私が保護猫をお迎えした経緯、理由
突如、近所に人懐っこい茶トラの野良猫ちゃんが現れるようになりました。20年ほど前に住んでいた我が家の近所には、子供がいるご家庭が多かったのですが、ある日、向かいのアパートによくやって来るようになったのです。
どうやら息子の同級生のおうちが外で飼っている、というか餌をあげている様子。おそらく、近所の誰かが仔猫を拾ってきたのだと思います。当時は野良猫がたくさんいましたが、仔猫は珍しく、近所の子供たちの話題になっていました。
子供たちも、小さい猫ちゃんがいてお水あげたいから家に入れていい?という感じで、我が家と向かいの玄関先を行ったり来たりするようになりました。夏場はバッタを食べていたり、もらった缶詰めを食べたり、水が欲しくなると我が家に来たり、わりと自由に過ごしていた茶トラちゃん。
しかし、冬になってくると、外は寒いし…向かいのおうちでは、餌をあげる以外のことをしている様子はありません。かわいそうに思い、ひとまず庭に段ボールと毛布を敷いたものを置いてあげて様子を見ていました。
冬本番になり、本格的に寒くなると「開けてなーー」という感じで、茶トラちゃんが網戸をガリガリすることが増えました。冷える夜は我が家に滞在し、向かいのおうちの方が起きだす頃に、また外に行くという生活が春まで続きました。
外と行き来している間はノミがすごかったので、我が家では毎回ノミ取りに追われていました。
そうして春になると、向かいのアパートの奥さんが「うち引っ越すのよ。旦那が猫アレルギーだから猫も飼わないし、連れて行かないんで懐いているならどうぞ。」と、信じられない言葉をかけられたのです。
その時はあまりに絶句して、何も言えませんでしたが、すぐにうちでちゃんと面倒をみてあげようと決めました。とりあえず、茶トラちゃんが外に出ることのないよう家の中で飼う準備を始めましたが、当時住んでいた家は一階で、まだエアコンも取り付けていないような状況。茶トラちゃんは隙を見ては脱走し、向かいのアパートの軒下で鳴いていました。
我が家では茶トラちゃんに「ちび」と名前を付けました。「ちびがまた逃げた!」と、近所の子供たちが総出で軒下からちびを出してくれたりしたものです。
保護猫をお迎えして大変だった事
保護した当時は「どうして置いて行かれたのか」「どうして家に入らないといけないのか」ということがわからなかったちび。何度も脱走を繰り返しては家に戻される生活が続き、遂には発情期も迎え『スプレー祭り』が始まります。
そろそろ病院で去勢手術してケアをきちんとしないといけないと思い動物病院へ。去勢手術やノミ取り、回虫下しなどケアをしました。ちびのお腹周りはいつもぶよぶよで、太っているのかな?と思っていましたが、実は回虫がいたため、栄養が取れておらず皮が伸びた状態だったということもわかりました。
その後、5階の部屋に引っ越しをしてからは、ちびの脱走癖もだいぶ収まったようにみえたのですが…引っ越しから2日後、一度だけ誰も見ていない隙に脱走したらしく、5階と4階の雨どいの間にはさまって一晩鳴いていたそうで、同じ階の猫を飼っている方が見つけて知らせてくださいました。
私を見つけると悲しい声で「にゃーーーー」と鳴き、雨どいから引っ張り出すとまたダッシュして、今度は猫を飼っている方のおうちの鉢植えの影に隠れます。子供たちが玄関を開けて「ちび~~~」と呼んだら、猛ダッシュで家に入りました。
それ以来、ちびは玄関から1メートルしか出歩きませんでした。たまに外に出たがるので、玄関を開けてあげると1メートルくらいのところで『ニャルソック』をして戻ってくるという感じでした。
保護猫をお迎えして良かったなと思う事
ちびは本当に賢い子で、ダメということは一回でわかってくれて、テーブルに乗らない、台所に上がらないという子でした。ただ、野良だった頃の習性もあるのか、人が食べるものに興味があって欲しがってしまうのには困りました。
それでも人を信頼し、私たちが悲しい時や苦しい時をすぐに察して寄り添ってくれる優しい子でもありました。
ちびがそばにいると病気が早く治るので『ヒーリング猫』と呼んでいました。さらに、私たちが病気にかかるとそばに来るので『病気探知機』として頼ったりもしていました。子供たちはよく「ちびがそばにいるから具合が悪いのは本当だね」と言っていました。
ちびという名前でしたが、実は体重が7.5キロあって、顔だけ小さかったのでみんな身体を見ると「でっかいね~~」と言われてしまう子でした。
特に三男が生まれた時は、親以上にそばにいて、毛づくろいをしたりと面倒をみてくれたので、三男のことが大好きだったようです。三男は、生後2週間から中耳炎や鼻炎で病院通いが続き、3歳になってようやく落ち着いたので、ちびにしてみたら本当にヒーリングしがいのある子だったのかもしれません。
愛猫の現在の様子
保護した当初から人慣れしていて抱っこ大好きな猫ではありましたが、早くから猫社会から断絶され寂しい思いもあったのか、とても甘えん坊でした。
どちらかというと自分を猫と思っていないふしがあり、お友達のおうちの猫ちゃんと交流した時などは、猫社会にあるまじき行為、お尻からニオイを嗅ぎに行っちゃうという失礼さを発揮!猫友達ができなかったぶん、我が家の一員としてとても絆が深かったと思います。
とにかく抱っこ大好きで、毛布や柔らかい布と共にふみふみしながら、ゴロゴロゴロゴロ。そして、どんどん体が伸びてしまうという微笑ましい姿を見せてくれました。家に誰かがいると、ゴロゴロ喉を鳴らしながらやってきて、抱っこされているという猫ちゃんでした。
2019年12月に虹の橋を渡ってしまったので、今はそばにいませんが、月命日に新しい猫ちゃんとの出会いをサポートしてくれたんじゃないかな?と思っています。
今、我が家には新しい家族のシャルルちゃんがいます。きっと、ちびが連れてきたんだろうなと思えるようなことがたくさんあって、今でも「ちび!シャルルにお留守番教えてね!」とか「ちび!シャルルにいろいろ教えてあげて!」と、話しかけてしまいます。
まとめ
今、ちびは肉体のある状態ではなくなりましたが、20年近く我が家の色々な事件に付き合ってくれて、本当に感謝です。子供が骨折した時もいつもそばにいてくれて、私が骨折した時や手術の後なども一緒にいてくれました。
シャルルとの出会いも含め、ちびと出会えて本当によかったなと思えます。また、どこかでもう一度ちびに会えるような気がしていて…その時はシャルルと出会った時のようにまた保護猫ちゃんと出会い家族に迎える形で巡ってくるのではないかと思っています。
今も地域猫や餌やりのことが問題になっていますが、我が家に来たちびも例外ではなく人間に猫を飼う意思が無いまま、外で餌やりをされていた猫です。そんな猫ちゃんがまだまだたくさんいますが、少しでも家族の一員としておうちで幸せになる猫ちゃんが増えてくれたらいいなと心から思います。