猫の尿毒症の症状
猫の尿毒症(にょうどくしょう)とは、何らかの原因で腎機能が低下することで、本来排泄されるはずの老廃物が血中に残存し、毒素が全身を巡り、異常をきたす状態のことを指します。この尿毒症は進行が早く、急激に体を蝕んでいきます。発症から絶命に至る時間も短いことから、早期発見、早期治療が要となります。猫の尿毒症・腎不全の症状は主に以下の9つです。
(尿毒症、腎不全の症状共に紹介しています)
猫の尿毒症の症状①水をよく飲み、頻尿になる
猫の尿毒症の兆候として、水をよく飲み頻尿になることが挙げられます。猫は本来、少量の水分で生きていける体質を持つため、水分摂取量はそう多くなく、濃縮された尿を排泄します。しかし、何らかの原因で腎臓の機能が低下すると、大量の水分が尿として排泄されてしまい、それを補おうと多飲になります。日頃から積極的に水分摂取をすること自体は、猫の健康のためにも良いことなのですが、尿の色が薄い、飲水、排泄の回数が急激に増えたという場合は注意しましょう。
猫の尿毒症の症状②食欲不振・体重減少
猫の尿毒症が進行していくと、食欲が減退し、体重の減少がみられます。水はたくさん飲むのにご飯を欲しがらない、おやつに興味を持たないなどの症状が現れます。健康な猫であっても食べムラの激しい猫や、夏場などに一時的に食欲不振に陥ることはありますが、体重減少には十分に注意しましょう。体の小さな猫にとっての1キロは、人間にとっての13キロ~15キロ程度に該当するともいわれます。猫の体重が1ヶ月で体重の5%以上減少している場合は、すぐに獣医師へ相談しましょう。
猫の尿毒症の症状③嘔吐
猫の尿毒症が進行すると、全身に毒素が巡ることで吐き気や嘔吐、下痢などの症状が現れることがあります。嘔吐が続くことで脱水症状を引き起こす可能性もありますので、十分に注意しましょう。
猫の尿毒症の症状④四肢のむくみ
猫の尿毒症が進行すると、四肢のむくみが現れることがあります。これも、毒素が全身を巡ることによって引き起こされる症状ですが、猫の場合、被毛に覆われているため気付きにくい症状でもあります。日頃からブラッシングなどを行う際に、全身を触り、ボディチェックを行っておくといち早く異変に気付くことができるかもしれません。体重を測ることも確認のためには大切です。食欲がないのに体重が増えている場合は要注意です。
猫の尿毒症の症状⑤元気消沈
猫の尿毒症で、遊びを嫌がる、動くのを嫌がる、ぐったりしているなどの症状がみられた場合、危険な状態である可能性が十分にあります。全身に巡った毒素が体を蝕み、不快感や痛みを感じるいる場合もあります。猫が動かない、元気がないという場合は早急に動物病院を受診しましょう。
猫の尿毒症の症状⑥貧血
猫の尿毒症が進行すると、貧血に陥ることがあります。猫が貧血になると、歯茎や肉球が白っぽい、または青みががっているなどの状態になります。日頃から、被毛のない歯茎や肉球などもチェックする習慣をつけておくといいですね。
猫の尿毒症の症状⑦尿が出ない
猫の腎不全の兆候に水をよく飲み頻尿になることがありますが、症状が進行していくにつれて尿の量が減る、または全く出なくなる場合があります。トイレへ行くのに尿が出ていない、苦しそうに排泄するなどの症状がみられた場合は早急に動物病院を受診しましょう。
猫の尿毒症の症状⑧体臭がキツくなる
猫の尿毒症が進行すると、排泄されなかったアンモニアが血液中を循環することによって、口臭がアンモニア臭になることがあります。末期になると、全身から鼻をつくような臭いがすることも。加齢と共に口臭が強くなることは少なくありませんが、口腔内のトラブルによってアンモニア臭がすることはありませんので、注意しなければなりません。
猫の尿毒症の症状⑨痙攣発作
猫の尿毒症の末期症状として、痙攣発作や昏睡などの重篤な症状があります。尿毒症の末期で起こる痙攣は、じっと見なければ分からないものではなく「発作的な痙攣」であるとされており、意識障害を伴います。
猫が尿毒症による痙攣を起こした場合は、無理に抱き上げたり、声を掛けたりせずに、猫の周りの物を片付けて安全を確保し、そっと見守りましょう。大抵の場合、2分~3分で痙攣は止まりますので意識を確認して、獣医師に指示を仰ぎましょう。
猫の尿毒症の症状についてご紹介しました。痙攣や尿が出ないなどの尿毒症の症状が起こり、異変に気付いた時にはかなり状態が悪いということも少なくありません。上記のような症状がみられた場合、まず血液検査で尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cre)、総タンパク(TP)などを確認します。
特に重要視されるのが、尿素窒素(BUN)とクレアチニン(Cre)で、これらは血液中の毒素や老廃物を表します。尿毒症が重度の場合、測定機器の上限数値を超えて測定不可になるような場合もあるようです。猫の様子に異変を感じてから、もう少し様子を見ようと判断したものの、翌日、翌々日に急激に症状が悪化してしまったという場合も多いようです。猫の尿毒症は一刻を争う病気です。少しでも異変を感じた場合は、早急に動物病院を受診するよう心がけましょう。
※ ①②⑤⑥のような症状は腎不全の初期段階に起こりやすい症状で、症状が進行するにつれ悪化する症状で、尿毒症を起こす前に起こりやすい症状です。尿毒症の症状は腎不全の末期に起こりやすい症状ですから、このような腎不全の初期症状があれば必ず動物病院を受診し確認してもらいましょう。
猫の尿毒症の原因
猫の尿毒症の原因についてご紹介します。
猫の尿毒症の原因①腎疾患
猫の尿毒症の原因として、一番に挙げられるのが腎不全です。腎不全などの腎疾患を患うことによって、腎臓の機能が低下し、末期症状として尿毒症を併発することが殆どとされています。そのため、腎不全を患っている猫の場合は、特に上記のような症状に注意しなければなりません。
猫の尿毒症の原因②心疾患
心臓などの循環器に異常がある場合、十分な血液が送られず、腎臓の働きが低下し、尿毒症を引き起こすことがあります。結果的に腎機能の低下によって尿毒症が引き起こされるのですが、特に心不全による血圧の低下が関係していることが多いようです。
猫の尿毒症の原因③排泄異常
尿路結石などで尿道に詰まりが生じ、排泄が正常に行われなくなると、急性腎不全を起こし排尿ができない時間が長くなれば尿毒症を引き起こします。2~3日排尿ができなかった場合、最悪の場合は亡くなることもあります。 猫は凝縮された濃度の高い尿を排泄する体質を持つため、下部尿路疾患を発症しやすいとされています。日頃から尿の量や質などをしっかりチェックしましょう。
猫の尿毒症の治療法
猫の尿毒症は、発症から急激に症状が悪化することが多く、非常に危険な病気です。しかし、早期発見、早期治療を行うことができれば危険な状態を逸することができる可能性もあります。猫の尿毒症の治療法は主に以下の3つです。
猫の尿毒症の治療法①対症療法
- 点滴や利尿剤の投与などの方法で尿と共に毒素を体外に排泄
- 血液透析や腹膜透析などの透析療法
猫の尿毒症の治療法は、基本的に対症療法を中心に行われます。対症療法とは、今ある症状を緩和するために行われる治療のことを言います。症状や原因となっている疾患などによって治療法は異なりますが、主に点滴や利尿剤、輸血などの方法で尿と共に毒素を体外に排泄することが優先されます。また、猫が尿毒症を発症した場合、入院を要することが殆どであり、症状が重篤な場合は、血液を浄化するために血液透析や腹膜透析などの透析療法が用いられることもあります。
猫の尿毒症の治療法②基礎疾患の治療
腎疾患、心疾患、下部尿路疾患など、尿毒症の原因となっている基礎疾患がある場合は、それらの治療が優先して行われます。腎疾患の場合は対症療法が基本になりますが、下部尿路疾患が原因となっている場合は、結石の除去などが行われます。
猫の尿毒症の治療法③投薬治療
嘔吐の症状がない場合は、腸内の窒素化合物を除去する活性炭製剤が投薬されることもあります。猫の腎不全薬の1種である吸着炭製剤とは、腸内で尿毒素などの老廃物を吸収し、便と共に体外へ排泄する薬剤です。コバルジン(動物用医薬品)、ネフガード(サプリメント)などが有名です。
猫が尿毒症を発症した場合の治療費については、治療内容によって大きく異なります。動物病院によって金額も異なるため一概には言えませんが、検査費用、点滴、入院費用などを含めて40,000円~80,000円程度であることが多いようです。
猫の尿毒症の予防法
猫の尿毒症の予防法は、残念ながらありません。どれだけ健康管理に気を配っていても、猫本来の体質によって腎疾患や下部尿路結石を発症してしまう可能性はあります。私達飼い主にできることは、愛猫の異変にいち早く気付き、早期発見早期治療を行うことです。愛猫の些細な異変に気付いたとしても、つい「もう少し様子を見てから受診しよう」と考えてしまうこともあるかもしれませんが、尿毒症のように一刻を争う病気があるということを常に忘れてはいけません。
どんなに些細な異変であってもすぐに受診できる、相談できるかかりつけ医を見つけておくことも大切です。また、日頃から良質な食事や水分補給、適度な運動、定期的な健康診断を心がけましょう。
まとめ
猫の尿毒症について原因と症状、治療法についてご紹介しました。猫の尿毒症は、腎不全が進行した結果起こる病気で腎疾患や下部尿路疾患を患う可能性が高い猫にとって、とても身近で危険な病気です。日頃からオシッコの量や質、飲水量の変化などをしっかりとチェックする習慣をつけ、些細な異変にもいち早く気付けるよう心がけたいですね。また、治療費についても、決して少なくない金額が必要になることもあります。そんな時、必要な治療をしっかりと行えるよう、ペット保険の加入や愛猫のための貯金をしておくことも大切です。
40代 女性 ゆきなちゃん
たくさんいる猫ちゃんのうちの一匹が尿毒症で苦しんでいました。毎日吐いていたので、弱っていきましたが点滴のお陰で少しですが食べられるようになり元気を取り戻しました。
その間には、点滴をずっとして血液検査をしたり、大変でした。よく頑張っていました。生きたいと言う気持ちが強かったのでしょうね。
なかなかでなかったおしっこもだんだん出るようになり、最終的には綺麗な色のおしっこが出ました。スタッフみんなでとても喜びました!
その猫ちゃんは9歳まで生きてくれました。闘病しながらでしたが、とてもよく頑張り生き抜いてくれました。その姿に感動したのを今でも思い出します。