1.心臓の病気

猫の突然死の裏には、心臓の病気や合併症が隠れている可能性があります。
肥大型心筋症(HCM)
猫の突然死の原因として多いのが「肥大型心筋症(HCM)」です。特にメインクーンやノルウェージャンフォレストキャット、スコティッシュフォールドなどの大型・純血種に多く見られます。
何らかの要因で心筋が異常に厚くなり、血液をうまく全身に送れなくなってしまう病気です。血の流れが滞ることで血管の中に血栓ができてしまい、突然の心停止を引き起こす場合があります。
肥大型心筋症は、初期に症状が現れにくいのが特徴のひとつです。元気に見える猫でも、心音に雑音がある、急に息が荒くなる、後ろ足を引きずるなどの兆候が出た時にはすでに進行している可能性があります。
血栓塞栓症
肥大型心筋症などの心臓疾患に続く形で起こりやすいのが「血栓塞栓症(けっせんそくせんしょう)」です。心臓内でできた血の塊(血栓)が血管を塞ぐことで、後肢の麻痺や呼吸困難、そして急死につながることがあります。
特に危険度が高いのが「大動脈血栓塞栓症」で、発症から数分で苦しみながら倒れるケースが多く、緊急性も非常に高い病気です。
足先が冷たくなる、突然鳴き叫んで動けなくなるなどのサインを見逃さないことが重要です。
2.尿道閉塞

特にオス猫に多いのが「尿道閉塞(にょうどうへいそく)」による突然死です。膀胱から尿を体外に出す経路が詰まると、老廃物が体内に急激に蓄積して尿毒症を引き起こし、短時間で命に関わる状態になります。
このようなサインが見られたら、数時間以内に動物病院を受診した方がよい状態です。
- トイレに何度も行くのに出ていない
- 排尿時に苦しそうに鳴く
- お腹を触ると嫌がる
- 陰部をしきりに舐める
尿道が完全に詰まると、24時間以内に急性腎不全や心停止に至ることもあります。日頃から水分摂取を促し、トイレ回数や尿量の変化をチェックしておくことが予防につながります。
3.家庭内事故・中毒

猫の突然死の中には、思わぬ事故や中毒が原因となるケースもあります。
自宅の中にいても、
- 高い場所からの落下
- 電気コードに噛みついて感電
- 家庭内の中毒物(チョコレート、玉ねぎ、観葉植物、精油など)の摂取
といった引き金が潜んでいる場合があるのです。
特に殺虫剤、アロマや芳香剤などの化学物質による中毒は危険性が高く、気づかぬうちに猫の体内に入り、肝不全や呼吸停止を引き起こすことがあります。
異物誤飲や誤食を防ぐためには、猫の行動範囲や生活環境をきちんと整えましょう。
4.感染症

猫が「猫伝染性腹膜炎(FIP)」を発症すると、急激に進行して命を奪う危険があります。
FIPは、猫コロナウイルスが体内で突然変異を引き起こすことで発症する免疫異常性の病気で、突然体調を崩してしまったり病状が急激に悪化したりする場合がある危険な感染症です。
主に「ウェットタイプ」と「ドライタイプ」の2種類があり、ウェットは腹水や胸水が溜まって呼吸困難を起こし、ドライは発熱や神経症状が現れます。
どちらも体の中で激しい炎症を起こしている状態で、突然容態が急変して命を落とすことがあるのです。発症後は数日~数週間で亡くなるケースも見られます。
発症を完全に防ぐことは難しいものの、ストレスを減らし、ワクチンや定期健診で健康状態を管理していきましょう。
大切な愛猫を守るためにできる予防策

猫の突然死のリスクを少しでも下げるため、私たち飼い主が日常でできる予防策は以下があります。
- 年1~2回の健康診断を欠かさない
- 体重管理と食事の見直し
- トイレや呼吸行動の変化を観察する
- ストレスを減らす環境作り
- 万一に備えてかかりつけ医を持つ
定期健診の際、特に7歳以降の猫は血液検査や心臓のエコー検査もセットで行うと良いでしょう。愛猫の健康状態を把握しているかかりつけ医がいることは、緊急時に素早く対応ができるなど、いざという時の安心感につながります。
猫は体調不良を隠す動物で、元気そうに見えても体の中では病気が進行している可能性もあるかもしれません。飼い主の日常の観察と定期的な健康診断は、突然死の最大の予防策となるでしょう。
まとめ

猫の突然死は、飼い主にとって耐えがたい悲しみです。「もっとちゃんと見てあげていれば防げたかもしれない」と後悔しないために、日々の健康チェックや食事管理、定期健診の受診といった予防策を取っていくのが、愛猫の命を守ることにもつながります。
愛猫がいつも通りでいると安心だと思いがちですが、本当にいつも通りなのかをきちんと確認するのが大切です。目に入れても痛くない愛猫だからこそ、一日でも長く穏やかに暮らせるよう支えていきましょう。