猫を祀る「猫神神社」ってどんなところ?

猫を祀る「猫神神社」ってどんなところ?

鹿児島市に、日本で唯一の「猫を祀る神社」があるらしい。この珍しい神社では、一体どのような猫を祀っているのでしょう。そこには奥深い物語がありました。今回は、猫神神社といわれる「仙巌園」についてご紹介いたします。

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猫神神社とは?

鳴く猫

猫神神社とは、神社単独で存在するわけではありません。だから、「猫神神社」とカーナビに設定したところで直接目的地には案内してくれません。それはなぜかというと、猫神神社は「仙巌園(せんがんえん)」という庭園の中に位置する神社だからです。ここは、知る人ぞ知る趣きのあるマニアックな場所なのです。

緑に囲まれた自然豊かな場所にひっそりと佇む神社。丸木の鳥居が目印です。

仙巌園とは

仙巌園は、鹿児島県鹿児島市吉野町字磯にあります。ここは薩摩藩主島津氏の別邸跡とその庭園になります。そして別名、「磯庭園(いそていえん)」と呼ばれています。この仙巌園では美しい花々が咲き、季節によって様々な表情を見せてくれます。また桜島が一望できるスポットもあり、鹿児島きっての観光名所となっています。さらに世界文化遺産にも登録されています。

仙巌園から見た桜島。季節や天候などにより景色が異なることも、その時々を彩る自然ならではの美しさです。

背の高くない矯性(わいせい)ひまわり。主張しすぎることなく美しく咲き誇っています。

夕方には、御殿の大池で幻想的な光景が見られます。

秋には「菊まつり」が開催されます。

ところで、この風情ある庭園と冒頭で紹介した「猫を祀る神社」とはどのような関係があるのでしょうか。そこには人と猫が密接に関わるドラマが隠されていました。

時計代わりとして大活躍した猫たち

猫と時計

仙巌園のメインである御殿を奥へ奥へと進んでいくと、奥まった一角に小高くなった場所があります。そこに冒頭で登場した神社があります。

猫を祀っているということですが、一体どのような猫が祀られているのでしょうか。

鳥居と絵馬が見えてきたら、「猫神神社」到着です。

鳥居をぬけた奥に小さな祠があります。この写真では緑色の色彩が映り込んでいます。猫神さまだけあって、時々イタズラをしてしまうのかもしれません。

猫神さまの猫たちは

この猫神さまは、仙巌園の元になった別邸の持ち主である島津義弘公の猫たちです。ここに祀られる猫たちは、豊臣秀吉の文禄・慶長の役(1592~1598年)の際、島津義弘公とともに朝鮮出兵のために同行した猫たちです。元々は7匹の猫が同行し、そのうち無事に帰還した2匹の猫の魂がこの神社に祀られています。

そもそもなぜ島津氏は猫を同行させたのでしょうか。それは単なる愛猫家として癒しを求めていたのではありません。猫たちは、ここで大役を任され大活躍を果たしました。それが「猫の眼時計」です。猫の瞳孔は明るい場所では細長く、暗い場所ではより多くの光を取り込むために丸くなる特徴を持っています。島津氏はこの特徴を時計として代用したのです。

現代では当たり前のように存在し、我々を支配するものといっても過言ではない時計。それがこの時代にはまだ存在していませんでした。そこで、この猫の瞳孔の様子と明るさを時刻の指標とし現在時刻を知る手段として活用しました。おおよその時刻は以下のようなものです。

  • 6:00(明け六ツ)は丸
  • 8:00(五ツ)は卵
  • 10:00(四ツ)は柿の核
  • 12:00(九ツ)は針
  • 14:00(八ツ)は柿の核
  • 16:00(七ツ)は卵
  • 18:00(暮れ六ツ)は丸

このように、猫の瞳孔の開き具合を時刻に当てはめていたのです。

猫神さまの祭祀とエピソード

神社の猫

ここでは、毎年島津氏の猫たちにちなんだ祭祀が執り行われています。その一部と猫神様にまつわるエピソードをご紹介いたします。

時の記念日

6月10日の時の記念日にあやかり、鹿児島市の時計業者の人々の祭りが行われます。

ご都合の合う方は、記念すべきこの日に猫神さまの元を訪問してみるのも良いかもしれませんね。

愛猫長寿祈願祭

2月22日は、猫の日にちなんで「愛猫長寿祈願祭」が行われます。愛猫の長寿と健康を願う人々が参拝にやってきます。

絵馬の奉納とお焚き上げ

猫神神社では帰還した2匹、ヤスとミケを模した猫の絵馬を奉納することができます。ここには様々な想いを抱えた飼い主さんたちが訪れます。

  • 愛猫の長寿を願う人
  • 健康を願う人
  • 愛猫を苦しめる病から解放されるようにと藁にもすがる思いを抱えた人
  • 亡くなった愛猫の冥福を祈る人

このように、大切な愛猫を想う飼い主さんたちの願いが日々、猫神さまの元へと届けられるのです。そしてこの大切な絵馬は丁寧にお焚き上げされています。

参拝客の不思議なお話

ここでひとつ、本当にあった不思議なエピソードをご紹介いたします。とある持病を抱えた猫と暮らす飼い主さん一家。その猫は持病がありながらも穏やかな日々を過ごしていました。しかし数年が経ったある日、持病が悪化してしまいます。本格的な治療を始めたものの、獣医師からは残り数ヶ月の命かもしれないと宣告されてしまいます。

そんな折、鹿児島市を旅行中だった飼い主さんのご家族が、偶然この神社にたどり着いたのです。そこで絵馬を奉納し、御札を買って帰宅しました。すると、もう完治することがないといわれていた病気がみるみる良くなったそうです。そして10歳を過ぎ、宣告された余命を遥かに超えて元気に過ごしているのです。

もちろんご家族の愛と絆、猫が持っていた治癒力の高さや薬の相性など考えられる可能性はいくらでもあります。それでも、庭園内に位置するこの神社に偶然出会えたということは不思議なことです。猫神さまのお導きだったのかもしれませんね。

茶トラ猫「ヤス」

絵馬の左側に描かれた茶トラ猫の名を「ヤス」といいます。ヤスも実際に出兵した猫の一員で、無事に帰還した猫のうちの一匹にあたります。このヤスは島津義弘公の次子、久保(ひさやす)が愛でていた猫であることからそう命名されました。

久保は朝鮮で21歳という若さで病死してしまいました。久保に愛され、様々な想いを胸に帰還したヤス。この出来事から、この地ではヤスのような「黄色と白の二色の波紋」があるいわゆる茶トラ系の猫を「ヤス」と呼ぶ風習が現在に至っても受け継がれています。

猫神神社の売店「猫屋」とアクセス

売店の台の上で眠る猫

猫神神社の隣には「猫屋」という売店があります。ここでは、絵馬や御札をはじめとした開運グッズ、その他の猫グッズの販売が行われています。

こちらが売店の建物です。猫好き心を擽られる品々が店頭に並んでいるでしょう。

こちらは、猫神様にちなんだ猫人形のひとつです。実際に売店で購入することができます。ここで販売している猫人形はこの商品以外にも多数存在します。

お正月には福引きが行われることもあるそうです。

今年の7月には、大人気猫マンガ「おじさまと猫」の作者である桜井海先生が猫神神社にやって来ました。ふくまるくんとのコラボグッズも発売中です。

ちなみに絵馬や御札、ふくまるくんとのコラボグッズは郵送でもお買い求めいただけます。

猫神神社に行ってみたいという方は、仙巌園の公式Twitterやホームページを一度ご覧ください。

まとめ

美しい庭園の中にひっそりと佇む猫神神社。その成り立ちには先人の知恵と猫の活躍というドラマがありました。現代では猫は癒しの存在です。しかし一昔前の猫は、単なる癒しの存在ではなく人との密接な関係の中で活躍する存在でした。

人々が猫に求めるもの、猫が人間に対して日頃見せる行動の数々は、時代とともに変化しているのかもしれません。しかし、人のために活躍した猫の魂を猫神さまとしてお祀りする心、愛猫の長寿や健康を願う想いは、今後も変わることなく続いていくのでしょう。

猫が大好きという方で、鹿児島を旅する際はプランに加えてみるのも良いかもしれませんね。