猫のおやつの上限は摂取カロリーの20%
一般的に飼い猫の理想の食事は、必要な栄養がきちんと計算されている「総合栄養食」のフードを食べること。そして、「総合栄養食」以外の食べ物は全部「おやつ」として強いて食べなくてもいいものとされています。
しかし、ほとんどの飼い主さんは飼い猫におやつを与えることで、猫とのコミュニケーションを図っています。また、おやつは様々なトレーニングの動機付けとしても使えますので、そういう意味からも猫におやつは欠かせない存在です。
そんな飼い主さんの1番の悩みは、おやつをあげすぎているのではないかということです。一般的に、通常の食事を100と考えた場合20%までならおやつに置き換えても大丈夫だとされています。
しかし、摂取カロリーの10%、20%と言われても、実際にはどのくらいの量なのかがよく分かりません。そこで、我が家の猫を例にとってその量を具体化してみることにしました。
20%っておよそ何カロリー?
ネットで「猫 カロリー計算」のキーワードで検索すると、猫が1日に必要とする摂取カロリーを計算してくれるサイトが見つかります。そこで好きなサイトを選び、年齢と体重その他の情報を入力してみましょう。
例えば、我が家の猫の場合、
- 16歳
- 体重3.2kg
- 避妊手術済み
と入力したところ、「189.2kcal」という数字が出てきました。
我が家の猫のカロリー摂取量の目安が約 190kcalだとすれば、
10%=19kcal、20%=38kcal
つまり、1日38kcalまでなら、おやつを食べさせても構わないという計算になりました。
20%の猫おやつはこれくらい
では、今度は見方を変えて人気のおやつのカロリーがいくらで、38kcal以下ではどれくらい食べることができるのかを見てみましょう。
代表的なおやつを参考にさせていただくと
- 液体型おやつ:1本5kcal~8kcal
- ササミやカツオのパック:約20kcal
- 一般食のパウチ:15kcal~25kcal
となっていました。
これを我が家の猫の例に当てはめると、おやつの割合が10%(19kcal)なら
- 5kcalの液体型おやつ4本(20kcal)
- 8kcalの液体型おやつ2本(16kcal)
- ササミやカツオ1パック (20kcal)
- 低カロリーのパウチ1つ (15kcal)
Maxの20%(38kcal)なら、
- 8kcalの液体型おやつ4本(32kcal)
- 高カロリーのパウチ1つ (25kcal)
が相当します。つまり、この量なら、毎日食べても大丈夫ということですね。ただ、各おやつにはメーカーから1日の制限量が設けられていますので、それを超えないように気をつける必要があります。
そもそもおやつはあげるべき?
おやつを日常的に食べているのは少数派?
実際に計算してみると、思っている以上におやつを食べさせられることに、驚かれたのではないでしょうか。
「避妊手術済み・16歳・3.2kgの高齢猫」でさえこの量ですので、若くて活発で健康な猫なら、もっと食べさせてもいいことになりますね。しかし、実際には、この種のおやつを毎日食べさせているという飼い主さんは、あまり多くはないようです。
現代の猫の飼い主さんは、栄養的には偏りのあるおやつが毎日の生活に必ずしも必要ではないことをよくご存じです。もし食事以外で毎日食べさせるとしたら、総合栄養食を間食として選ぶ人の方が圧倒的に多いでしょう。
仮に最初はせがまれるまま、むやみに食べさせていた飼い主さんでも、いずれ疑問を感じ始め最終的にはブレーキをかけようとし始めるようです。
おやつはいいのか悪いのか
では、おやつは本当に必要なのでしょうか。
栄養の面から見れば、猫の食事は「総合栄養食のフード」を「規定の量だけ」食べさせていれば十分です。しかし、高齢猫の食に苦労した者としては、猫が総合栄養食以外の食べ物の味を覚えることは、必ずしも悪いことではないと考えます。
経験上、高齢になると猫は色々な理由で今までのフードを食べなくなる傾向が強くなります。理由は、歯が抜けたり噛む力が弱まったり、鼻が利かなくなって食欲がわかなかったりと様々です。飼い主としては、栄養が偏らないように総合栄養食のフード食べさせようと努力するのですが、なかなか受け付けてもらえません。
そんな時に起爆剤となってくれたのは総合栄養食以外の食べ物でした。先ほどの市販のおやつを始め、おさしみやチーズ、焼き魚や牛乳、ヨーグルトなど、それまでたまにしか食べさせなかったご馳走が命をつないてくれたのです。
それは現在も続いていて、16歳の猫はその栄養の半分近くを市販のササミで補っています。先年亡くなった19歳の猫はドライフードしか食べない子だったので、強制給餌しか食事の方法がありませんでした。それに比べると16歳は自力で好きなものを食べる楽しみがあるためか、食べものがより効率的に体重に反映されているように感じます。
おやつの量とタイミング
しかし、これは究極の選択といっていいケースです。
ただ単に猫が喜ぶからという理由で、元気な猫に毎日おやつを全食事量の20%近くも食べさせるのはいかがなものでしょうか。おやつは、猫と知り合うきっかけにはなっても、親密になるために必ずしも必要なアイテムではないのです。
それより、少量のおやつを週末や特別な日に楽しい気分を分かち合ったり、お留守番のありがとうを伝えたりするための「プレゼント」という位置づけにする方がいいかもしれません。それならば、仮に食べ過ぎたとしても、量も少なく間隔も開いているので、普段の食事を調整する必要がないからです。
また、お座りや待て、歯磨きやケージ、キャリーなどのトレーニングにおやつを利用するのもおすすめです。おやつを使って苦手なことを楽しくトレーニングすることで、猫に自信を付けることができ飼い主さんと猫との絆も深めることができます。
こういう特別なトレーニングの場合は、やはり特別なおやつの方が猫の方もモチベーションが上がるでしょう。しかし、途中で集中力が落ちないようにおやつは小さなピースにし、満腹にさせないように調整するのがポイントです。
おやつ厳禁または控えた方がいい場合
ケース1(病気の時)
おやつを食べさせない、あるいは可能な限り控えた方がいいのはやはり病気の場合です。特に、症状が出始めの急性期はおやつのことは忘れましょう。また、少し症状が落ち着いて療養食を食べることになった時も、少なくともドクターのOKが出るまではおやつは控えるべきでしょう。
ただし、食欲が極端に落ちた時には口にするものを選んでいられません。栄養食を強制給餌することになったとしても、たまには好きなものを食べさせて猫に喜んでもらうことが必要です。たったひと口でも自分の意思で食べられれば、辛い気分を上向かせ心身の栄養となってくれるからです。
ケース2(おやつのしつけをし直す時)
もうひとつ病気の時以上に厳しく制限したいのは、猫が執拗におやつを要求し通常の食事をとらなくなった時です。
猫が要求するままにおやつを食べさせていると、ますますおやつの催促がきつくなります。これを普通の状態に戻すには、飼い主さんに断固おやつを拒否する心の強さが必要です。
ただし、お腹を空かせて鳴く猫を拒否し続けるのはなかなかの苦行です。しかし、これは同時にチャンスでもあります。是非ここで遊びに誘って、疲れるほど運動させましょう。十分遊んでお腹が空けば普通のフードを抵抗なく食べて、満足してくれるようになるでしょう。そして、それが数日続けば、おやつのことはだんだん忘れていくはずです。
そうすれば、もうしめたもの。1~2か月も間をあければ、また1から新しいおやつの習慣を始められます。そう考えれば、猫と一緒に我慢するのも楽しく、また励みになるのではないでしょうか。
まとめ
今日のねこちゃんより:もも♀ / 1歳 / アメリカンショートヘア / 4.5kg
猫の中には、おやつを全く受け付けないストイックな子がいます。そんな猫の飼い主さんは、喜ぶ顔が見られないからと少し寂しい顔をします。
しかし、主食のフードをあまり食べず、おやつを求めて強行突破しようとする子も困りものです。おやつに対する飼い主さんの考え方は千差万別ですが、少なくともおやつの主導権は人間サイドが握るべきでしょう。
日常的におやつをあげたいと考えるなら、その限度は摂取カロリーの20%まで。できれば、その子その子の総摂取カロリーを計算し、おやつ量の目安をつかんでおきたいものですね。