「転嫁性攻撃行動」とは?
実は猫も八つ当たりをすることがあります。これは「転嫁性攻撃行動」「転嫁行動」などと呼ばれています。「転嫁」とは罪や責任などを他人になすりつけるという意味です。
猫も八つ当たり
私たち人間の場合、イライラしてしまった時にドアを強く閉めたり、物を投げたくなってしまう衝動に駆られることがありますよね。イライラの原因になった対象ではなく、何ら関係のないドアや物に怒りをぶつけてしまうのが「八つ当たり」の行動です。
自分の気持ちを整えようとする行動
動物行動学の用語に「自己指向性転位行動」というものがあります。「転位行動」と呼ばれたりもしています。これは「攻撃しようか、逃げようか」など思考の葛藤があった場合に、攻撃でも逃げるでもない第三の行動を取って気持ちの高ぶりを紛らわそうとする行動です。
猫の場合、何かに失敗した時などにも見られることもあります。人間が恥ずかしかった時に頭をポリポリかくのと似たような行動です。
突然の毛づくろいや爪研ぎ
猫の場合、思考の葛藤があったときに毛づくろいをしたり、爪研ぎをしたりといった転位行動が見られます。着地を失敗した時や転んだ時などにも見られます。
全然関係のない行動を突然し始めるので、一見すると意味不明な行動に見えるかもしれませんが、第三の行動をすることで高ぶった心を落ち着かせようとするのです。平常心を保っていた方が正確な判断がしやすいという野生の本能とも言えますね。
意味不明な行動にも理由がある
猫の八つ当たりである「転嫁性攻撃行動」も同じく、全然関係のない第三の相手に攻撃をすることで高ぶった気持ちを発散させようとします。
その対象に攻撃できるならまだしも、直接攻撃できなかったり葛藤があったりした場合は猫ちゃんの心はモヤモヤしてしまいます。そのモヤモヤを怒りやストレスの対象ではない、飼い主や同居猫などにぶつけてしまうのです。
触ったわけでもないのに、突然噛まれたりパンチされたりするので、とてもビックリしますし意味不明な行動に見えますが、転嫁性攻撃行動にもこのようないきさつがあるのです。
深いケガを負う恐れも
人間の場合は、八つ当たりをしたとしてもある程度の力加減をすることができます。しかし猫の場合は本気の力で攻撃してくるので、飼い主さんや同居猫たちが深いケガを負ってしまう心配があります。
中には興奮状態が冷めきらず、長期間にわたって攻撃的になってしまうこともあります。多くはありませんが、転嫁性攻撃行動が深刻化して飼育が困難になってしまうケースもあります。
原因を把握しよう
原因に接触しないようにする
転嫁性攻撃行動を改善していくためには、何がきっかけとなっているかを突き止めることが重要です。原因を突き止めて、猫ちゃんがその対象に接触しないように生活していく必要があります。原因は1つだけとは限りませんので、どんなシチュエーションで興奮してしまったかをチェックしましょう。
どんなものが原因となるのか
猫の転嫁性攻撃行動の原因となりやすい対象は
- 同居猫とのトラブル
- 家の外を歩く野良猫
- スマホの災害アラーム
- 知らない犬や猫のにおい
などです。このほか、その猫ちゃんが不快に思うものが対象になり得ます。
猫の八つ当たりの対処法
興奮が治まるまで近付かない
猫が興奮で我を忘れている時は大変危険です。猫が本気で噛むと本当に痛いですし、身体能力が高いので飼い主さんの身体をのぼって引っかいてくることも。ケガを負わないように、まずは猫の興奮が冷めるまで近付かずに様子を見ましょう。
大きいタオル等でくるむ
猫同士で取っ組み合いになってしまった場合は、大きなタオルや毛布等で猫をくるんで引き離すのも対処法の1つです。直接手を出すと飼い主さんもケガをする恐れがあるため、タオル等で興奮中の猫ちゃんを包んで捕獲しましょう。
長期間続く場合はケージで隔離
猫の八つ当たりは一時的なものだけでなく、30分~1時間興奮しやすい状態が続くこともあれば、数日間続いてしまうという子もいます。様子を見て攻撃的な状態が治まらない場合は、少しの間ケージの中で隔離するのも1つの方法です。
ケージは猫用の上下運動ができるタイプを用意し、トイレやお水も中に用意してあげましょう。
深刻な場合は薬物療法も
様子を見たり原因を遠ざけても改善しない場合は、一度獣医師に相談してみましょう。獣医師の診察と判断次第ですが、精神安定剤のような薬物で症状を緩和していく治療をすることもあります。飼い主さんお一人で悩まず、専門家と一緒に考えていきましょう。
まとめ
猫に攻撃的な行動が多くなると、飼い主さんや同居猫たちとの関係性が悪化してしまうのが心配です。八つ当たりをするということは、その猫ちゃん自身の心も穏やかではないということなので、心穏やかに暮らせるように何とかしてあげたいですよね。
猫ちゃんが攻撃的になったと感じたら、まずは原因は何なのか探ってみましょう。その原因を特定できた場合は、できる限りその猫ちゃんが接触しないように環境を整えていきましょう。行動が深刻な場合は飼い主さんお一人で悩まず、一度獣医師に相談してみてください。