猫を熟睡させる5つの環境

猫を熟睡させる5つの環境

長寿の方に「長生きの秘訣は?」と尋ねると、たいてい「よく食べてよく寝て....」という答えが返ってきます。これは猫も同じです。うちの子に元気で長生きしてもらうためには、よく食べて、そしてよく寝てもわらなければなりません。しかし、猫を熟睡させるにはどうすればいいのでしょう?猫が眠るための条件とは何か、考えてみましょう。

1.部屋の温度は適温ですか?

エアコン下の白猫

暑さにうだることなく、寒さに凍えることなく眠れること。それは眠りの第1条件だといえるでしょう。そもそも猫たちは、素晴らしい天然の断熱材(毛皮)を持っています。これは猫の原産地中東の砂漠地帯に合わせた作りになっていて、昼間の40℃前後から夜のマイナス以下までに対応している超優れもの。野良猫が外で生きていけるのも、この優秀な毛皮のおかげなのです。

エアコンの影響で被毛に変化が

しかし、室内飼いの猫たちは、エアコンなどで温度調整された環境に住んでいます。それが原因で、冬場は暖房のせいで毛が薄めに、夏は冷房のせいで厚めになっている場合がほとんどです。その結果、換毛による毛の密度が外気温にマッチせず、大きな温度変化にとても弱くなりました。

これは人間の住環境に合わせた結果なのです。猫たちは人間が快適だと思う温度に身体を合わせているのですから、飼い主さんの快適温度が猫にとっての快適温度です。冬なら室温20℃くらい、夏は27℃くらいでしょうか。

毛足の長さによって調整を

ただし、これは、猫の種類(毛足の長さ)によって少し異なります。短毛種のシャムやバーミーズなどは、暑さに強く寒さに弱い猫種です。逆に、長毛のラグドール、ペルシャなどは、夏ぐったりで冬元気になるタイプです。また、猫の年齢でも快適温度は違います。子猫や病気の猫は体温を奪われやすく、高齢猫は平熱が1℃近く低くて寒がりです。

これら特殊な条件の猫には、エアコンの温度設定を高め、あるいは低めにしたり、服を着せたり湯たんぽで温めたりと、特別な配慮が必要です。

2.静かで落ち着くところはありますか?

音楽を聴く猫

マンションなどで、寝室を北向きの部屋に作ることが多いのは、その位置が家の中で比較的静かで落ち着ける場所であるからです。猫が寝床を決める理由もだいたい同じ。ゆっくり眠りたいなら、静かで落ち着けるところを選びます。

もっとも、猫は浅い眠り(ノンレム睡眠)を長時間続けるロングスリーパーです。気に入ればどんなところでも眠りますし、そうやって1日に14時間も眠るといわれます。ほとんど寝て過ごしているようにみえますが、これには理由があるのです。

長い睡眠で体力温存

ヒョウなどの大型ネコを含むネコ一族はみんな狩りの名手です。しかし、狩りの成功率は1割からせいぜい2割。獲物がいなければ狩りもできませんので、次の食事がいつできるか分からないという生活をしています。そのため、ネコ一族はできるだけ身体を休めて体力を温存し、次の狩りに備えるという戦略をとるようになりました。

ただし、ずっと熟睡していては敵に襲われますし、獲物の気配を逃してしまう。ですから、すぐに危険や気配を察知できるよう、ほとんどの時間をウトウト程度の浅い眠りで過ごすのです。深い眠り(レム睡眠)に落ちる時間は1度にせいぜい5~6分程度。1日の合計でも数時間あるかないかだといわれています。ならば、取り立てて猫用の寝場所を作る必要はないように感じませんか?

よい睡眠で英気を養う

しかし、そうではないのです。同じ場所で過ごしていても、耳のいい猫の世界は人間が感じるよりずっとうるさい世界です。それに、もともと一匹で暮らす生き物ですから、いくら飼い主さんが大好きでも撫で回されるのがわずらわしい時もあるのです。

そんな時、猫たちが頭に思い描くのは、静かで誰にも邪魔されない場所です。暑くもなく寒くもなく、心地よく安心して丸くなっていられる秘密の場所。もしそんな隠れ家的寝場所があれば、そこで猫たちはひと時英気を養い、また元気に甘えてきてくることでしょう。

3.気分で寝る場所を変えられますか?

箱に仰向けで寝る猫

猫はロングスリーパーですが、1ヶ所でずっと眠るわけではありません。また、猫は静かな環境を好みますが、賑やかな家族団らんの場で眠れないわけでもないのです。もし猫が秘密の隠れ家でずっと眠っているとしたら、それは重大な問題を抱えている場合です。しかし、そうでなければ、普通は1日中あちこち寝床を変えていくものです。

気温に対応

それは、1つには気温に対応するため。窓辺は暖かい場所ですが、日差しが移ればガラスが冷えて寒くなります。また、ソファの上は素敵な寝床ですが、暖かい空気は天井付近に集まるため、タンスの上の方が冬はぬくぬく眠れるものです。床の上は寒くても、ストーブの前ならご機嫌ですし、冬は寒い階段も、夏は空気の通り道となって快適です。

状況に対応

また、待機場所が欲しい場合にも、寝場所を変えていきます。子どもが苦手は猫たちは、子どもたちが学校へ行っている間は部屋の真ん中で過ごし、帰って来たら邪魔されないところへ移動します。大きな音が苦手な猫なら、近くで工事が始まれば押入れに隠れ、夕方まで出てこないこともあるでしょう。

選択肢が多いと良い

ポイントはそれがいいとか悪いとかではなく、そういう時に行ける場所があるかということです。なぜなら、寒さに震えたり物音に怯えたりしているようでは、それでなくても少ない深い眠りのチャンスを失ってしまうからです。気温や来客、その日の猫の体調など、その時々の条件によって眠る場所を選べること。それが猫の本当の眠り(レム睡眠)を増やす助けになってくれるのです。

4.運動場は横にありますか?

キャットタワーと茶トラ

人間も猫も、子どもはとにかくよく遊びますから寝る時も全力です。深い眠りに落ちれば成長ホルモンも出ますので、ますます元気な子に育ちます。

しかし、猫の場合、おとなになれば徐々にひとり遊びをしなくなりますし、さらに高齢になると猫じゃらしにもなかなか食いついてくれなくなってきます。それでも、いい眠りを手に入れるために身体を動かすことはとても大事なことなのです。

上下運動が出来る場所

ここでいう「運動場」とは、猫が上り下りできる高低差のある場所のことを指しています。キャットタワーや壁に設置されたキャットステップは、まさに理想の運動場といえるでしょう。しかし、タワーやステップがなくても上下運動はできるのです。

例えば、階段のあるお家なら、階段の最上段におやつを2~3個置いておけば、猫は楽しく階段を上って行くでしょう。また、家具を高さ順に並べてその上を猫に解放すれば、立派なジャングルジムの出来上がりです。さらにその一番奥に猫の寝床をしつらえれば、猫はジャンプしながら眠りに行きます。

もちろん、飼い主さんが年齢に合わせた遊びをしてあげることも大切です。それを含めて、身体を動かせる条件を整えることが、猫たちの快眠につながっていくのです。

5.食事は規則正しいですか?

みんなでお食事タイム

「ダイエットのコツ」は、寝る数時間前に物を食べないこと。しかし、これは「快眠のコツ」でもあるのです。実は、寝ている間にお腹の中に食べ物があると、内臓はゆっくりながらそれを消化します。この消化、つまり内臓を動かすという作業は、かなりなエネルギーを使うものなのです。

身体の方としては、睡眠中は睡眠時にしかできないメンテナンスを行いたい。しかし、それが消化の方にエネルギーを割かれるとなると、メンテナンスが後回しになってしまうのです。その結果睡眠不足となり、傷の回復が遅れたり疲れがとれなかったりといった悪影響が出てきます。ですから、猫の食事もできれば規則的にした方がいいのです。

食事のタイミングが大切な理由

動物飼育のプロである動物園では、だいたい1日に朝晩2回に分けて食べさせるようです。空腹は食欲増進のスパイスとなりますし、内臓の筋肉を休める時間を作ってくれます。最近の研究では、空腹は若返りホルモンを出すともいわれていますね。

それに加え、猫は「薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)」といって、薄暗い時間帯(明け方と夕方)に狩りをする生き物です。それからすると、朝晩の食事は、タイミングとしてそれほど間違っていないのかもしれません。

いずれにしても、空腹の時間帯をつくることは、猫の眠りに効くようです。「環境」というと少し意味が違うかもしれませんが、自分で食べ物を獲得できない生き物にとっては、食事全般も環境の一部分といえるのではないでしょうか。

まとめ

かんぱち

猫の眠りの質向上を考えてみると、人間の眠りの質をあげる方法とあまり変わらないことに気がつきます。快適な環境で、よく食べよく身体を動かすこと。

そして、もし6つ目の条件を足すとしたら、飼い主さんが笑って元気でいてくれることになりそうです。猫にとってみれば、これが1番の安心材料ですよね。飼い主さん自身も眠りの質を上げる工夫をして、猫と一緒に元気で長生きを目指すべきかもしれませんね。

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