将来が心配な甘やかし方
猫は人間の子どもとは異なります。たとえ成猫になっても、飼い主さんとの基本的な関係性は変わりません。愛情を持って接し、思う存分可愛がること自体は双方に信頼関係が生まれ、絆が深まります。
しかし、だからといって猫のわがままに振り回されてはいけません。子猫のうちから身につけておかなければならない大切なことがいくつかあります。
ここでは将来、暗雲が立ち込める可能性がある甘やかし方の例をご紹介いたします。
1. 食事の管理
子猫は生後8週頃になると離乳し、いよいよ固形の食事を食べ始めます。子猫に食べさせる食事も健康であれば「総合栄養食」が基本の食事です。子猫用のものを用意し、量はパッケージの裏面をみて月齢に応じた量を食べさせるようにしましょう。
ただし子猫の場合は個体差が激しく、中にはとても活発で基本的な量では十分に栄養が摂取できないこともあります。そのときは目安の量よりも、少し多めに食べさせても大丈夫です。生後4~5ヶ月頃までは、胃が発達途中であるために一度にたくさん食べることができません。よってこの月齢までは1日4~5回、生後6ヶ月ころから徐々に回数を減らしていきます。
そして、成猫である1歳頃には1日2回程度にしていくことが理想です。日常生活の中で様々なことを学んでいく子猫時代から、極端な暴食や人間の食べ物を食べることを身につけてしまうと、後々影響を及ぼします。鳴いて欲しがるからと、欲しいままに食べさせることは控えましょう。
2. 常にそばにいる
子猫は時間が許す限り、ずっと見ていたい・そばにいたいと感じるほど愛おしいものです。そして子猫も性格による差はありますが、母親のような存在である飼い主さんのそばにいることで、安心感を得られます。
でも、24時間片時も離れずに過ごすことは不可能ですよね。だから子猫には、ある程度ひとりで過ごせるようになってもらわなければなりません。幼いうちからひとりで過ごす時間をつくり、遠くから見守るようにしましょう。あまり要求に応えすぎてしまうと、「分離不安」の原因になってしまいます。
3. あまり運動をさせない
子猫は基本的には猫種に関係なく遊び好きです。しかし、中にはおっとりとしていてあまり活発に遊ばない猫もいます。それも個性だからと全く運動をさせないのはよくありません。身体能力を伸ばすこと、肥満の予防には運動は欠かせません。
興味を持って積極的に遊んでくれるおもちゃを探したり、好む遊び方を見つけてあげましょう。とても活発な猫ほどになる必要はありません。あくまでも適度な運動になれば良いのです。
4. 噛んでも叱らない
生後2~3ヶ月程度の子猫に噛まれてもそれほど痛くはありません。そして、子猫はよく甘噛みをします。これには主に以下のような理由があります。
- 歯がかゆい
- 遊びたい
- 甘えたい
- 不満を訴えている
- 構ってほしいなど
どれも子猫ならではの理由で、イメージしやすい理由だと思います。ここで噛まれた人間側が、それほど痛みを感じないからといって許してしまうと噛み癖がついてしまいます。そして成長した後も、噛むことがいけないこと・相手に痛い思いをさせていることという、基本的なことが理解できなくなってしまいます。
だから噛まれたときは「痛い」や「ダメ」など言葉を決めて叱るようにしましょう。ただし、叱るのは言葉によるものと、場合によっては軽く首の後ろをつまむ程度にしてください。大きな声で怒鳴ったり、叩くことは過剰なしつけです。
5. イタズラしても叱らない
猫は犬のようにしつけることは難しいことです。だからといって諦めないでください。やりたい放題にさせてしまい、イタズラをしても叱らずにいることは好ましくありません。飼い主さんにストレスがかかることもそうですが、場合によっては猫の命に関わることがあります。
先程の甘噛み同様、叱るときの言葉を決めて適切に叱りましょう。また、逆転の発想で思う存分遊んでも叱らずに済む、安全なおもちゃなどと差し替える形で代用することもひとつの手段です。
子猫と暮らす際に知っておきたいこと
子育てに後悔はつきものです。子猫と暮らすうえでも同様に、もっと早く知っておきたかったと思うことがきっとあるはずです。そこで、知っていると便利なことをいくつか紹介いたします。
食事において大切なことは「分量」
先の項目で、最終的には1日2回食が好ましいと述べました。もちろんこの方法で問題なく食事がとれる場合はそうしてください。でも中には、この方法が上手くいかないケースがあります。そのときは回数よりも「分量」が大切だと覚えておきましょう。1日あたりの食事量の範囲内であれば、必ずしも回数に固執する必要はありません。
「分離不安」に注意する
分離不安というと、人間の子どもをイメージするかと思います。実は猫においても分離不安は存在し、適切な対処が必要です。猫が分離不安になった場合、以下のような症状が出現します。
- 鳴き方の変化:犬の遠吠えのような鳴き方
- 興奮:絶えず落ち着きがなくなる
- 攻撃行動:唸る、噛み付く、引っ掻くなど
- 破壊行動:テーブルの上のものを落とす
- 身体症状:吐く、呼吸が荒い、震えるなど
これらの症状は、分離不安からくるものである可能性があります。心当たりがある場合は、対策が必要です。たとえば部屋を一旦出ては入るを繰り返し、必ず戻ってくると学習させます。こうして少しずつ慣らしてあげましょう。
何より分離不安にならないように、幼いうちからひとりで過ごす時間をつくり、遠くから見守るようににしましょう。
もしも改善が見られない場合、もしくは分離不安になる要素が見当たらない場合は病気の可能性を疑い、動物病院を受診しましょう。
1日のうちで必ず一緒に遊ぶ時間をつくる
猫は元々単独行動で暮らす動物です。クールで気分屋な猫は、犬ほど積極的な関わりは必要ないと思われがちです。しかし、これは分離不安の観点からみても誤解だといえるでしょう。1日の中で必ず積極的に関わる時間も、つくるようにしてください。ここでの関わりが、分離不安やイタズラの予防に役立ちます。
猫は口呼吸をしない
犬は口を開けて「ハァハァ」と呼吸します。これは、猫には通常見られない呼吸です。積極的な運動は大切なことです。でも、もしも運動後に犬のような呼吸を頻繁にするようであれば、迷わず病院に行きましょう。心肺機能に疾患がある可能性があります。
まとめ
何事もバランスが大切です。過剰な甘やかし行為が不適切なだけであって、子猫に対して積極的にコミュニケーションを取ること自体が、いけないことではありません。将来的なことを考えて、逆に過剰に厳しくしすぎてしまうのは危険です。
心身ともに発達途上の子猫にとってはストレスとなり、精神的なダメージを与えてしまいます。ストレスが原因で病気になり、万が一亡くなってしまっては本末転倒です。惜しみない愛で包みながらも、成長が促されるように猫らしさが活かせるような関わり方を心がけましょう。