兄弟猫でも父親が違うこともある
猫は違う父親の子猫を1度に妊娠することができるのをご存じですか?人間の場合、一人の男性と一人の女性の間で子供をつくることが多いですが、猫の場合はそうとは限りません。同じ母猫から生まれた子猫同士でも、父親が違うということはよくある話なのです。一体なぜ猫の世界では、父親の異なる兄弟猫がよく生まれるのか。その理由について解説していきます。
メス猫が父親が違う子猫を妊娠できる理由
人間の場合、ひとつの受精卵が着床した時点で、妊娠期間に入ります。人間の女性は妊娠期間に入ると、さらに別の精子を受精することはできなくなるため、父親の違う子供を一度に妊娠するというのは不可能です。
しかし、猫の場合はそうではありません。複数のオス猫の精子が、同時に着床することもあり、そうなった場合、同じ子宮の中で父親の違う子猫を、同時に妊娠できるのです。そのため、「一緒に生まれてきた子猫ではあるけど、父親は子猫によってバラバラ」ということも起こります。
さらに「重複妊娠」といって、妊娠中にさらに交尾をすることによって、別の父親の子猫を新しく追加で妊娠するといった性質も持っているのです。ただし、重複妊娠をした場合、先に妊娠した子猫を出産する際に、後から妊娠した子猫まで一緒に出産してしまう危険性があります。後から妊娠した子猫は、早すぎる出産を迎えることになるため、せっかく生まれてきたのにすぐ亡くなってしまうこともあるのです。
メス猫が複数の父親を持つ理由
メス猫は発情期が始まると、地面にゴロンゴロンと転がり、からだを地面にこすりつけるような動作をします。また、お尻を高く持ち上げるような動き(通称ロードシス)を見せるようになるのです。これは「交尾できるよ」というメス猫からのサインであり、子猫の父親になるオス猫を受け入れようとします。
子孫をより多く残すため
父親となるオス猫を妊娠中に受け入れるのは、メス猫としては「確実に妊娠をしたい」という気持ちがあるので、父親となるのは一匹のオス猫だけではなく複数のオス猫と交尾をして、妊娠の可能性を高めるのです。本能的に「子供をたくさん残そう」という使命をメス猫は持っているため、父親となる複数のオス猫と交尾をするのだといわれています。
雄猫に子猫が殺されるのを防ぐため
また、オス猫は父親であっても子猫を殺してしまうことがあります。このような父親による「子殺し」をできるだけなくすために、メス猫は複数のオス猫と交尾をしているという意見も出ているのです。
短期間に複数のオス猫と交尾をすることによって、生まれてきた子猫の父親は誰なのか分からなくなります。そのため「あなたの子供かもしれないから殺さないで」という抑止力を、父親かもしれないオス猫にかけることができるのです。
年に2回ある猫の発情期
さらに、野良猫のメス猫は一年の中で2回発情期が訪れます。春先と夏頃に発情するメス猫が多く、そのたびに様々なオス猫と交尾をするため、父親の違う兄弟猫が生まれやすいのです。
ちなみに、メス猫を飼っている場合、飼い猫から生まれてきた子猫を育てる予定がないのであれば、避妊手術を行うことをおすすめします。そうすることによって、望まない妊娠をすることもなくなりますし、発情期特有のストレスを解消してあげることもできます。
猫に父親は必要ない
子猫が生まれてきたら、子育てを担当するのは基本的に母猫のみです。父親にあたる猫は子育てには関わらないというのが、猫の世界では一般的になっています。
子猫を育てる際に必要なお世話は、以下の通りです。
- 母乳や食事を与えてあげる
- 外敵から子猫を守る
- 排泄を促す
- 毛づくろいをしてあげる
- 子猫に構ってあげる
これらのお世話全てを母猫が行っており、父親猫は知らんぷりということが多いです。そのため、基本的に父親なしで子猫たちは成長することができます。
それでは母猫が子育てをしている間、父親猫はどのような行動をしているのでしょうか。結論からいうと、父親猫は基本的にいつもと特に変わらない行動をとっています。自分の縄張りを守ったり、他の発情期のメス猫と交尾をしたりすることが多いです。人間の父親がこのように好き勝手な行動をとっていたら、奥さんから文句を言われるところですが、猫の世界の父親はそれが普通なのです。
父親猫は自分の子供のことを認識できるの?
父親猫は、自分の子供を認識できるのかどうかについてですが、恐らく明確には認識できていないのではないかと思われます。それどころか、子育て期間中のせいで発情していないメス猫をその気にさせるために、父親は自分の子供かもしれない子猫を殺してしまうこともあるのです。「あなたの子供かもしれないから殺さないで」という抑止力が父親猫に効かないこともあるということですね。
また、母猫のにおいがついている子猫をメス猫だと勘違いし、興奮した状態でオス猫が子猫に迫った結果、まだからだの弱い子猫が死んでしまったというケースもあります。そのような出来事が猫の世界で頻発していることを考えると、オス猫にはたとえ父親であっても、自分の子供を見分けることができない可能性もあり、父親としての自覚が芽生えることはレアなのではないかと考えられます。
まとめ
メス猫のからだはとても神秘的で、人間ではありえないような妊娠をすることもあります。また、生まれてきた子猫に対して一生懸命子育てをする母猫とは違い、父親に該当するオス猫は一切子育てをしないというのも、人間からしてみたら面白い光景ですね。
野良猫の世界では、様々なオス猫とメス猫が交尾を繰り返すのが一般的ですが、飼い猫が妊娠した場合は、子猫の面倒を飼い主さんも一緒に見ないといけません。そのため、そのような責任を負えないのであれば、発情期が始まる前に避妊手術を受けさせることをおすすめします。