【私と愛猫との出会い〜阿部梨緒奈さんの体験談〜】
名前はクロ
もともとは2匹一緒に飼われていたのですが、飼い主さんが引っ越すことになり1匹だけ置いていかれたあまりにも可哀想な猫。近所ということもあり、何度か見かけていたので一応顔見知り。おやつをあげたこともあります。
置いていかれたクロは、我が家を度々訪れ餌を求めるようになりました。
一度捨てられたことによる警戒心なのか、餌は食べてくれるけど撫でたり触ったりはさせてくれません。シャーッと威嚇されることもありました。
そりゃあそうですよね。信じていた人間に捨てられて、いきなり野生の猫として生きていかなければならなくなったのですから。私がクロの立場だったら二度と人間なんか信じない!って思います。
距離を縮めたい
餌を食べに来るクロを見ていて、なんとかもう一度人間を信じて甘えて欲しいと思い、少しずつ距離を縮めていきました。
最初の頃は餌を置いても私の姿が見えると食べてくれなかったので、庭に餌皿を置いて私は家の中でこっそり見守るという感じでした。
寒さ対策で段ボールの小屋も用意しましたが、小さすぎて不服そう。
2ヵ月くらいして、ようやく目の前で餌を食べてくれるようになり、触ることもできるようになりました。
家の中へ
そろそろ我が家に招き入れる準備をしようと思い、まずは玄関で餌を食べることに慣れてもらいました。
しかし、警戒心が強く、玄関のドアが閉まると途端に大鳴きして、ドアをガリガリ引っ掻くので大変です。しばらくはドア全開の状態でしたが、半年程してドアを閉めても怒らなくなりました。
そして、我が家が安全だとわかってくれたのか、玄関だけでなくリビングにも入って来るようになったのです。
最初はあちこちキョロキョロと見渡して少し不安そうに家の中を歩き回っていましたが、季節は真冬。クロはコタツという暖かい場所を見つけてしまいました。一度入ったら完全にコタツの虜。その日は一日コタツの中で過ごしたクロでした。
病気発覚、外出禁止
野生で過ごしたせいか、クロはすぐには家猫になれませんでした。昼夜問わず外に出掛けなくては気がすまない性格でしたので、家にいる時間と外にいる時間が半々くらいの割合でした。
そんなある日、外に出掛けたクロが傷だらけで帰って来ました。全身確認すると20ヵ所近くもの切り傷があり、血が滲んでいます。おそらく野良猫と喧嘩をしてしまったのでしょう。
診察室で傷を見てもらい、消毒とワクチンをしてもらいました。野生の時期があったということで、ついでに寄生虫や猫エイズなどのチェックもしてもらいました。
そこで発覚したのですが、なんとクロは猫エイズ陽性でした。猫エイズは一度感染しまうと完治はできず、さまざまな病気を併発しやすくなります。少しでも発症を遅らせる為には病原菌の少ない家の中で飼い、外に出すことはやめた方が良いと獣医さんに忠告されました。
私もクロにはいつまでも元気でいてもらいたいので、この日から完全家猫計画が始まりました。いきなり外に出れないという状況にクロは理解できる筈もなく、いつも通り出入口に待機して開けろと催促。
もう外で遊ばせてあげられないという事実と、窓から外を羨ましそうに眺めるクロの姿に心が痛みます。何とか外への興味を逸らそうと、キャットタワーやおもちゃを買って沢山遊んであげました。
2年程経った今でも窓から外を眺めることはありますが、出たがる素振りは見せなくなりました。
あれから2年半
家での生活にもだいぶ慣れたようで、急所であるお腹を見せて仰向けになっていることもあります。仕事から帰ると真っ先に撫でてくれのアピール、膝にのってフミフミ。私が移動をすると何処でもついてきて、とても可愛いです。
捨てられた当初は威嚇して警戒心剥き出しだったのに、今では面影もありません。これほど信頼してもらえるようになって本当に良かったです。これからもクロが安心して過ごせるように目一杯可愛がってあげたいです。