猫が嫌いな音は「低くて大きな音」
結論から言うと猫が嫌いな音は、「低くて大きな音」です。一般的に猫が女性に懐きやすいと言われるのは、女性の声が高めだからだ、と言われています。高めの声は子猫の声に近く猫が好みやすい、という説もあります。高い音を出す生き物は体が小さいので、自分にとって危険な相手ではない、と猫は本能的に判断している可能性もありまするかもしれません。
反対に、男性の低くて野太い声は猫にはあまり好かれないと考えられています。低くて野太い声は、自分にとって危険な捕食動物と結びついているかもしれません。
猫が嫌いな音の具体例
男性の声があまり好きではないことがある、と既にお伝えしましたが、それ以外で猫が嫌いな音には、どんなものがあるでしょうか?
- 拍手する音
- 雷の音
- 花火の音
- くしゃみをする音
- 「フー」と大きく吐く息
- フライパンで焼く時の「ジュー」という音
- 金槌で釘を打つ音
などです。全般的に大きな音は苦手です。人間も突然大きな音がすると驚きますが、猫の場合は驚くだけではなく身の危険を感じることになるので、しばらく固まってしまったり、しっぽが太くなったり、瞳孔が開く事もありますね。臆病な子は、1週間位隠れて出てこなくなってしまう事もあるそうです。生活していると何かを落とすなどしてうっかり大きな音を出してしまう事もありますが、なるべく愛猫の為に、注意したいところです。また、シューとかシーなどという音(エアダスターや人が静かにという意味で言う「しー」など)はヘビなどの天敵が出す音と結びついているので猫が嫌がる、とも言われています。
猫は低くて大きな音が嫌いなら、高くて小さな音だったら良いの?と思いますが、必ずしもそうとは言えないようです。猫は高い声を好みやすい、と書きましたが、猫は人間が聞こえる以上の高い音である超音波を聞くことができます。猫の獲物になることが多かったネズミなどの小動物が超音波でコミュニケーションをとるので、猫はそのような高い音を聞き取ることが出来ると考えられています。とてもよく聞こえてしまうので、高い音を嫌がることが多いようです。
ネズミが出す程度の小さくて高い音なら良いのでしょうが、人間社会が出す高い音はきっと猫にとっては大き過ぎるのでしょう。また、モーターが回る音や紙を破る音などは人間にも聞こえている音ですが、そのような音には人間には聞こえないけれども猫には聞こえるさらに高い周波数の音も含まれている可能性があります。さらに、電子機器や様々な機械などは人間には聞こえなくても高い周波数の音を出していて、猫が嫌がっている可能性もあるかもしれません。
高い音で起きる高齢猫の発作
高齢猫が高音を聞くことで起こす発作がある、という研究結果があります。キーボードを叩く音・舌打ち・カギや小銭などをジャラジャラ鳴らす・アルミホイルや紙、ビニール袋をぐしゃぐしゃにする時の音、金属のスプーンで餌のお皿をたたく、などの音がきっかけになるようです。どれも日常的にある音ですが、そのような音に反応して起こす発作があることが分かってきました。
この研究は、インターネットを通じて音に反応して発作を起こしていると考えられる症例を集めてイギリスがで行われた研究で、発作は10歳〜19歳の猫に見られ、発作の始まる年齢は平均15歳だったそうです。猫種では、どんな猫種でも起こる可能性がある中バーマンで特に多くみられたそうです。シニア猫になると身体の老化から、様々な病気にかかりやすくなりますので、注意が必要ですね。上記に記載したような音を出して、愛猫にストレスを感じさせないようにしましょう。
猫が嫌いな音を利用した「しつけ」
猫のしつけには、飼い主がやっているとバレないように大きな音を出す「天罰方式」が良い、と言われています。猫がして欲しくない行動をしたときにわざと大きな音をだし、「これをすると嫌な事が起こる」と覚えて貰うのです。その点、拍手は直ぐ、手軽に出来ますので重宝します。愛猫を直接叱るのではなく、すかさず「パンッ」と大きな拍手をして、迎え撃ってやりましょう!!(笑)飼い主が行っている事が猫にバレると、信頼関係にヒビが入ることがありますので、くれぐれもバレないように気をつけてくださいね。また、音の種類と音量の加減にも注意が必要です。猫が好ましい行動をしている時にはほめてげる、おやつをあげるなどする「陽性強化法」もぜひ取り入れて下さい。
まとめ
いかがでしたでしょうか?愛猫を驚かさない為に、明日からくしゃみをするのは止めよう!と思った方もいるかもしれません。ですがそれは難しいでしょうから、くしゃみの時は厚手のタオルで口を抑えるなどして、なるべく大きな音をださないようにしましょう。我が家でも子供が急に大きな声をだしたり、お鍋を落とすなどして驚かせてしまう事があります。反省しきりですが、「何事!?」とばかりにビックリして目がまん丸になり、たぬき尻尾になっている姿がちょっと可愛い♡と思ってしまうダメ飼い主なのでした。
<参考記事>
紹介されている「高齢猫で音に反応して起こる発作」についての研究は、こちらの論文になります。
Lowrie, M., Bessant, C., Harvey, R. J., Sparkes, A., & Garosi, L. (2016). Audiogenic reflex seizures in cats. Journal of Feline Medicine and Surgery, 18(4), 328–336.
https://doi.org/10.1177/1098612X15582080
診断方法や症例の数が少ないことなど、いくつか結果の解釈には注意が必要な論文ではありますが、今まで原因不明と言われていたあるタイプの発作を「猫聴覚原性反射発作(FARS: feline audiogenic reflex seizures)」と新しく分類・命名した研究になります。人でも聴原性てんかんや光過敏性てんかんなど、何かの刺激がきっかけになって起こるてんかん発作があります。 この研究結果からのFARSの概要は、
①強直間代発作とミオクロニー発作、欠神発作を特徴とします。今回の研究対象となった96匹のうち、全ての猫で強直間代発作が見られ、さらに94%ではミオクロニー発作も、6%では欠神発作も見られています。 (強直間代発作=突然意識を失って全身に力が入って震える発作 ミオクロニー発作=意識は失わず体の一部がピクッとする発作。FARSの猫では顔や肩で多く起きます。 欠神発作=筋肉の痙攣はなく、動きが止まるタイプの発作。ぼーっとしている様に見える発作。)
② 今回の研究対象となった猫では、雌雄差は見られませんでした。
③ 高齢で発症しています(10歳以上、平均発症年齢は約15歳)
④ 必ず高い音がきっかけで発症しています。音量は小さいことが多かったそうです。
⑤ 強直間代発作の前にミオクロニー発作が見られることがほとんどでした。
⑥ 約半数の猫で耳が聞こえない(最低でも片耳の聴力がない)ことが分かりましたが、そのこととFARSの発症との関係は不明です。
⑦ フェノバルビタールかレベチラセタムで治療した猫の治療効果を調べた結果、レベチラセタムの方がFARSの治療に向いている可能性があることが分かりました。
⑧ 今回の研究対象となった96匹のうち純血種としてはバーマンが圧倒的に多く(30匹/96匹)、FARSの発症には遺伝的要素が関わっていることが強く疑われます。また、この研究が発表された時点では、FARSを発症したバーマンは全てシールポイントかブルーポイントだったそうです。
最後に、この研究でFARS発症のきっかけとなった音を列記しておきます。高齢の猫ちゃんで、時々体がぴくっとするけれど何だろう?と思っていた方、何かあてはまるものがあるかもしれません。