愛猫ハルとの出会い
子猫ではなく成猫を探した理由
猫を飼いたいと思っていましたが、子猫から育てるつもりはありませんでした。猫を育てたことが一度もなかった私たち家族。お迎えする前にいろいろと猫について調べると、子猫は社会性を身に着けるために多頭飼いが推奨されていることを知りました。
すでに我が家には愛犬がいたため、子猫を迎えることで環境が大きく変化しストレスを感じてしまうのが心配だったこと、猫と暮らした経験のない私たちにいきなり猫の多頭飼いは難しいと思ったことから、子猫ではなく成猫を迎えようと話し合いました。
保護施設ですり寄って来た猫
ある日、猫の保護活動をしている息子の幼稚園の先生にお会いしました。そこで、猫を飼いたいこと、成猫を迎えたいこと、先住犬との相性をみるためトライアルが可能であることについて相談したところ、保護施設には成猫もいることがわかり、早速、訪問することに。
施設に行くと、保護猫ちゃんたちは目が合うなり威嚇。とても警戒している様子で、お迎えするのは難しいのではと感じていたところ、すりすりと近寄ってくる猫が。それが、ハルでした。
ハルは、当時、推定2歳の男の子と言われました。野良猫の集まるコミュニティにご飯を求めてやってきていたというハルは、その社交性の高さから、ボランティアの方に保護されて施設へやって来たと聞きました。施設にいる他の猫達とも、積極的に関わりながら過ごす姿から、年齢のわりに成熟しているように見えたハル。
私たちに好意を示してくれたハルのトライアルを申し込み、1か月間、一緒に過ごしてみることになりました。
先住犬と対面!緊張するハルの家猫修行の行方は?
ハルを連れ帰って一番大変だったことは2つ。先住犬と同じ部屋で過ごすことに慣れさせること、夜通し続く夜鳴きでした。ハルに限らず、先住犬も自分のテリトリーに突然現れたハルに大興奮!
今思えば少々荒療治でしたが、2匹とも同じ部屋にケージを用意して、それぞれの安息の場所を確保。そのまま同室にいることに慣れて行って欲しい。互いに関心を持って欲しい。そう願い、双方に危険がないようにだけ注意して見守りました。
うちの先住犬は、パピーの頃ペットショップから来たのですが、夜通し鳴くことはなく、よく食べて、よく寝る子でした。そのため、夜通し鳴き叫ぶハルに、戸惑いは隠せません。
何度も施設長さんとメールにて、ハルと先住犬との様子を相談しました。ハルがずっとゲージにこもっていたため、環境の変化が大きなストレスになっているのではと心配する日々。食事も満足に摂らないハルを見守るしかできない状況が続きました。
ハルの夜鳴きで、家族の睡眠不足も日に日に深刻化……。社交性があって人慣れしているように見えたハルでも、おうちに慣れてもらうのはこれほど大変なことなんだなと痛感したのもこの頃です。
ハルの様子に変化が。光が見えだして安堵
転機はハルがうちに来て1週間を過ぎた頃でした。自らケージを出てきたかと思うと、先住犬にすり寄り、ぺろりとその顔を舐めたのです。先住犬は家族にすら、自分から舐めたりしない子なので、驚きのあまり逃げ隠れては唸ってましたが、ハルはまったく動じませんでした。
ハルは、その後、私の方にやってきて、足に尻尾をからめ、「にゃあ」とひと鳴きして部屋を周回し始めました。その都度振り返り、私が後ろについてくるのを確認しながら、リビングから始まり、一部屋ずつ念入りにパトロール。
その姿の愛嬌と言ったらなんと愛らしいことか!こちらはもうハルに応えるようくっついていきました。
「僕のうしろ、ついてきてる?こっちだよ」
そう言うように何度も振り向き、甘えた声で鳴くハル。浴室にまで堂々と進み、浴槽の底にたまる水滴を舐めるしぐさを見た時、ハルは大物だと思いました。と同時に、ハルと暮らしていけそう!ハルをうちの家族として幸せにしたいという気持ちが湧き上がりました。
先住犬との暮らしぶりを見て、正式に譲渡契約をする決心がつきました。
家族以外の人の膝に乗り甘えることも
正式にうちの子となったハルの変化は著しいものでした。お客様がいらっしゃると自らその膝の上に飛び乗り、くつろぎ、毛繕いを始めます。
「本当に保護猫⁉」
そう何度、うちを訪れたお客様に言われたかわかりません。けれどハルは、家族はもちろん、いらっしゃるお客様にも分け隔てなく挨拶をするのです。うちで誰よりも社交性の高いハル。
正直、過酷な環境にいたからこそ身に着けたものだと思うと、私達家族は皆、ハルは苦労人(苦労猫?)なのだと、守りたい気持ちにさせられるのです。
そんなことも露知らず、ハルは今日も気持ちよさそうにリビングで寝ています。大好きな先住犬のお姉ちゃんとともに。
まとめ
思えば、ハルは保護猫としても猫としても、本当に珍しい性格の子だと思います。迷う素振りなく実行し、たとえ拒絶されても、根気強く自分から向かっていくのです。自分の身を自分で守って生きていくために、ハルが必要としたスキルなのかも知れません。
保護猫は、置かれた環境下で生き延びるために、1日1日を生きてきた過去を背負っています。その過去をまるごと引き受ける覚悟。それ以上の愛情で迎えてあげて欲しいと思います。
私が保護猫のハルを迎え入れた動機はあまりにも不純だったかもしれませんが、今では先住犬とともに愛情を注ぎ、大切に育て暮らしています。
どんな始まりでも、その猫がその猫らしく暮らせる家族と巡り合い、幸せになれますように心から願っています。ハルと私たち家族の出会いのエピソードが、保護猫と暮らすことを検討しているどなたかの後押しになれたらいいなと思います。