猫に必要なリンの摂取量、腎臓病との関係

猫に必要なリンの摂取量、腎臓病との関係

猫も人と同様に健康で過ごせるために5大栄養素を摂取する必要があり、その中でミネラル類のリンがあります。猫にとっても必要な栄養素であるリンですが摂取量に気をつけないと腎不全になるリスクが高くなることが分かっています。今回はまずリンがどのような栄養素でありどんな働きを持っているのか、またなぜリンが腎臓と関わっているのでしょうか。

SupervisorImage

記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫に必要な栄養素リンとは?

キャットフードを食べる猫

ミネラル成分の一つ

ミネラルは、炭水化物やタンパク質など5大栄養素に含まれており、人だけではなく猫が生きるために必要な成分です。

ミネラルは体の機能の調節する働きを持っており、必要とされているミネラルは16種類もあり、その中にリンが入っています。

リンはミネラル成分の中で、カルシウムの次に多い栄養素です。その約85%以上が骨や歯に存在しています。一般の猫用フードに入っている肉類や魚肉などにもリンがたくさん含まれています。

細胞の成分やエネルギー源の生成を手助けする

残りの約15%のリンの多くは細胞内にあり、遺伝情報が組み込まれている核酸や、細胞膜の組成成分にもリンが含まれています。

また、人や猫も含め健康で生きていくために必要なエネルギー源である、ATP(アデノシン3リン酸)にもリンが存在します。

猫に必要なリンの量

バランスのとれた天秤

リンは猫にとっても健康で生きるために必要な栄養素でもあるが、リンと同じミネラル成分でもあるカルシウムとの比率が非常に大事です。

リンとカルシウムは深い関係を持っており、カルシトニン(甲状腺ホルモン)とパラソルモン(副甲状腺ホルモン)が働いてバランスを保つように働いています。

しかしリンは肉類に多く含まれているため、過剰摂取しやすくカルシウムとのバランスが崩れやすくなります。リンの過剰摂取は腎臓に負担がかかってしまい、腎不全の原因に繋がります。

また、人間食にリンが多く入っているため危険です。一般的にリンとカルシウム摂取量の比率は、1:1が理想といわれています。

また、リンやマグネシウムなどのミネラル成分を多く摂取してしまうと、尿石症を発症するリスクが高まり、腎臓に障害をあたえてしまう恐れがあります。特に猫は体のつくりから、尿石症になりやすい動物でもあるのです。

総合栄養食と記載されているキャットフードには、リンやカルシウムの量やバランスのよい比率を調節してつくられているため、人間食をあたえず、キャットフードのみあたえることがよいでしょう。

リンの摂取を控えた方がいい猫

枕を使って布団で眠る老猫

高齢猫の場合は腎臓低下により腎不全になりやすい

高齢になると、猫は腎不全になりやすく15才以上で30%が慢性腎不全になっていると分かっています。リンの過剰摂取してしまうと、腎臓に負担がかかってしまい腎不全に発症してしまうことが分かっています。

特に猫は元々の体の構造上、腎臓に負担をかかりやすいため、特に高齢猫の場合はリンの摂取量に気をつけてなければいけません。

リンの摂取量が多いと腎不全を悪化させる要因になる

腎臓の働きが悪くなると、体内の老廃物がオシッコと一緒に排出されなくなりますが、リンも同様に排出されず、体内に蓄積されていきます。

リンが排出されずどんどん溜まってしまうと、腎不全を悪化させてしまいます。

腎不全になってしまい、腎臓の働きが悪くなってしまうと元に戻ることはできないため、できるだけ腎臓に負担をかけないように、フードに含まれているリンの含有量を減らす必要があります。

腎不全だけではなく尿石症になるリスクも高くなる

オシッコに結晶ができてしまい、それが集まってしまうと結石化する泌尿器系疾患であり、猫に発症しやすいです。発症してしまうと尿道に詰まってしまって、オシッコが出なくなり腎不全を併発したり、膀胱が傷ついて膀胱炎を引き起こしたりする恐れがあります。

原因は、フードに含まれているリンやマグネシウムなどのミネラル成分が過剰摂取することで、尿phがアルカリ性又は酸性に傾いてしまうことで、結晶(結石)ができてしまいます。

尿石症は猫の体質にも関わってきますが再発しやすいため、原因であるリンやマグネシウムなどのミネラル成分を調節されたフードを選ぶ必要があります。

猫の体内でのリンの働き

猫の鋭い牙アップ

骨や歯をつくる

リンの約85%は骨や歯に存在しており、カルシウムとともに骨や歯を形成・強化され、古くなった骨は部分的に破壊・吸収されて、常に骨や歯が健康に保つように働いています。

体を動かすエネルギー源になる

エネルギー源であるATP(アデノシン3リン酸)にリンが含まれています。ATPは身体の至るところにあり、食事から得た糖質や脂質などをエネルギーに変えるときに必要な物質です。このATPがあることで体を正常に動かすことができます。

猫が食べられるリンが含まれる食品

ゆで卵

ゆで卵

卵にはタンパク質が豊富に含まれており、ビタミンCと食物繊維以外の栄養素が入っているといわれています。特に黄卵にはビタミンBやビタミンAなど、数多くのビタミン類やカルシウムやリン、マグネシウムなどのミネラル成分を多く入っています。

しかし、白身にはアビシンという成分が入っており、猫の体内で必須ビタミンであるビオチンを破壊してしまいます。

ビオチンには被毛や皮膚を健康に維持する働きを持っているため、ビオチン欠乏症になると猫の皮膚がカサカサしたり脱毛などをおこしたりします。

アビシンは熱に弱いため、必ずしっかり加熱調理することが必要であるため、ゆで卵にすることをおすすめします。また、安全面を考えて白身を除いて黄身だけにすることもよいでしょう。

チーズ

チーズもタンパク質が多く含まれており、脂肪分も同等な割合で入っています。また、チーズにはカルシウムやリン、ナトリウム、鉄などのミネラル成分やビタミンC以外のビタミン類も含まれています。

栄養面でよいチーズですが、塩分や脂肪分が高いため過剰摂取してしまうとカロリーオーバーとなり肥満になってしまったり、塩分過多により腎臓に障害をあたえ腎不全を引き起こしてしまったりする恐れがあります。

そのため、スーパーに売っている人用のチーズではなく、猫用のチーズをあたえましょう。元々、猫は乳糖を分解する酵素が少ないため、牛乳を飲んでしまうと消化不良を起こして下痢してしまいます。

個体差が生じますが、同じ乳製品であるチーズも乳糖が入っていますので、下痢をおこす場合がありますので、あたえる際は少量ずつにして猫がお腹を壊していないか、様子みながら行いましょう。

猫にリンが不足するとどうなる?

病院で獣医師の診察を受ける猫

リンは骨や歯を形成・強化したり、エネルギー源でもあるため必要な成分ですが、リンの摂取を制限し過ぎてしまうとカルシウムがオシッコの中に排出させてしまいます。その結果、シュウ酸カルシウム結晶及び結石ができやすくなります。

その他にも、骨がもろくなり骨折しやすくなったり、体重減少、子猫の場合は発育不全になったりする恐れがあります。

しかし、一般のキャットフードや肉類などの多くの食品にリンが含まれているため、リン不足よりかは過剰摂取に気をつけなければいけません。

特に猫が腎不全になってしまうと、余分なリンが排出されず体内に残ってしまうため、腎機能が悪くなります。腎不全になると、血液検査上で腎機能であるBUNとCREAの他にリンの数値も高くなります。

そのため、腎不全及び腎機能の低下がみられた猫はリンの含有量を少なく、調節されたフードに切り換えます。

私がオススメするフードはロイヤルカナンの腎臓サポートセレクションです。

ロイヤルカナン 猫用 腎臓サポート セレクション
1,889円(税込)

商品情報
・リンの含有量を制限
・タンパク質や必須脂肪酸の含有量を調整

このフードは腎不全の猫に食べる目的で調節されたフードであり、腎臓の負担を軽減させるためにリンの含有量が低いです。

また、タンパク質の量が多いのも腎不全を悪化させる要因でもあるため、タンパク質も調節してつくられています。

腎臓サポートセレクションの特徴は、他の腎臓食と比べてカロリーが高いため、体重減少に配慮したり、食にあきやすい猫のためにフードの粒が2層構造なので食欲のムラを防いでくれたりします。

まとめ

飼い主からオヤツをもらう猫

猫にとってリンは必要な栄養素でもありますが、フードやオヤツにもリンが含まれているため通常に食事をあたえていれば、リンが不足することはまずありません。

逆に過剰摂取しやすく、腎臓に負担がかかるため腎不全になりやすい猫は特に注意が必要です。

また、リンはカルシウムと深い関係にあるので、猫にとってはリンとカルシウムの摂取バランスも非常に重要です。総合栄養食と記載されているフードは、リンやカルシウムの他の栄養素もバランスよく調節して作られていますが、オヤツ類はカロリーが高いだけではなく、塩分量も多いなど嗜好性を重視しているため、栄養バランスはよくありません。

そのため、多く与えすぎてしまうことで肥満になったり、リンを含めたミネラル成分も入っているので腎臓に負担がかかったり、尿phが傾いて尿石症になるリスクが高まります。

しかし猫が高齢になり、ご飯をほとんど食べていない場合は、必要カロリーだけではなくタンパク質やリンを含めたミネラル成分も足りてない場合がありますので、猫に食べてもよい食品をフードトッピングとして一緒にあたえる工夫も必要でしょう。

スポンサーリンク