猫の避妊とは
避妊とは、メス猫に行う子猫を産めなくなる手術で、卵巣と子宮の摘出手術を行います。場合によっては、卵巣のみを摘出する避妊手術の場合もあります。避妊手術を受けたメス猫は、その後は妊娠することはありません。
避妊をすることにより、メス猫の発情期による問題行動が改善される、卵巣や子宮の病気予防となる、乳腺腫瘍の予防というメリットもあります。
猫の避妊手術は、人間が猫を飼うために猫の生殖能力を奪うということになり、かわいそうに思う人もいるでしょう。しかし、避妊をしないことによる無計画な繁殖で殺処分される猫を減らすことができ、育てられない子猫が捨てられることを防ぐ。また、猫が増えて多頭飼いとなり、飼育放棄が起こることを防ぐための1つの選択肢のだと言えます。
猫に避妊手術を受けさせる費用
避妊手術の費用
猫の避妊手術の費用は、卵巣切除で19,833円、卵巣子宮切除で20,986円が中央値となっています。(日本獣医師会の家庭飼育動物の診療料金実態調査及び飼育者意識調査より)
避妊手術の金額は、動物病院にもよりますが、15,000円から40,000円の間となっています。
施術料金のほか、診療費、麻酔代金、入院費、薬代などがかかり、病院によって避妊手術に含まれる内容は違うので、金額にも違いが出てきます。
避妊手術の助成金
猫の避妊手術には、助成金が出て、費用の一部を負担してもらえる場合があります。助成金には主に市区町村の助成金と、獣医師会の助成金があります。
市区町村に避妊手術の費用の一部を負担してもらうには、飼い主がいる猫に対して助成金が出る場合と、保護猫など飼い主のいない猫に対して助成金が出る場合、地域猫を保護する団体に出る場合など、細かい条件がある場合があります。
助成金を利用する方法
助成の金額は3,000円から10,000円ほどで、市町村によって幅があり、上限が決められているところもあります。
都道府県によっては、獣医師会から降りる助成金があります。この助成金を使う際の避妊手術は、獣医師会に所属している動物病院で受けることになります。また、助成を受けられる年間の予定頭数が決まっていたり、金額の上限が決まっていたりする場合もあります。助成金制度を設けているかどうかは、所属の自治体または動物病院に問い合わせをしてみてください。
猫が避妊手術を受ける時の流れ
猫が避妊手術を受ける際の、一般的な流れについてご紹介します。
病院で手術日を決める
猫に生理はありませんので、子猫を産める状態になったかどうかは、見た目だけではわかりません。発情期が来ると大きな声で鳴いたり、ゴロゴロしたり、あちこちにおしっこをしたりするので、そのような態度の変化で分かることがほとんどです。
メス猫の避妊手術の時期は生後半年ごろから受けられるので、それより前から猫の成長の様子を見ながら、獣医さんと相談して決めます。
動物病院に合わせて、避妊手術日を決めて予約をします。獣医さんから手術の説明や、注意事項などの話があるのでよく聞いておきましょう。
避妊手術前検査
手術前に、猫が避妊手術を受けられる状態かどうか、麻酔に耐えられるかどうかを検査します。検査内容は、血液検査が主ですが、レントゲンや超音波検査など追加で検査が行われることもあります。
検査の日にちは、手術の数日前から前日、または当日に行われる場合もあります。
避妊手術前日は絶食
手術前日から、避妊手術のために猫に絶食をさせます。猫の胃の中に食べ物があると、手術中に吐いて窒息したり、誤嚥性肺炎になったりする可能性があるためです。
絶食は避妊手術の12時間から18時間前、絶飲は手術の6時間前くらいです。手術はお昼ごろに行われることが多いため、前日の夜からの絶食となる場合が多いですが、獣医さんの指示に従ってください。
猫を預ける
避妊手術当日は、手術の時間に合わせて数時間前から猫を預けます。避妊手術は日帰りの病院と一泊入院する病院があります。一般的な流れでは、午前中に猫を預け、お昼以降に避妊手術が行われます。飼い主さんは猫を預けたあとは帰宅して、その日の夕方か次の日の午前中などに猫を迎えに行くことになります。
手術
避妊手術のおおまかな流れは、次のようになります。飼い主さんが立ち会うことは基本的にできません。
- 麻酔前投与薬役の投与
- 麻酔の投与(静脈麻酔)
- 気管チューブの挿入
- 吸入麻酔の開始
- 切開部の被毛を剃る
- 卵巣、子宮の切除(卵巣のみの場合もあり)
- 傷口の縫合
- 麻酔を切る
- 入院室で意識の回復を待つ
避妊手術後猫を引き取る
避妊手術当日は入院し、次の日に退院となる場合がほとんどです。動物病院で指定された時間に、猫を引き取りに行きます。手術後の注意事項が説明されますので、しっかり聞いておきましょう。退院する時には、傷口を猫が舐めないようにエリザベスカラーまたは服帯などをつけています。
避妊手術後の猫は、体調が急変することもありますので、注意深く見守っていることが大切です。嘔吐する、下痢する、数日しても餌を食べない、出血があるなど、何か異常があればすぐ動物病院で診てもらいましょう。
抜糸
手術の仕方によっては、抜糸のために動物病院に行く必要がある場合があります。避妊手術後の抜糸の日にちは、手術日から1週間後以降となることがほとんどです。
最近では、傷口が小さくて済む腹腔鏡手術で避妊手術が行われることも増えてきましたが、行われている動物病院はまだ多くないと言えるでしょう。
避妊手術を受けてからの注意点
避妊手術の失敗はある?
猫の避妊手術では、ほとんどの場合失敗ということはないとされていますが、実際には人間が行うことなので、可能性が全くないとは言い切れません。まれに、卵巣が取り残されていて発情がおさまらなかったり、手術において尿管や神経を傷つけてしまったり、という例もあるようです。手術直後には、猫の様子をいつもより気をつけて観察し回復具合を確認しましょう。
手術の失敗ではありませんが、避妊手術後に体調が悪くなる猫もいます。傷口が化膿したり、感染症にかかったりする場合もあります。何か異常があればすぐに動物病院で診てもらいましょう。
猫に避妊手術すると性格は変わる?
避妊手術を受けた猫は、ホルモンバランスが変化するため、以前とは性格が変わる場合が多いと言われています。猫によって個体差があるため、一概には言えませんが、以前の飼い猫とは違った行動や態度を取ることが増えるということです。
理論上ですが、メス猫の場合には、避妊手術をすることでオス猫に近い性格になると言えます。といっても、オスらしい、メスらしい性格というものが明確に決まっていないので、どんな性格になるかは実際のところわかりません。
避妊していないメス猫同士でよくグルーミングしあう姿が見られますが、避妊した猫はあまりそのような行動を取らなくなる、といったようなものです。
避妊手術のせいで何かしらの問題のある性格になる、といったことはないでしょう。
病気
避妊手術により、子猫を産めなくなることはもちろん、発情による問題行動が減り、子宮や卵巣の病気にかからなくなる、といったメリットがあります。しかし、避妊手術を受けたメス猫には、尿管膀胱結石症や尿路感染症のリスクが高まると言われています。
また、避妊手術後は肥満となる可能性は高いので、餌に気をつける必要があります。
まとめ
メス猫の避妊は、比較的安全な手術だと言われています。しかし、全身麻酔や開腹、動物病院への入院など、猫の体に負担がかかることは間違いありません。
メス猫に避妊手術をすることで、人間と暮らしていく上で多くの問題が解決されます。
メス猫を飼うということは、避妊手術をさせる可能性があること、手術には費用がかかることなどを理解しておきましょう。