猫は感謝を知らない恩知らず?
よく「犬は飼い主に恩返しをするけど、猫は恩知らずだ」ということばを耳にします。しかし、これは言いがかりのようなもの。犬が義理堅く見えるのは、犬が人間と同じように群れを作る生き物だからです。飼い主一家を群れだと思うからこそ忠誠を尽くし、時には群れを守って戦います。
一方、群れを作らない猫は、犬のように集団への帰属意識を持ちません。猫は1対1で関係を築く生き物なのです。しかし、だからこそ、猫は他の猫や人との関わりを大切にして生きています。
猫は意外と礼儀正しい
意外と気付いていない方も多いのですが、実は、猫は礼儀正しい生き物です。発情期に派手にケンカをしているので信じられないかもしれませんが、猫は自分の牙や爪が凶器であることをちゃんと知っています。なので、ケンカの前でさえ作法に合った挨拶をし、できるだけ争いが起きないように気をつけています。そして、嬉しいことがあった時にはそれを素直に表現します。
これは正しい言い方とは言えないのですが、あえて言うなら猫の脳は人間と比べると未発達です。どんなに嬉しくても、「嬉しい」という感情が、人間の考えるような「ありがとう」や「恩を感じる」に変化することはありません。猫の心の中には、ほのぼの小さな「嬉しい」から、超特大の「嬉しい」まで、あらゆるサイズの嬉しいがあるだけです。しかし、これは人間でも同じですよね。
心の奥では、人間と同じ「嬉しい」感情を抱く猫。では、具体的には、どんな時に「ありがとう」に近い「嬉しい」を感じてくれているのでしょう。猫たちに尋ねてみると、どうやら4つの「嬉しい」があるようです。
1.ごはんをくれてありがとう!
めったに食べられないご馳走をもらったり、あるいは来客に特別におやつをもらったりした時に、猫が口の周りを舐めながら目を細めたり、身体をすり寄せたりしてくることはありませんか?つい見過ごしてしまがちですが、それが猫にとっての「ごはんをくれてありがとう」です。
しかし、飼われている猫は、普段「ありがとう」とはあまり言いません。なぜなら、あなたと飼い猫の関係性は、母猫と子猫のそれと同じだからです。一生子猫気分の飼い猫にとって、食べさせてもらうのは当たり前の権利です。その上、猫の食後はけっこう忙しいのです。と言うのも、猫は食事をしたら、身繕いをして食事の痕跡を消さなければなりません。そもなくば、血のにおいで次の獲物や天敵に存在を気付かれてしまうからです。
もしあなたが本物の猫の母親なら、食後は急いで子猫の身体を舐めまわし、食べ物のにおいを消す必要があります。しかし、さすがに人間はそこまでできません。ですから、猫は自分で顔を洗わなくてはなりません。そしておそらくそのまま、ごはんが美味しかったことは忘れてしまうのでしょう。これはある意味仕方のないことかもしれません。そこは霊長類としての余裕を見せ、猫の食べっぷりから「ありがとう」の気持ちを汲み取るしかないかもしれませんね。
2.素敵なベッドをありがとう!
ごはんを食べたら、次はお昼寝です。本物の猫の親子なら、食後のにおい消しのグルーミングがマッサージ効果を生み、そのままお昼寝モードに突入です。子どもたちは母親にまつわりつき、柔らかい毛皮に包まれて眠りにつきます。もし、あなたの猫がご機嫌な顔をして眠っていたら、母猫に抱っこされて眠っていた子猫時代を思い出し、幸せな気分でいるに違いありません。
ぐっすり眠る猫の姿は、見ていて極上の幸せを感じるものです。と同時に「ここは安全で快適な場所なんだよ」と、寝ながらにして宣言しているのと同じです。中でも「へそ天」は、あなたに向けられた最高の信頼の証であると同時に、最上級の「嬉しい」表明であると言えるでしょう。
へそ天で眠る猫に「ありがとう」の気持ちがあるとは、到底信じられないかもしれませんね。しかし、猫は嬉しい気持ちを表すとともに、笑顔もプレゼントしてくれています。できればそのままの形で、猫の「感謝」を受け取ってはいただけないでしょうか。
3.遊んでくれてありがとう!
ごはんを食べて一眠りしたら、次はお遊びタイムです。子どものうちは独り遊びもよくしますが、やはりあなたに遊んでもらう楽しさは格別です。誰が見ても分かりやすい猫の「嬉しい」は、やはり遊んでいる時ではないでしょうか。
しかし、年を取るとともに賢くなるからか、おもちゃへの反応は薄くなります。もしかすると、加齢で身体がだるいのかもしれません。それでも、目の前に猫じゃらしがくれば目で追い、動きを楽しんでいるものです。あまりしつこく誘うと、「もういい?」と少しあきれた目で見られるかもしれませんが、そこはご愛敬。その証拠に、すぐに止めてしまうと「もう終わり?」という顔をされるはずです。
いつまでたっても猫は猫。あなたが遊んでくれたら、それが1番嬉しいのです。もしかすると、食事より嬉しいと思っているかもしれません。しかも、遊びに夢中になってくると、嬉しい気持ちすらどこかへすっ飛んでしまっている様子。しかし、これが極上の「嬉しい」であることに、異を唱える人はいないのではないでしょうか。
猫の「嬉しい」は「ありがとう」へと続く道です。とんでもない道草をしているようにも見えますが、無防備な姿は信頼の証。これも「ありがとう」の形の1つだと考えていいのかもしれませんね。
4.そばにいてくれてありがとう!
猫と暮らすということはつまるところ朝晩食事の用意をして、暑くないよう寒くないように室内をしつらえ、おもちゃを選んで一緒に遊ぶことです。当たり前のことですが、しかしその当たり前をそばで毎日繰り返してくれる存在がいることが、猫にとって何より嬉しいことなのではないでしょうか。
そう考えると、猫たちが毎日してくれている挨拶の数々を思い出しませんか?
身体をすりつけたり喉を鳴らしたり、あるいは目を細めたり手をのばしてきて触ったり...。朝起きてから夜眠るまで、猫たちは様々な方法で挨拶をしてくれています。その意味するところは、突き詰めれば「ご機嫌いかが?あなたといられて嬉しいよ」。言い換えれば「そばにいてくれてありがとう!」です。
私たちが気がついていようがいまいが、猫はお構いなしで挨拶を繰り出してきます。逆に私たちは、猫に対して、同じ熱意で「嬉しいよ」を表明できているでしょうか。忙しい人間は、挨拶をついなおざりにしてしまいがち。少し反省すべき点かもしれせんね。
まとめ
今日のねこちゃんより:ロシア / ♂ / ロシアンブルー / 1kg
もしかすると、「うちの猫は、いつも文句を言っているよ。感謝なんてとてもとても!」と言う方は多いかもしれませんね。我が家の猫も、ごはんだ、抱っこだ、お散歩だといつも何かを要求してきます。
その一方であきれるほど無防備な姿を見せ、気がつけば「嬉しいよ」を連発しています。猫は「感謝」の心は持ちませんが、嬉しいよを通じて感謝を伝える方法は知っています。あとはあなたがそれに気がつくだけではないでしょうか。