猫の糖尿病の症状と原因から治療法まで

【獣医師監修】猫の糖尿病の症状と原因から治療法まで

猫でも糖尿病の症状は出るの?と思われがちですが、実際はここ最近猫の高齢化や肥満などにより糖尿病の発症が多く決して珍しい病気ではありません。猫の糖尿病は初期症状がなかなか気づきにくく、病状が進行してしまうと多く合併症を伴うなど猫の体に様々な症状が現れ、場合によっては命を落とす危険があります。今回は猫の糖尿病について症状や原因、治療法などをそれぞれ解説したいと思います。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

猫の糖尿病の症状と原因

山積みにされた角砂糖と糖尿病の文字

猫の糖尿病の症状

ソファーの背もたれでくつろぐ猫

猫の糖尿病の初期症状

  • 多飲多尿
  • オシッコの色が薄く、ニオイも弱くなった
  • 寝る時間が増えた
  • 食欲旺盛だが体重が減る

猫の糖尿病の初期症状としては水を多く飲み、たくさんオシッコを出す多飲多尿がみられます。

猫が糖尿病になると細胞が体を動かすエネルギー源である糖分(ブドウ糖)をうまく取り込むことができず血液中に多くなってしまい、オシッコとともにどんどん排出してしまうためオシッコの量が増え、その分水を多く飲むようになります。

猫のオシッコの量や回数がいつもより2倍以上に増えた場合はかなり注意が必要で、健康時の猫のオシッコは色が濃く強いニオイを放ちますが糖尿病の場合はオシッコの色が薄くなりニオイも弱くなります。

また血液中に糖分が多くなり、細胞に取り込めないためエネルギー不足となり飢餓状態となります。そのため猫は空腹感に常に陥ってしまうため異常な食欲が出てガツガツご飯を食べるようになりますが、体重が落ち痩せていきます。

猫の糖尿病が重症化した時の症状

  • 元気喪失
  • 食欲低下
  • 体重減少
  • 脱水
  • 嘔吐や下痢
  • 昏睡状態
  • 白内障や腎疾患、肝疾患などの合併症

猫の糖尿病が進行していくと脱水症状がかなり悪化し、更に体重がどんどん落ちていってしまいます。糖尿病の末期状態になると糖分をエネルギー源として使うことができず、補うために脂肪からエネルギーとして使うようになります。

その時脂肪はケトン体という有害物質に分解され、ケトン体が猫の血液中に増え過ぎてしまうと体に悪影響を及ぼし「糖尿病性ケトアシドーシス」という状態に陥ってしまいます。

この糖尿病性ケトアシドーシスの状態は非常に危険で嘔吐や下痢などの症状を起こしたり、体がフラついたり足をひきずる、かかとをつけて歩くなどの神経症状が見られるようになります。

ひどい場合だと7日以内に昏睡状態になる恐れがあり、死亡する可能性もあるため早急な治療が必要になります。また猫の糖尿病は合併症を併発しやすく白内障や腎臓病、脂肪肝など様々な合併症を引き起こすようになります。

猫の糖尿病の原因

仰向けで寝転ぶ肥満気味な猫
  • 遺伝
  • 肥満
  • 膵炎
  • 老化

通常は膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、血糖値を維持できるように調節してくれています。

しかし糖尿病はこのインスリンを充分に分泌することができず不足してしまったり、何らかの要因によってインスリン分泌作用を阻害されてしまう、もしくはインスリンは分泌されるけれどうまく働かないことで体を動かすエネルギーである糖分を細胞に取り込むことができず血糖値が異常に上がって高血糖となり、猫の体全体に様々な悪影響を及ぼします。

更に進行すると猫の体内にケトン体が蓄積し、体が酸性に傾くケトアシドーシスとなり神経症状や意識障害を起こし、命を落とす危険性がでてきます。

糖尿病にはインスリンの分泌が低下する「インスリン依存型糖尿病(1型糖尿病)」とインスリンに対する身体の反応が悪くなる「インスリン非依存型糖尿病(2型糖尿病)」の2種類があります。

猫の場合は人の2型糖尿病と似ており、インスリンが分泌されているが不足していたり、インスリンが分泌されているが猫の身体の反応が悪いことで引き起こされると考えられています。

犬よりも猫の方が糖尿病を発症しやすいともいわれています。猫が糖尿病を発症する原因はいくつか考えられますが、肥満が大きな原因の一つとしてあげられます。

インスリンを分泌しても体に溜まった余分な脂肪が邪魔をしてインスリンが効きにくくなってしまい、糖尿病を発症しやすくなります。

監修獣医師による補足

インスリンはインスリンを受け取るレセプターというものに結合することで働くことができます。結合できなければたくさんインスリンが分泌されていても働くことができません。肥満になると血糖値を下げる能力が低下するために、さらにたくさんのインスリンが分泌され血糖値を下げようとします。インスリンが一定量を超えると、結合するレセプターが足りなくなりさらに血糖の利用がしにくくなります。その結果血液中の血糖がさらに増えてしまいたくさんのインスリンを分泌してもレセプターが不足し血糖処理が追い付かなくなり糖尿病を発症してしまいます。肥満になると糖尿病になりやすくなる理由はこのような仕組みによります。

獣医師:平松育子

またもう1つの大きな原因としては膵炎によりインスリンが作ることができなくなったり、膵臓の炎症によりインスリンが効きにくくなってしまうことで糖尿病を発症します。

猫の場合も中高齢から糖尿病を発症しやすい傾向がありますが、中には比較的年齢が若い猫でも発症することがあります。

猫の糖尿病の治療方法

病院で注射を打たれている猫

軽度の糖尿病の場合

  • 食事療法
  • 血糖値を下げる薬の投与
  • 体重管理

猫の糖尿病のほとんどがインスリンに依存しない「インスリン非依存型糖尿病」であり、比較的糖尿病の症状が軽い場合は体重管理によるダイエットや食事療法によりコントロールすることができ回復する場合があります。

しかし、猫の糖尿病は完全に治る事はありませんので、その後も注意する必要があります。

特に肥満体型によりインスリンに対する身体の反応が悪くなり、効きにくくなって引き起こしている場合は体重を減量することでインスリン投与の必要がなくなることもあります。

一般的に糖尿病の食事療法は食後の急激な血糖値の上昇を抑えるように調節されています。食物繊維の量を増やして糖の吸収速度を緩やかにしたり、高タンパク質・低炭水化物により食後の血糖値の上昇を緩やかにするなどの工夫がされています。

重度の糖尿病の場合

基本的に猫の糖尿病の治療は血糖値をコントロールさせることですが、症状が進行しケトアシドーシス状態になっている場合は緊急入院・治療が必要となります。

通常は食後に上がった血糖値を戻すことが必要なため、血糖値をコントロールさせるためにインスリンを毎日注射します。

その際は毎日同じ時間に食事を与え、決まった時間にインスリンを打つことで猫の血糖値をコントロールさせていきます。

しかしインスリン投与の時に注意が必要なのが低血糖であり、これは糖尿病の逆の症状で血糖値が著しく低下して起こる病気です。低血糖症状は主にぐったりする、ふらつく、ケイレン、意識を失う、虚脱状態などの症状が現れます。

この低血糖は糖尿病による高血糖症状よりも命に関わり、最悪の場合は死亡する恐れがあるため注意が必要です。そのためインスリン投与量を間違えてしまったり、インスリンを打ち忘れたことによる自己判断が低血糖を招いてしまうため、必ず自分の判断でおこなわず病院に連絡して下さい。

猫の糖尿病の予防方法

メジャーを頭からかけて体重計にのる猫

太らせないように食事の管理をする

猫の糖尿病は元々の体質や遺伝などが関与しているといわれていますが太っている猫に発症しやすい傾向があります。そのため糖尿病予防として太らせないように猫の体重管理や食事管理をおこなうことも大切です。

特に去勢・避妊手術を受けた猫は性ホルモンの関係により代謝が落ち、食欲が増すため太りやすくなりますので食事量を調節し、体重を増やさないように気をつけましょう。

猫は肉食動物なので高タンパク質、低炭水化物が好ましいですが、そのバランスが崩れてしまうと糖尿病を引き起こしやすくなってしまうためフード選びにも配慮する必要があります。

一般的な猫の糖尿病に対する療法食は高タンパク質、低炭水化物をはじめ食後の血糖値の上昇を緩やかにするようにつくられていますので予防としてあたえてもいいでしょう。

定期的な健康診断

猫の糖尿病の初期症状は主に多飲多尿ですが、糖尿病と診断する際には採血をし血液中の血糖値やオシッコに含まれている尿糖を調べて精査します。

早い段階で治療をおこなえば重度の症状にならずにコントロールすることができ、一般的な猫の寿命を全うすることも可能です。そのためにも早く気づいてあげられるように定期的な検査を受けることをお勧めします。

飲水量やオシッコの回数を管理する

またお家でも猫の症状や異変に気づいてあげれるように飲水量やオシッコの回数を記録しましょう。飲水量に関しては先に計量カップで水を測ってから容器に入れることで、どれくらい飲んだのか知ることができます。

体重を定期的にはかる

その他にも糖尿病になると食事量が同じでも体重が徐々に落ちていくため、定期的に猫の体重をはかることで早い段階で気づくことができます。

まとめ

猫じゃらしで遊ぶ猫

猫は糖尿病にかからないイメージを持っている方が多いですが、実際は猫の入院治療の腎臓病、尿道閉塞の次に多い病気であり、決して珍しくはありません。

猫の糖尿病の初期症状は多飲多尿や体重が減少したなどなかなか気づきにくく、次第に進行すると糖尿病性ケトアシドーシスを起こす恐れがあり、最悪の場合は命を落とす危険がある恐ろしい病気でもあるのです。

元々の体質や遺伝などが関係しているといわれていますが糖尿病を発症しているほとんどの猫が太っている傾向にあります。

比較的糖尿病の症状が軽い場合は体重管理によるダイエットや食事療法で改善することもありますが、症状や状態によってはインスリン注射を毎日打つ必要があります。

血糖値をコントロールさせる目的で使用するインスリン投与量を間違えてしまったり、自己判断で勝手に投与してしまうと逆に低血糖症状を起こしてしまい大変危険です。

現段階で猫の糖尿病を完全に完治する治療法はないため、猫が糖尿病にかからないように体重管理に気をつけたり、バランスの良い食事をあたえることも大切です。

また日頃から飲水量やオシッコの回数、体重などを記録したり定期的に健康診断を受けましょう。