猫の避妊手術後のケアの方法と注意点

猫の避妊手術後のケアの方法と注意点

猫の避妊手術後は、ストレスなどで体調を崩してしまうことがあります。オス猫の去勢手術と違い、避妊手術はお腹を切る必要があるため飼い主さんも心配になるでしょう。避妊手術後の体調の変化や注意点を知っておくと安心ですね。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫の避妊手術後の体調について

避妊手術後に寝る猫

猫の避妊手術はオスの去勢手術と違い、開腹して行うため猫に負担となることがあります。全身麻酔をし、お腹の中の血管を傷付けないように手術を行います。麻酔から醒めた後も呼吸や心拍に異常がないかなど全身の管理が必要です。では、猫の避妊手術後の体調の変化などについてみていきましょう。

食欲がおちる

環境の変化に敏感である猫は、動物病院で過ごすことや手術を受けることで体力を消耗しています。さらに精神的にもとても疲れているため、猫の避妊手術後は食欲が落ちることがあります。術後3日くらいは食欲がない猫が多いと言われています。

無理に食べさせる必要はありませんが、猫の好きな物を用意してあげると良いかもしれません。しかし、食欲がなく、水を飲まないとなると、脱水症状が心配されます。そういったときは動物病院に連絡をしましょう。

元気がなくなる

猫は慣れない動物病院で過ごし、手術を受け疲れていることや、入院中にまわりにいる他の動物を気にして睡眠できないということがあります。そのため、避妊手術後退院してからは元気がなくずっと寝ている猫もいます。2〜3日くらいはおとなしくしている猫が多いようです。飼い主さんは心配しすぎずに、いつも通りにすることで猫がリラックスできます。

下痢、嘔吐がみられる

入院や避妊手術手術によるストレスがきっかけで、猫に一時的に下痢や嘔吐がみられることがあります。退院後しばらくして落ち着いてくるでしょう。しかし退院の際に出された薬があっていない可能性もあります。続くようであれば病院に相談した方が良い場合もあるので、注意して猫の様子をみましょう。

うんちをしなくなる

健康のバロメーターでもあるうんちですが、猫が避妊手術前に絶食をすることや、病院や避妊手術によるストレスで、すぐにうんちをしないことがあります。猫がトイレに行こうとするのを待つしかありませんが、嘔吐など他に変わった様子がないか確認します。中にはエリザベスカラーや腹帯などが気になってトイレに行かなくなる場合もあります。

おしっこをしなくなる

入院や避妊手術によるストレスで猫がおしっこをしないことがあります。トイレに行く様子が全く見られないときは、猫に任せるのが一番ですが、トイレに行くのにおしっこが出ない場合や、何度もトイレに行くようになると膀胱炎の心配が出てきます。膀胱炎の症状の一つは血尿です。猫のトイレの回数やトイレでの様子を観察して病院に相談をしましょう。

傷口が腫れていないか確認する

避妊手術の傷口は、病院によって縫合の仕方が違います。傷口の腫れや出血、化膿、痛がっている様子がないかを確認する必要があります。溶けない糸を使って縫合している場合、猫の避妊手術後1週間から10日後に抜糸を行います。癒着など問題がなければ、数分で痛みもなく抜糸が終わります。溶ける糸を使っている場合は、糸が外に出ないように縫合しているので、傷跡が目立ちにくいです。

体調以外の変化

体調ではありませんが、猫の性格や身体に影響することがあります。猫の避妊手術後すぐに大きく変わるわけではありませんが、穏やかになった、甘えるようになったと感じこることがあるようです。また、活動量が減り、太りやすくなります。

猫の避妊手術後のケアの方法

避妊手術を受けた猫

お腹を切って手術をする猫の避妊手術は、飼い主さんとしては不安やケアの方法が気になりますが、避妊手術がうまく行われていれば、特別なケアが必要ないことがほとんどです。食欲や運動、排泄などは猫が自分で体調に合わせて行うことが多いです。飼い主さんは、猫の傷口のチェックや投薬が主なケアとなります。

傷口のチェック

開腹が必要な猫の避妊手術で、入院が一泊もしくは日帰りだと飼い主さんは不安になるかと思いますが、特別に行動を制限する必要はありません。しかし、傷口の様子は時々チェックしてあげましょう。傷口を気にして猫が舐めてしまうことがあります。猫の舌はとてもザラザラしていて、舐めすぎることで炎症を起こしてしまうことがあるのです。

また、糸を使って縫合している場合、猫が糸を気にして歯で噛んで取ろうとすることがあります。糸が取れてしまった場合、傷口が開いていなければ問題ない場合が多いですが、念のため動物病院に相談をしましょう。塗り薬が処方されたり、絆創膏を貼りなおしたりすることがあります。傷口を保護するために、避妊手術後にエリザベスカラーをつけたりや術後服を着せることもあります。

薬のケア

猫の避妊手術後には、薬が出されることがあります。薬の種類は病院によって変わります。飲み薬の場合もあれば、内服薬が出ない代わりに注射の場合もあります。化膿、炎症、痛みを抑えるために抗生物質などの薬が出されたら、獣医師の指示通りに飲ませましょう。

猫の避妊手術後の注意点

見上げている猫

太りやすくなる

猫の避妊手術後は、発情に使われるエネルギーが使われなくなることや、繁殖の欲求がなくなる、ホルモンバランスの変化などで、運動量が減り、食欲が増すと言われています。猫が太りやすくなるため、食事のカロリーを見直したり、避妊去勢済み猫専用のフードに変えるなど対策を考えておいた方がいいでしょう。

猫の避妊手術後の症状と対処法

避妊手術後に横たわる猫

下痢嘔吐をする

猫の避妊手術後はストレスによる下痢や嘔吐の症状があらわれることがあります。下痢の場合、処方された抗生物質で腸内細菌のバランスが崩れてしまうことが原因になることもあるので、猫に下痢が続くようであれば、病院に相談をしましょう。

猫の嘔吐もストレスが関係していることが多いです。そのストレスによって、便秘になり、便秘が原因で嘔吐しているというケースもあります。また、車での移動で乗り物酔いをしていることもあります。薬があっていないときは、服用後にすぐ嘔吐することが多いようです。猫の食欲、排泄を確認して病院に相談をしましょう。

卵巣遺残症候群

猫の避妊手術後、数か月~数年たってから再び発情のしぐさが見られたら、「卵巣遺残症候群」が考えられます。卵巣の組織はわずかでも猫の体の中に残ると再生してしまうのです。猫の避妊手術直後は発情が見られなくても、やがて発情の兆候が見られるようになります。また、まれに「副卵巣」という組織が体内に存在する猫がいて、卵巣を取り除いてもホルモンを出し、発情することがあるのです。

血液中のホルモン検査、超音波検査を行いますが、猫の体内に残った卵巣の組織は小さく、副卵巣は特定の場所にあるわけではありません。対処法は、適切な時期に開腹して探し、取り除くということです。薬による対処もありますが、手術内容や薬の副作用など獣医師とよく相談することが大切です。

まとめ

こちらを見ている猫

猫を飼う際には避妊去勢手術は大切なことです。どの動物病院でも多く実施される手術だと思いますが、オス猫の去勢手術と違って、メス猫の避妊手術は開腹が必要です。飼い主さんは避妊手術後の猫の体調について心配になるでしょう。猫の避妊手術後は、動物病院で過ごしたことによるストレスや、傷口の痛み等で猫が体調を崩してしまうことがあります。食欲、元気、排泄などのチェックをし、傷口の管理や薬について分からないことがあれば、病院に確認して適切なケアを行いましょう。

猫の避妊手術後には注意したいこともあります。ホルモンバランスの変化で太りやすくなること、まれに卵巣の組織が体内に残ってしまうことなどです。避妊手術後も日々の体調チェックと管理が大切です。ただ、避妊手術後に疲れて帰ってきた猫に対して飼い主さんが心配しすぎると、猫がリラックスして休めないこともあります。いつも通りに接して、猫が落ち着けるようにしてあげましょう。

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