致死率100%!?猫伝染性腹膜炎とは
猫伝染性腹膜炎、又は「Feline Infectious Peritonitis」通称FIPと呼ばれ、猫が一度発症してしまうと致死率が恐ろしく高く、そしてあまり研究が進んでいない難しい病気です。
そんな猫伝染性腹膜炎(FIP)について、解説していきたいと思います。
原因について
猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因となるウイルスは、猫腸コロナウイルス(FCoV)というあらゆる場所に存在するウイルスで、糞便を介し感染します。
この猫腸コロナウイルス自体は、病気を起こす力が弱く、また感染している猫は約半数ほど、多頭飼いをしている家の猫では、8割は感染しているとも言われています。
この猫腸コロナウイルスが、体内で突然変異を起こしてしまうと猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPウイルス)となってしまうのです。
この突然変異については謎が多く、今の所考えられる一因としては、ストレスや免疫力の低下などが引き金になってしまうとされています。
症状について
では、もしも猫伝染性腹膜炎にかかってしまったら、いったいどんな症状が起こるのかを解説していきたいと思います。まずこの猫伝染性腹膜炎には2つのタイプが存在し、それぞれ症状が違います。
- ウエットタイプ(滲出型)
- ドライタイプ(非滲出型)
の2つのタイプがあります。
そしてどちらのタイプにも共通して起こる症状としては、
- 元気がなくなる
- 食欲不振
- 発熱
- 嘔吐
- 下痢
- 体重の減少
- 黄疸
などがあらわれます。
次にウエットタイプ(滲出型)にみられる症状としては、腹膜炎や胸膜炎によって腹水・胸水が溜まってしまうのが特徴的です。水が溜まることによって、呼吸困難になることもあります。そしてドライタイプ(非滲出型)では、体の臓器の様々な場所に肉芽腫ができることが特徴です。
ただし確実にこの2つに分類されるわけではありません。
猫のFIP「筆者の体験談」
筆者が出会った猫伝染性腹膜炎の猫は、主に2匹いたのですが、それぞれウエットタイプとドライタイプでした。そのことについて、少しお話しさせていただきたいと思います。
ドライタイプ(滲出型)
ドライタイプを発症した猫は、生後6か月頃のブリティッシュショートヘアの男の子でした。
まずはじめに「おかしいな」と感じたことは、いつもならすぐ食べ終わるご飯を、食べるスピードが明らかに遅く、量も半分ほどしか食べない日々が続きました。
そして、ご飯を食べる量が減ったせいか、便の量もぐっと少なくなったのです。
はじめは便秘かと思ったのですが、日に日にお腹が膨らんでいきました。
この子に関して言えることは、「ご飯の量が減ったこと」、「お腹が膨らんできたこと」以外は症状が出る前と変わらず、ふだんは元気に走り回っていました。
猫伝染性腹膜炎とわかってからは衰弱していってしまい、鳴き声も聞こえるか聞こえないか。
ご飯の量も少し口をつけるだけ、そして何より膨らんだお腹がとても苦しそうでした。
ほんの一か月ほどの出来事だったと思います。
食欲の減退から始まり、みるみるうちに症状が悪化してしまう、私が初めて出会った「猫伝染性腹膜炎」を発症した子猫でした。
ドライタイプ(非滲出型)
次にドライタイプを発症した猫は、生後4、5か月ほどのラグドールの男の子でした。
この猫も、最初は食欲の減退から始まりました。いつもの半分ほどで残してしまう日々が続きました。
糞の量はめっきり出ないわけでもなく、そして下痢や軟便などの症状もなく、はじめは季節が夏だったこともあり、少し夏バテなのかもしれないと思いました。
そして、この子は寝ている時間がぐっと増えて、あまり動かなくなったのです。
子猫なので一日の合計睡眠時間が多いのはもちろんですが、基本的に走りまわったり、おもちゃでじゃれたり、遊んでは眠るというサイクルで生活するので、動かないというのは異常なのです。
はじめのうちは病院の先生も猫伝染性腹膜炎とは思わなかったのですが、そんな生活を2週間ほど続いたあと、決定的な出来事が起こりました。
ある日突然、その子の動き方が異様なことに気がついたのです。フラフラとしている、下半身に力が入っておらず、しっかりと歩行ができなくなっていたのです。また、トイレ以外での場所で排便をしてしまうこともありました。
病院の診断で、猫伝染性腹膜炎のドライタイプと判明しました。
どうして歩行困難になってしまったかと言うと、ドライタイプの特徴である肉芽腫が脳内にできてしまい、神経を圧迫したことによるのではないか、恐らくトイレ以外の排便も下半身に力が入らずに起こってしまったのだろうとのことでした。
本当に恐ろしい猫伝染性腹膜炎
ドライタイプを発症した猫はウエットタイプの猫伝染性腹膜炎とは違う症状だったので、まさか同じ病気だったとは考えもつきませんでした。しかしどちらの子も、始まり方は同じ食欲の減退からでした。
正直なところ、この食欲の減退というのは、わりとよくあることですよね。
ただこのようなことを体験してからは、小さな異変も見過ごさずに、気になることがあったら迷わずに病院へ連れて行くことが何よりだと感じました。
どちらの子も症状が出てからあっという間の出来事だったのです。
もちろん成猫や老猫での発症もあります。なかなか完治するということが難しいとされている病気ですが、やはり早期発見というのはどんな病気であっても大切なことになります。
また、発症してしまった猫に対して治療が困難なことも多く、愛猫が弱っていく姿を看病することは、飼い主さんにとっても大変つらいことだと思います。しかし、完治したという猫ちゃんも少なからず存在することも事実です。
さいごに
筆者の体験談が、必ずしも猫伝染性腹膜炎の症状に当てはまるとは限りませんが、あくまでもそのうちの一つとして参考になれば幸いです。
そして年間300匹以上の子猫をお世話していますが、その中で、今まで猫伝染性腹膜炎に出会ったのは2匹だけです。
もちろん子猫が、飼い主さんにお迎えされてから発症されているかもしれませんが、やはりそれでも猫腸コロナウイルスの感染率の高さから考えて、猫伝染性腹膜炎の発症率は高いものではないことも事実ではあります。
一日でも早くこの猫伝染性腹膜炎の解明がされて、治療が進むことを願っています。