猫の去勢手術を悩んでいる方へ
猫を飼い始めると去勢手術を受けた方がいいか悩まれる方が多いと思います。手術と聞くと怖いイメージや可哀想だと思うかもしれません。しかし去勢手術はメリットがたくさんあり、病気の予防だけでなくオス特有の問題行動を抑えることができます。
最期まで責任持って飼うには可愛がるだけではいけません。まず猫について正しい知識を付け、その上で去勢手術をどうするか考えましょう。では、オス猫の発情や去勢手術について詳しく説明していきます。
猫が去勢手術をしない場合の影響
去勢しないオス猫は縄張り意識が強く、あちこちに尿をスプレーのようにかけます。また性格も荒くなる傾向があり、縄張り争いやケンカを頻繁にするため、傷が耐えないことが多くなります。
また、その傷によって、猫の伝染病である猫白血病ウイルス感染症や、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)にかかるリスクが高くなります。その他、去勢手術を行わない場合は、精巣に関する病気になるリスクが高くなります。
猫の去勢手術のメリット
- 病気のリスク、予防ができる
- オス特有の行動を抑える
- 性ストレス(欲求不満)の軽減
病気の予防
去勢手術によって精巣を取り除くため、精巣腫瘍や前立腺肥大などの病気を予防することができます。また、ケンカが少なくなることで猫白血病ウイルス感染症や、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)になるリスクを下げることができます。
オス特有の行動を抑える
去勢手術をしたオス猫は性格が穏やかになる傾向があります。また縄張りやメス猫をめぐったケンカや、あちこちに尿をかけるスプレー行動などの問題行動を抑えることができます。
性ストレスの軽減
去勢手術によって精巣を取り除けば、欲求不満の源になる性欲がなくなるため、ストレスを減らせると言われています。またメス猫を求めた徘徊行動も抑えられます。
猫の去勢手術のデメリット
- 生殖機能がなくなり、子供ができなくなる
- 手術時の全身麻酔のリスク
- 太りやすくなる
生殖機能がなくなる
精巣を取り除くため、去勢手術を行えば交尾ができなくなります。
手術時の全身麻酔のリスク
去勢手術は全身麻酔をかけて行います。手術である以上リスクは少なからずあります。少しでもそのリスクを減らすために、術前の検査などをしっかり行うことが大切です。
太りやすくなる
去勢手術を行うと運動量の低下やエネルギーの消費量が低下するのにも関わらず食欲が増すため太りやすくなる傾向にあります。太ることで糖尿病や尿結石ができるリスクが高くなりますので、去勢手術後は運動や食事のカロリーなどに気を付けなければいけません。
猫の去勢手術の適した時期
オス猫は生後6か月前後で交尾が可能な身体になります。メス猫のような決まった発情期間はありません。オス猫は発情しているメス猫につられて発情するため、いつでも発情可能です。
交尾が可能な時期からみて、猫の去勢手術は生後6か月前後で行うのが望ましいと国際猫医療協会が推奨しています。
アメリカの有識者会議では、生後5ヶ月が去勢手術の適齢期とされました。オス猫の問題行動のひとつである尿スプレー行動は生後6か月以降に覚え始めますが、その行為を覚える前に去勢手術を行うのがベストです。
早すぎる手術は、良くないのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、様々な研究の結果では、生後6ヶ月前に行われた去勢手術で、特別な問題は確認できなかったそうです。
尿スプレー行動を覚える前に去勢手術を行えば、生涯その問題行動はしないと言われています。逆にその行動を覚えてから去勢手術をしても、その行動が残ってしまう場合がありますので早めに去勢手術を行うのが良いでしょう。
猫の去勢手術の費用
猫の去勢手術の費用は10、000〜20,000円程度です。各動物病院によって費用は異なり、術前検査や抜糸代など別途かかることもあります。地域猫の場合、 お住まいの地域で補助金が助成される場合もありますので、調べてみても良いでしょう。
手術は日帰りの場合が多いですが、病院や猫の体調によっては1日程度入院する事もあります。手術に関しては、動物病院としっかり、相談して行うと安心です。
猫に安全な去勢手術を受けさせるために注意すること
ワクチン接種
猫が去勢手術を受けると、抵抗力が一時的に下がることがあります。身体を守るためにも、去勢手術前にワクチン接種を済ましておきましょう。
去勢手術前日の飲食について
動物病院によって異なりますが、基本的に手術前日の夕方〜夜以降はエサも水も与えてはいけません。去勢手術は全身麻酔をかけて行いますので、猫は完全に眠っていて意識のない状態で行います。そのときに胃に入っているエサや水を吐いてしまった場合、喉や気管に詰まってしまう可能性があることから、胃を空っぽにしておく必要があります。
猫の去勢手術後の管理
帰宅後は猫をすぐにキャリーケースから出さない
去勢手術が無事終わり、自宅に帰宅後すぐに猫をキャリーケースから出してはいけません。猫の中には病院に預けられたことや痛みにより気が立っている子もいます。そうとは知らずにキャリーケースを開けてしまうと、猫が飼い主さんに攻撃してしまうこともあります。
まず、自宅に着いたらキャリーケースのまま、しばらくそのままいつも猫がいる場所に置いておきましょう。猫を多頭飼育しているお家は更に注意が必死です。去勢手術を受け帰ってきた猫には動物病院のニオイが付いています。
他の猫にしたら「知らない奴がきた!」と思われ、嫌われるなど攻撃されてしまいます。しばらくキャリーケースのまま置いておくことで手術を受けた猫に自宅の臭いを付ける意味もあります。周りの猫や去勢手術を受けた猫自身も落ち着いてきたら出してあげましょう。
術後の傷口の管理
猫が去勢手術の傷口を舐めることができないように、術後はエリザベスカラーを着けて抜糸まで過ごします。猫の舌はザラザラしているため、傷口を舐めてしまうと傷口が開いて腫れてしまうこともありますので舐めないように注意が必要です。
術後の食欲について
去勢術後はなかなか食事をしない子が多いようです。術後の翌日から少しずつ食べるようになればいいですが、全く食べないようであれば動物病院に受診しましょう。
薬の飲ませ方
去勢手術後は自宅で抗生物質などの飲み薬が処方されます。食欲がある場合は缶詰に混ぜてあげるのもいいでしょう。もし薬を飲まない場合は、少量の水で薬を溶かしスポイトで飲ませる、少量のハチミツやマーガリンなどで粉薬を練り猫の上顎に塗りつけるのも効果的です。どうしても飲ませられない場合は、動物病院に相談しましょう。
抜糸
猫の去勢手術は1週間前後で抜糸になります。病院によっては抜糸の必要ない方法で縫合するなど傷口が小さいので縫わないというところもあるので、動物病院の先生の指示に従いましょう。
猫の去勢手術まとめ
猫の去勢とは、オス猫の精巣を手術で取り除き、繁殖機能を失わせることです。猫の去勢には様々なメリット、デメリットがあり、行うか行わないかは、飼い主さんの判断に任せられます。
もちろん、繁殖を行う予定ならば去勢は出来ませんし、繁殖をしないのならば、去勢することが出来ます。
人間の勝手な判断で去勢をすることはモラル的に問題がある、という意見もありますが、年間数万匹の子猫が殺処分の対象になっている事を考えると、去勢手術をせずに子猫が増え、産まれて間もなく殺されてしまう、というのも考えものです。
オス猫はメス猫と違って子供を産むわけじゃないから去勢手術はしなくてもいいと考える飼い主さんがいますが、オス特有の問題行動によって保健所へ持ち込む方もたくさんいます。
もちろん健康な身体に手術なんて可哀想だからしたくないという方ももちろんいます。
しかし一時の可哀想という優しさで結果猫を病気にしてしまうなど問題行動から嫌われてしまってはいけないと思います。去勢手術はメリットもデメリットもあります。
この記事を参考にしていただき、かかりつけの動物病院の先生と相談しながらしっかり考え決めましょう。