「猫、いるか?」…偶然が繋いだ愛猫との出会い

「猫、いるか?」…偶然が繋いだ愛猫との出会い

ひどい猫風邪と結膜炎で目がふさがり、あと少し遅ければ命の危険のあった子猫を保護したことで、大げさではなく人生が変わりました。運命の出会いから現在までの様子をお届けしたいと思います。

【私と愛猫との出会い〜mama*さんの体験談〜】

仕事中に運命の出会い

2020年6月21日、日曜日。勤務先の事務所に、お向かいの飲食店のお父さんが「猫、いるか?」とやってきたことが全ての始まりでした。

上司にお願いして離席の許可をもらいお向かいへ。右目だけがかろうじて開いているものの、左目は目やにでふさがり、鼻もガビガビ、くしゃみの止まらない小さな子猫が、段ボールの中で震えていました。

タオルにくるまる子猫

店主の女性によると、草むらの中に白と黒の小さな丸いものを見つけたので下車したところ、この子が鳴きながらすがってきたのだそうです。彼女は子猫を葉っぱで隠し、急いで段ボールとタオルを取りに帰宅。同じ場所にいてくれるよう祈りながら運転しました。

現場へ戻ると、子猫が再び鳴きながら足元にすがってきたので、泣きながら助けたのだと言います。

とはいえ飲食店の開店前。食品を扱う仕事柄、動物を飼うのは難しく「放っておけず勢いで助けてしまった…」と困っていたところで、彼女のお父さんが向かいで働くわたしを呼びにきた、という経緯でした。

店主さん同様に放っておけず、わたしはその場で大家さんへ電話をしました。大家さんは以前から生き物と暮らしたいと話していたので「運命だね」と即答してくださりました。夜勤の仕事をし、日中は家にいる夫に事情を説明し、家へ連れて帰ってもらいました。

この日はよりによって日曜日で、動物病院が休診。夕方、夜勤へ行く夫とバトンタッチをし、子猫用のミルクやご飯を用意したのですが、人肌にしたミルクもぬるま湯を浸したガーゼもご飯も全て拒否。小さく丸くなってすやすや眠るばかりです。

湯たんぽの上で眠る子猫

おしりをトントンしてもおしっこもせず「このままわたしが寝てしまって、起きた時に息をしていなかったらどうしよう」と不安で仕方なく、湯たんぽ2つと毛布でひたすら温め続けました。何度も毛布をめくっては上下するおなかを確認し、一睡もせずに朝を迎えました。

生きてさえくれたらそれでいい

赤ちゃんだと思っていたら…

わたしの暮らす北海道の小さな田舎町には、動物病院がありません。翌朝、動物病院の受付開始時間と同時に泣きながら電話をかけて事情を説明し、車で1時間の隣町の動物病院へ向かいました。

診てもらうと、猫風邪とウイルス性の結膜炎、そして脱水。かなり危険な状態でした。

結膜炎で目の開かない子猫

片手に乗るほど小さく、どう見ても赤ちゃんだと思っていたのですが、歯も生えていて月齢的には2ヵ月でした。ですが、体重は250gしかなく平均の1/3ほどだと言います。

母猫の母乳から得られる免疫力がないので免疫力をつける点滴と、脱水を改善するための点滴を投与することになり「今週は1週間毎日来てください」と言われました。偶然この日から3連休だったわたしは3日間、それ以降は夫が夜勤明けに毎日通院しました。

自分でご飯を食べられない!

目と鼻がふさがっておりミルクやフードを食べ物と認識していない可能性があるとのことで、ミルクと療法食のウェットフードはシリンジで与えることになりました。

夫は犬と暮らした経験は長いのですが、猫は初めて。わたしに至っては、生き物との暮らしそのものが初めてです。必死の日々が始まりました。

性別は女の子。鍵しっぽなので、キーちゃんと名付けました。

「自分からご飯を食べられるようになるまでは安心出来ません」と言われ、毎日必死でふやかしたウェットフードをシリンジで与え続けること6日間。7日目の早朝、それまではこぼれて足に落ちたフードにも無反応だったのが、落ちたものを自分から食べたのです。

すかさず、わたしの膝に敷いているペットシートにフードを出すときれいに食べ、この日から目を見張るほどの回復を見せました。先生の言葉の意味を痛感し、食べることは生きることだと改めて思いました。

シリンジでご飯を食べる子猫

猫のための新しい生活様式

ちょうど「ステイホーム」という言葉が浸透し始めた時期でした。今なお続くコロナ禍ではありますが、家にキーちゃんがいることが何より幸せで、仕事からもすぐに帰宅します。

キーちゃんが元気になった今も、むしろ家から出ずにキーちゃんと過ごしたいと、自由に外出が出来ないことも苦にならない日々を過ごしています。

どちらかというと寡黙で感情を表に出さない夫も、夜勤明けに帰宅すると毎朝真っ先にキーちゃんに嬉しそうに挨拶に行きます。我が家には子どもがいないので、見たことのない彼の一面を見ることが出来たことも嬉しい発見でした。

片目がぱっちり開いた子猫

あんなに弱々しかった子猫が、すっかりおてんばに!

推定4月生まれのキーちゃんは、今や1歳3ヵ月。2021年6月には、うちのこ記念日も迎えることが出来ました。

結膜炎のひどすぎた左目は毎日点眼を続けましたが半年以上膜がはがれず、避妊手術の際に一緒に手術をしました。

左目の経緯

どんなキーちゃんでも生涯大切に育てると誓って保護しましたが、病院へ迎えに行き、まん丸の目になったキーちゃんを見た時には涙が止まりませんでした。血管に近い場所のため上下にほんの少し膜の名残が残っていますが、よく見ないとわかりません。

そんなことをものともせずに家じゅうを飛び回るおてんば娘に成長しました。木登りが得意で、ステップを外した突っ張り型のキャットタワーをものすごい速さで駆け上がります。人が大好きで、郵便屋さんや来客にもしっぽを立てて窓から挨拶に行き、たくさんの人にかわいがられています。

キャットタワーの頂上にいる猫

まとめ

あの日、店主さんがこの子に気付かなければ、キーちゃんは助からなかったかもしれません。猫の多いエリアだからと徐行してくれていたことで命が繋がりました。

助けてくれた店主さんは「逃げるどころか自分からすがってきた。生きたいんだと思って放っておけなかった」と涙ながらに教えてくださり、わたしも泣きながら聞きました。

キーちゃんが鍵しっぽに幸せを引っかけてきてくれたように、ひとりでも多くの猫が優しい人と出会い、温かいおうちの中でおなかいっぱいご飯を食べ、おなかを見せて幸せに眠れるように、願ってやみません。

ハンモックで眠る猫

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