あの日、あの時間に犬の散歩に出かけなかったら
我が家には今年7歳になる犬(ミニチュアシュナウザー♂)がいます。4年前の早朝、夫がいつもと同じように、出勤前の散歩に出かけました。
そして途中、ゴミの集積場所を通り過ぎようとした時のこと。犬が、しきりにゴミ袋を気にしたそうです。普段とは違う様子に、夫がゴミ袋の山に近づいたところ、一つの袋から、猫の鳴き声が!それも必死に、訴えかけるように鳴いていたそうです。
慌ててゴミ袋の口を開いたら、伐採された庭木の枝の中に、小さな小さな茶白の子猫が埋もれていたのでした。
生きようとする力
犬の散歩バッグに入れて連れて帰ってきた子猫は、本当に小さくて、手のひらにちょこんと乗るくらいの大きさでした。当然まだ目は開いておらず、なんと臍の緒もついたまま。毛は濡れて薄汚れ、震えて、それでもひっきりなしに鳴いています。お母さんを探している、そして、生きようとしている、と強く感じました。
私たち夫婦は、靴の空き箱にタオルを敷いてその子を入れ、動物病院に連れて行きました。生後2、3日で性別はまだ不明。基本的な子猫のお世話方法を教えてもらい、病院で使っている哺乳瓶と子猫用ミルクをいただきました。なんと、診察代はかかりませんでした。
病院の先生は、小さな命をゴミ袋に詰めて捨てる人がいることに怒っていました。そして、子猫のお世話は目が離せず大変だから、もし出かける用事がある場合は病院で預かる、里子に出したいなら病院内に張り紙をしたらどうか、とも言ってくれたのです。
最初は、里子に出すつもりでいました。我が家には犬がいたからです。それまでは母猫がわりに一生懸命に世話をしようと決め、家族で協力しました。以下は子猫のお世話で大変だったことです。
- 夜中も含め2時間置きの授乳。少しずつしか飲めないので、その度に哺乳瓶の消毒と、ミルクを適温にする(人間の赤ちゃんと同じですね)。
- お尻を刺激して排泄させる。何度か便秘になったので、綿棒で軽く刺激したり、どうしても出ない時は病院に連れて行き、先生に出してもらいました。
- 体温調節。まだ朝夕は肌寒い時期だったので、タオルの下の一箇所にカイロを入れて、体温調節ができるようにしました。
体重は、保護当時100グラム弱だったのが、順調に増えていきました。そうして目が開く頃には、家族全員が、この子猫の可愛らしさに、すっかり心を奪われてしまっていたのです。
先住犬とも仲良しに
家族に迎え入れる決め手は、やはり犬でした。もともと穏やかで優しい犬ですが、猫のことも受け入れ、上手に遊んでくれるようにまでなったのです。猫の方も、犬を仲間だと思っているのか、甘えたり、時にはケージの中で一緒に寝ることも。
性別は、オスと判明。そこで、「デン」と名付けて、最後までうちで面倒をみよう、ということになりました。名前の由来は、小さな体なのに生きる力が強く、堂々と、デーンとしていたからです。
すくすく育って、健康でいてくれることが幸せ
生まれてすぐに人間に育てられたデンは、ヤンチャながらも、甘えん坊な子です。ミルクを哺乳瓶で飲ませ、離乳食を手から食べさせたせいか、水も、器よりも人の手で飲ませてもらうことが好きです。人間の後追いをして、抱っこをせがみ、一緒に眠り、時には熱心に家族のおでこをなめてくれます(けっこう痛い、痛いけど幸せ)。
まとめ
あの日犬の散歩が違うルートだったら、時間がもう少し遅かったら、など、考えると胸が苦しくなります。デンを見つけることができて本当に良かったと思うと同時に、人知れず葬り去られる不幸な猫がいなくなるように、願ってやみません。
いまだに、ゴミ置き場の側を通る時はなんとなく耳をすませてしまいます。私たち家族がデンを救出したのですが、実際は、デンにもらっている幸せの方が何倍も大きい。出会えたこと、デンの存在そのものに、感謝する日々です。