嚢と開口部の位置を確認する
猫の肛門絞りは、肛門嚢を押さえながら開口部へ絞り出していくイメージで行います。初めて肛門絞りをする際は、まず分泌物が出る開口部と肛門嚢の位置を把握しておきましょう。
肛門嚢は目視することはできませんが、肛門の左右に位置しています。肛門を時計に見立てたときに、短い針が4時と8時にくる位置です。開口部は、肛門のすぐ両脇にあり直接目で確認することができます。開口部が分かりづらい猫もいますが、お尻のすぐ近くにあるということを知っておけば十分です。
肛門嚢を圧迫する
まずお尻の辺りが確認しやすいように、猫のしっぽを付け根から持ち上げます。片手でしっぽの付け根を押さえながら、もう片方の手で肛門嚢の左右2箇所を指を使って圧迫し、開口部のある位置に向かって絞り出していきます。
肛門絞りは、圧迫する肛門嚢から開口部に向かって、押しあげるようにするのが上手に絞るコツです。出てきた分泌物は、ティッシュやガーゼなどで優しく拭き取ってあげます。
肛門絞りで注意すべきこと
肛門腺の分泌物は臭いが強いためゴム手袋をつけて行うか、ティッシュやガーゼを肛門に当ててから行うのがよいでしょう。
猫は、お尻の辺りを触れられることを嫌います。肛門絞りをする際も嫌がって抵抗することがあるため、その場合は無理に行わないようにしましょう。
肛門嚢の位置に指を当てたときに固いと感じる場合は、分泌物が固まっている可能性があります。肛門嚢が破裂する危険性があるので、無理に絞り出すことは避けます。肛門絞りが難しい場合には、動物病院を受診しましょう。
猫の肛門絞りをしている動画
愛猫の肛門腺絞り動画
動物病院に併設されたトリミングサロンのトリマーが、猫の肛門絞りを実践している動画です。しっぽを持ち上げて、肛門嚢の辺りから肛門へ揉み上げるようにしているのがわかります。実際に分泌物が出てきているのも確認できますね。
この動画は、犬や猫についたノミとマダニの駆除薬を扱う「フロントライン」の公式HPにも掲載されており、イラストつきのテキストで猫の肛門絞りの手順がわかりやすく解説されています。
Hataさん 「がく」の肛門腺搾り
動物病院で愛猫の肛門絞りをしてもらっている動画です。動画開始から58秒の辺りから、肛門絞りの様子をはっきりと見ることができます。こちらの猫ちゃんは、以前肛門嚢の破裂が起き、完治してからは3ヶ月おきに病院で肛門絞りをしてもらっているそうです。
肛門絞りを自宅でする場合はこの動画のように複数人で行い、1人が抱き押さえるようにし、もう1人が肛門絞りをするとスムーズにいくかもしれませんね。
猫に肛門絞りをしてもお尻が臭いときは
- 肛門嚢の破裂
- 汚れが溜まっている
- その他の病気
肛門絞りをしても猫のお尻が臭う理由は主に2つです。1つは、肛門嚢がすでに破裂していて、細菌感染を引き起こしてしまっている場合です。 この場合、猫ちゃんもとてもお尻を気にします。痛みも伴うためお尻を触られるのを嫌がったり排便を嫌がったりすることもありますし、食欲や元気もなくなることがあります。
細菌感染がある場合は、抗生物質の投与といった薬を使う治療も必要になることがあります。肛門の辺りに傷や出血が見られたら、肛門嚢の破裂を疑いましょう。
もう1つは、猫のお尻の辺りに毛玉ができて汚れが溜まっている場合です。猫は自分で体を舐めてグルーミングをしますが、長毛猫や肥満の猫はお尻の辺りのグルーミングが行き届かず、毛玉ができやすくなります。
毛玉には汚れが溜まりやすいので、飼い主さんがブラッシングや毛玉の処理などをして、清潔に保つようにしましょう。
この他にも子宮蓄膿症の場合には、子宮から膿が垂れてくることがあり臭いを発します。下痢の症状があるときも、肛門周辺に汚れがついてしまうことで臭うことがあるでしょう。
臭いの原因を取り除いても臭いが続く場合には、体調不良のサインです。少しでも心配な場合は、受診することをおすすめします。
まとめ
猫の肛門絞りは、必要な猫と必要でない猫がいます。肛門腺の分泌物が溜まってしまう体質の猫を放置してしまうと、肛門嚢の破裂を引き起こしてしまいます。
傷の修復には時間がかかり猫にとって大変負担となるので、肛門絞りの必要があるかどうか見極めることが大切です。
飼い主さんが判断できない場合は、動物病院に相談すると安心です。また、自宅で肛門絞りをする際は決して無理をせず、難しいときはプロのトリマーや病院に頼るようにしましょう。