絶滅の危機に瀕したスコティッシュヤマネコ
スコティッシュヤマネコはかつてイギリスに広く生息していましたが、19世紀半ば頃には人里離れたスコットランド高地にわずか数百匹のみとなっていました。
2019年の専門家グループの報告によると、スコットランドに野生で生息するスコティッシュヤマネコはほとんどいないとされています。
絶滅危惧動物の保護団体であるスコットランド王立動物学会は国内外のいくつかの保護団体と共同で、ハイランド野生公園を拠点としてスコティッシュヤマネコを繁殖させ、その後自然に放すためのプロジェクトを進めてきました。
ところが、新型コロナのパンデミックの影響で2020年には5カ月もの間主な収入源であるハイランド野生公園とエジンバラ動物園を閉鎖しなければならなくなり、同学会は経済的に大きな打撃を受け、保護プロジェクトの続行が困難となっていたのです。
こうした事情から、今年6月、スコットランド王立動物学会に対しスコットランド政府から40万ポンド(約6000万円)の資金援助が決定されました。
政府や多くの保護団体の支援を得てヤマネコ保護プロジェクトを続行
さらに、スコットランド王立動物学会は他の絶滅危惧種の保護活動を継続するため、スコットランド政府の動物園・水族館保護基金からも27万8000ポンド(約4300万円)の資金援助を受けました。
スコットランド王立動物学会の保護・科学プログラムのリーダーであるヘレン・セン博士は、「ハイランド野生公園やエジンバラ動物園に来園する度に絶滅に瀕した世界の動物が救われることになります」と、同公園および動物園への来園を呼び掛けています。
共同保護プロジェクト
ヤマネコ保護プロジェクトは、スコットランド王立動物学会の他にスコットランドの自然保護団体であるNatureScot、ケアンゴーム国立公園管理局、スコットランド林業・土地局。
加えてスウェーデンの絶滅危機動物保護団体であるNordens Arkや、スペインの野生動物保護団体であるJunta De Andalucíaといったヨーロッパの団体が共同で進めているプロジェクトです。
6年計画の同プロジェクトはEU基金からも320万ポンドの資金援助を受けており、さらにスコットランドの自然保護団体NatureScotをはじめとする提携団体からも共同出資を受けています。
ただし、セン博士によると、ハイランド野生公園内のヤマネコの繁殖施設の建設がパンデミックや冬季の厳しい気候の影響で遅れるなど、資金面以外でも様々な問題が生じているようです。
肉食獣を自然に放すのは非常に難しい作業ですが、2023年にはスコティッシュヤマネコを自然に返すことを予定しており、これをとても楽しみにしています、と博士は言います。
多くの困難を伴うプロジェクトですが、無事に計画が進み、いつかたくさんの野生のスコティッシュヤマネコを見られるようになるとよいですね。