猫がドライヤーを嫌がる理由は?
猫がドライヤーを嫌う理由は何となく分かりますよね。わたしたち人間でも、あの大きい音にストレスを感じる人は少なくないと思います。
では具体的に、猫はドライヤーのどこが苦手なのでしょうか。音以外にも理由はあるのでしょうか。ここでは、なぜ猫がドライヤーを嫌がるのかについて詳しく紹介します。
ドライヤーの駆動音は猫が嫌う音域にある
猫は五感の中でも特に聴覚が優れていて、人間には聞こえない周波数の音を聞き取ることができます。「猫は男性よりも女性によくなつく」こんな話を聞いたことはありませんか。
これは猫が大きくて低い声を嫌い、小さくて高い声に安心感を抱くためです。猫にとって低い音は、怒りや恐れなどのネガティブな感情の音なのです。
同様に、ドライヤーの「ブワー」や「ブオーン」といった低い音は、猫にとって苦手な音でしかありません。
お風呂やシャンプーで敏感になったところに、不快なドライヤーの音を聞かされたらストレスになってしまいますよね。
聴力に優れる猫にとっては音が大きすぎる
猫の聴覚は犬の2倍、人間の3倍以上と言われています。ドライヤーの音は猫にとっては大きすぎるのです。
機種による違いはありますが、ドライヤーの一般的な音の大きさは100デシベルです。100デシベルは、地下鉄の構内や電車が通るときのガード下と同じ音の大きさになります。聴力に優れる猫は、人間よりもはるかにうるさく感じているのは間違いありません。
特にアビシニアンやラグドールなどの耳の大きな猫は、大きい音に過敏に反応する傾向があります。猫の近くでは極力大きい音を出さないように心がけたいですね。
ドライヤーに対してトラウマを抱えている
猫は、自分に降りかかった嫌な経験を、長い間記憶しています。これは、野生を生き延びるための能力の一つで、再び危険な目に合わないために必須の能力でした。
そのため、過去に飼い主からドライヤーを無理やり当てられたり、とても熱くて嫌な思いをした、などの経験は猫はいつまでも覚えているのです。また、個体差によってですが、ドライヤーの風を嫌う猫もいます。
「この機械からは熱くて強い風が吹いてくる…」と、嫌な記憶として覚えていれば、ドライヤーを見せるだけで急に逃げ出したり、音を聞いただけで不快な反応を見せることも十分考えられます。
猫にドライヤーをかけるためには、こうしたトラウマとなるような経験はさせないようにしましょう。
ドライヤーを嫌がる猫の上手な乾かし方
猫がドライヤーを嫌う理由は分かりました。「だからといってドライヤーをかけない訳にはいかないし、心を鬼にして無理やりドライヤーをかけます。」このように考えていませんか。
嫌がる猫に無理やりドライヤーを使い続けると、ドライヤーを見ただけで逃げるようになります。そうなると、自宅でドライヤーをかけるのは難しくなるでしょう。
また、自分の身を守るために攻撃的になり、飼い主さんにケガを負わせる可能性も考えられます。今まで築いてきた飼い主さんとの信頼関係もなくなるでしょう。
ドライヤーを嫌がる猫を上手に乾かすには、猫の気持ちを優先して、少しでもストレスを減らすよう努めるべきです。ここでは、ドライヤーを嫌がる猫の上手な乾かし方を紹介します。
吸水性の高いタオルで水分を十分に拭き取る
猫は柔らかい毛が密集しているため、一度濡れると乾きにくいという特徴があります。はじめからドライヤーをかけようとせず、水分をよく吸うタオルやキッチンペーパーなどで十分に水分を拭き取ることから始めてください。
大きめのタオルで猫を優しく包み込み、上から押し付けるように水分をとります。このときにゴシゴシこすらず、毛の根本から拭き取るのがポイントです。ドライヤーをかける時間を極力短くして、猫のストレスを最小限に抑えましょう。
猫の体からドライヤーを離して使う
ドライヤーを使う際は猫の体から離して使ってください。その理由は、人間用のドライヤーは猫にとって温度が高すぎるからです。
ドライヤーの温度は平均100℃〜120℃の高温となっており、近づけすぎはヤケドの原因になります。また、大きな音や風は猫がおびえてしまう原因にもなるでしょう。
猫に使う時は必ず20センチ以上離して使用してください。これだけで温度が30℃以上下がります。猫に風を当てる前に、飼い主さんの手で温度を確認してから行うとなお安心です。
このとき、猫がのけぞったり鳴いたりする場合は、無理に続けようとせず他の方法を検討してください。
ドライヤーを嫌がらない猫の場合は、スリッカーブラシやピンブラシで毛並みを整えながら行うと、絡んだ毛がほぐれ乾かしやすくなります。
デリケートな部分には風を当てないようにする
腰や足元、お腹やお尻を急に触ると嫌がる猫が多くいます。これらの部位は、神経が集中している場所で猫にとってはとても敏感な部分です。
もし、敏感なところからドライヤーをかけはじめると、「とても怖いことがはじまる」「この場から逃げたい」という感情が一気にピークになり、パニックを起こす可能性があります。
ドライヤーをかける順番は、首や肩甲骨などの高い位置からはじめ、嫌がらないようなら、お尻の方も乾かしてあげましょう。顔は嫌がる猫が多いため、無理に行う必要はありません。
猫の顔をタオルで包んでドライヤーをする
猫がドライヤーを怖がるそぶりを見せたら、顔をタオルで包んであげると良いでしょう。その理由は、顔をタオルや布で覆ってあげると「隠れている」という感覚になって落ち着く子が多くいるからです。
これは爪切りのときにも使われるテクニックで、ドライヤーをかける際にも有効な手段です。また、顔に風が当たらなくなったり、大きい音を遮断できたりと、猫がパニックを起こさない対策として活躍してくれるでしょう。
猫がどうしてもドライヤーを嫌がるときの対処法
ここまでは、ドライヤー嫌いの猫に少しでもストレスなくドライヤーをかける方法を紹介してきました。
しかし、中にはどうしてもあの大きな音が苦手で、嫌がってしまう猫もいます。そんな子たちには無理せず、ドライヤーを使わない選択肢も考えましょう。
ドライヤーを使わないのは猫の種類によってはデメリットにもなるので、ご家庭の猫は大丈夫なのか、この章を読んで参考にしてくださいね。ここでは、猫がどうしてもドライヤーを嫌がるときの対処法を紹介します。
音が小さいペット用ドライヤーを使う
人用のドライヤーを嫌がる猫の場合は、音が小さいペット用ドライヤーがおすすめです。
ペット用のドライヤーは家庭用に比べて静音設計になっていたり、最高温度が60℃〜80℃までしか上がらないなど、ドライヤー嫌いな猫に配慮した作りになっています。
コンパクトで持ち運びに便利なものや、人の手がフリーになる置き型タイプなど、飼い主さんにとってもメリットが多いのはうれしいですね。
ドライシャンプーやシャンプータオルでお手入れする
「猫の体の汚れや臭いが気になるけど、お風呂もドライヤーも難しそう…」そう思っている飼い主さんも多いと思います。そんな時はドライシャンプーやシャンプータオルを使ってみてください。これらは水を使わずに猫のお手入れができるため、猫へのストレスを最小限に抑えることができます。
ドライシャンプーを使う際は、毛の表面だけでなく皮膚や毛の根元までしっかりもみこむよう意識して行ってください。
シャンプータオルは毛並みに沿ってなでるように行います。嫌がったらすぐにやめて別の日に挑戦しましょう。徐々に慣れさせていけば大丈夫です。強い香り付きのものもあるので、猫が嫌がらない安全性の高いものを選ぶようにしましょう。
毛が乾きやすい環境に猫をおいてドライヤーは使わない
猫がドライヤーを受け付けない場合は、自然乾燥で乾かすこともできます。ただ、猫の毛はあまり水を弾かず、被毛の中まで浸透した水はとても乾きにくいです。夜遅くにシャンプーしたり、寒い冬にお風呂に入れたりすると、乾く前に体が冷え猫風邪にかかる可能性も考えられます。
猫風邪は、くしゃみや鼻水をはじめ、発熱、食欲低下が起こります。また、肺炎を引き起こし、命に関わることさえある油断できない病気です。
特に長毛種は乾くのに時間がかかるため注意してください。生乾きが長時間続くと、体の表面に菌が繁殖し、皮膚炎や炎症の原因にもなります。
夏であれば日中の暑い日差しで日向ぼっこさせれば乾くかもしれません。しかし、冬はヒーターやこたつなど、暖をとれるもので素早く乾かしてあげます。やけどや脱水には注意して安全に乾かしてあげましょう。
ドライヤーボックスを使う
猫が逃げてうまく乾かせない時や、ひとりでは難しい場合は、ドライヤーボックスの使用がおすすめです。ドライヤーボックスは箱型のドライヤーで、猫を入れるだけで自然と乾かしてくれる優れものです。心地よい温度で猫もリラックスでき、猫にとっても飼い主さんにとってもストレスなく気軽に使用できます。
また、外側からドライヤーを固定して箱の中に風を送り込むタイプのドライヤーボックスもあります。乾燥箱と呼ばれることが多く、使わない時はコンパクトに折りたためる機能的な作りが魅力です。
ドライヤーボックスは、ドライヤーをかけるときだけ猫を中に入れようとしても、怖がって入ってくれない可能性があります。普段から猫のお家として活用すれば、恐怖心なく入ってくれるでしょう。
まとめ
猫がドライヤーを嫌がる時の対処法をご紹介しました。
《猫がドライヤーを嫌がる理由 》- 猫はドライヤーの低い音域の音が嫌い。
- 人間の3倍以上の聴力を持つため、とても大きい音に聞こえる。
- ドライヤーで過去に嫌な経験をしてトラウマになっている。
- 吸水性に優れた大きめのタオルで、上から押し付けるようにしっかり水分をとる。
- ドライヤーを猫の体から20cm以上離して、首や肩甲骨などの高い位置からかけ始める。
- 猫を落ち着かせるために、猫の顔をタオルで包んでドライヤーをかける。
- 音が小さく温度が低いペット用ドライヤーを使う。
- ドライシャンプーやシャンプータオルで汚れを拭き取る。
- ドライヤーボックスや乾燥箱を使用し、ストレスなく乾かす。
- 自然乾燥させるときは生乾きに注意し、猫風邪や皮膚炎にならないよう気をつける。
ドライヤーは、濡れた猫をあっという間に乾かしてくれるので、飼い主さんにとってはありがたい存在かもしれません。しかし、ほとんどの猫はドライヤーが苦手です。無理に乾かそうとせず、猫の気持ちを尊重しながら上手にドライヤーを活用してください。