留守番中に子猫の鳴き声…救いの輪が広がり幸せな家猫に!

留守番中に子猫の鳴き声…救いの輪が広がり幸せな家猫に!

12月初めの日曜日。寒い冬の夕暮時に突然現われたみすぼらしい子猫。田舎の一軒家で、小さな命を拾ったときのお話です。

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【私と愛猫との出会い〜楓屋ナギさんの体験談〜】

空が薄暗くなる時刻。たまたま遅くまで実家の留守番をしていた私の耳に、庭の方から猫の声が聞こえてきました。「びえーっ、びえーっ」と潰れた声で鳴いています。

この近辺を縄張りにしているノラ猫だと思い、気にも留めず帰り支度を始めました。しかし声はいつまでもやむことがありません。どんどん切迫した響きを帯びてきます。そこでようやく子猫の声だと気づき、慌てて声の主を探しました。

いつからそこにいたのでしょう。庭に積んであった木材の上で、力いっぱい助けを求めるちびっ子。手を差し伸べると、自分からよろよろとすり寄ってきました。

ここに来るまで、どれほどの距離を歩いてきたのでしょう。泥まみれです。抱き上げてみると小刻みに震えが伝わってきます。急いで首にかけていたスヌードでくるみました。

灯りの下で見ると特に顔の汚れがひどい。左目のまぶたがぴったりくっついて塞がっています。子猫は私にしがみついてゴロゴロと喉を鳴らしています。

これからどうしたらいいのでしょう。夜になればこの家は無人になります。ここに住んでいるのは亡き父の愛猫だけ。気のいいメス猫ですが子育ての経験はありません。その上末期の口腔癌で闘病中です。

自宅アパートは動物禁止。動物病院も休診日です。迷った末、この子の体力と運に賭けることにしました。

保護した子猫

生き延びて下さい

この子のために今できることは何でしょう。栄養のあるものを食べさせ、体を清潔にし、温かい寝床で休ませました。

まずは、ペースト状の総合栄養食を与えてみました。小皿に入れて差し出すとガツガツと平らげて、お代わりを要求してきました。相当長い間、空腹を抱えていたのでしょう。

満足するまで食べさせてから、温かい濡れタオルで顔を拭きました。両目とも無事。きちんと見えているようです。左目も開きました。

たまたまテント型の冬用ベッドがありました。飼い猫のために購入したのですがサイズが小くて使えず、未使用のままになっていたものです。ダンボールの中にシートを敷きテントを入れました。いつでも水が飲めるように水を入れた皿も入れておきます。

用意ができるころには、子猫は眠りかけ。ずっとしがみついていたスヌードと一緒にそっとベッドの中に入れました。屋外で一晩過ごすよりはずっとマシなはずです。

それから、可能性は薄いですが飼い主がいるかもしれません。あとでご近所の方々に確認することにします。「明日までがんばって」テントに向かって声をかけ、祈りながら実家を後にしました。

テントベッド

動物病院へ

寒空の下で「だれかたすけて!」と叫んでいた小さな子猫。一夜明けて安否を確認しましたら、テントの中でぐうぐう寝ていました。昨日の段階で『見捨てる』という選択肢は消えました。ご近所の方に訊ねたところ、行方不明の子猫を探している人もいません。

次に現われてきた選択肢は2つ。『飼う』か『里親を探す』かです。どちらにしても、まずは動物病院へ。寝ている子猫をテントベッドに入れたままダンボールごと運びました。

ダンボール箱を抱えて来院した私を見て、獣医さんは飼い猫の容態が急変したのかと思われたのでしょう。中から子猫が出てきたのを見て驚かれたようでしたが、「検査をお願いします」それだけで事情を察してくださいました。

診察台の上の子猫

診察の間に看護師さんがひっかき防止のためのカラーを作ってくれました。古いレントゲン写真をはさみで切って、ホッチキスでパチン。この子のためだけのオーダーメイドです。

病院には次から次へと患畜さんがやってきます。骨折した犬や手術予定の犬。猫もいます。子猫はすっかり飼い猫のような顔をして。私の膝の上に座っていました。

カラーをつけた子猫

どのくらい待ったでしょうか。ようやく手の空いた獣医さんが結果を教えてくださいました。「猫エイズや白血病はありませんよ。虫も出ませんでした。」その言葉にほっと息をつきます。

診断結果は、性別は女の子。生後3ヵ月弱ぐらいで体重は480gとのことです。猫ウィルス性鼻気管炎というものにかかり、熱発と目ヤニの症状がありました。『猫ウィルス性鼻気管炎』は猫風邪の一種です。

鼻水・くしゃみ・発熱など典型的な風邪の症状のほかに、涙や目ヤニが増えたりすることがあります。子猫や老齢の猫など、免疫力が低下している猫が感染すると重症化することもあります。そうしますと急激に衰弱し、脱水症状などを起こします。

こちらの病院にも、目にフタをされたような状態の猫を見つけた小学生が「ボンドでいたずらされてる」と持ち込んでくることがあるそうです。そのような状態のまま放置すると失明の危険もある、と獣医さんが教えてくださいました。

目薬の写真

この子猫の場合、体力的にもぎりぎり。昨日保護していなければ今日は生きていないとも言われました。ですが幸運なことに、血液検査の結果は、猫免疫不全ウィルス(FIV)と猫白血病ウィルス(FeLV)共に陰性でした。

血液検査の結果

保護団体によっては検査をしないところもあるそうです。金銭的な理由もあるでしょうが、病気が見つかった場合に里親さんのなり手が見つからないからという事情もあるようです。

『どちらにも感染していません』という説明を受けて保護猫を引き取った方々が念のために検査をしたところ、両方のウィルスに感染していたことが分かったという例もあるそうです。獣医さんから「陰性」のお墨付きをいただきましたので、堂々と里親さんを探すことができます。

風邪の方は一週間もすれば治るようです。少々お財布は痛みましたが、命には代えられません。

レシート

温かな手

子猫は私に抱っこされたまま、いい子にしています。動物病院から帰宅してすぐ、造園会社の社長さんがいらっしゃいました。本当に偶然なのですが、その日から庭の造作の作業を始めていただく予定になっていたのです。

話を聞いた社長さんは、「捨て猫?そんな今どき…。ドラマみたいですね」と、興味を示してくださいました。社長さんは子猫の写真を撮影し、ラインと電話で家族会議を開いていただいたようです。

会議の結果、子猫は家族の一員として迎え入れられ、その日のうちに新しいお家へと帰ってゆきました。

瀕死の子猫を保護してから、24時間。こんなに幸運が続くこともあるんだ。笑顔の子どもたちに大切そうに抱っこされ、車に乗って去って行く子猫を見送るときには涙が出ました。

まとめ

あれから1年半ほど経ちました。社長さんとは何度か会う機会があり、写真も見せていただきました。子猫は「アン」という名前をもらったそうです。由来は「大安吉日」。優しい家族に恵まれて、幸せに暮らしています。

もう2歳になるアンちゃんは、やんちゃでお転婆だと聞きましたが、おとなっぽくなったでしょうか。

こちらの方では、癌を患っていた猫がいなくなり、入れ替わりにノラ猫たちがやってきて家族になりました。現在4匹。その中で女の子はひとりです。この子を見ると、時々アンちゃんのことを思い出します。

サバ猫

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