実は多い!猫の膵炎ってどんな病気?

膵炎(すいえん)とは、「膵臓(すいぞう)」という消化酵素を作る臓器が炎症を起こす病気です。人では“激しい腹痛”で知られていますが、猫では痛みのサインが分かりにくく、見逃されやすいのが特徴です。
以前は「まれな病気」とされてきましたが、近年の研究では解剖された猫の66%以上が何らかの膵炎の兆候を持っていたという報告も。つまり、表に出ないだけで、多くの猫が膵炎と向き合っている可能性があるのです。
膵炎には「急性」と「慢性」があり、急性膵炎は突然症状が出て激しく悪化する一方、慢性膵炎はゆっくりと進行し、元気や食欲のムラといった曖昧な症状が続くのが特徴です。 どちらも猫にとっては命に関わることもある重大な病気です。
膵炎のサインは“なんとなく元気がない”から始まる

猫の膵炎はとにかく分かりにくい・気づきにくいのが最大の厄介ポイントです。
人間のように「お腹が痛い」と訴えてくれません。次のような症状が見られたら、注意が必要です。
主な症状
- 元気がない寝てばかりいる(51〜100%の猫に見られる)
- ごはんを食べない(62〜97%)
- 嘔吐(35〜52%)
- 体重減少(30〜47%)
- 下痢(11〜38%)
身体検査では、
- 脱水(37〜92%)
- 低体温(39〜68%)
- 黄疸(6〜37%)
なども見られます。
これらは膵炎特有の症状というより、他の病気と共通する曖昧なサインです。 そのため、「なんとなく変だな」と感じた時点で動物病院を受診することが大切です。
また、糖尿病・腸炎・胆のう炎など、ほかの病気と一緒に起こりやすいこともわかっています。
膵炎から猫を守るには?早期発見とやさしいケアがカギ

膵炎の原因は、多くが“はっきりとはわからない(=特発性)”とされていますが、次のようなリスク要因も報告されています。
- 膵臓への外傷(交通事故高い所からの落下など)
- 一部の薬剤(例:殺虫剤やてんかん治療薬など)
- 稀な感染症(トキソプラズマ、猫伝染性腹膜炎ウイルスなど)
とはいえ、飼い主ができる一番の対策は“早く気づく”ことです。
また、膵炎の治療では「対症療法(症状を和らげる)」が中心になります。
治療の基本
- 点滴で脱水と電解質異常を補正
- 吐き気止めや痛み止めの投与
- 食欲が出ない場合は食欲増進剤や流動食で栄養補給 (※肝リピドーシス予防のため、食事はなるべく早く再開)
場合によっては、鼻チューブや食道チューブによる栄養補給が必要になることもあります。 また、慢性膵炎では定期的なモニタリングや長期ケアが必要になるケースも。
飼い主としては、
- 猫の「日々の元気食欲排泄体重」を観察
- 体調にムラがあるときは早めに相談
- 定期健診や血液検査を活用する
こうした「見守り力」が、猫の命を守る最大の武器になります。
まとめ

猫の膵炎は決して珍しい病気ではなく、気づきにくい分だけ注意が必要です。早期発見とやさしいケアが、愛猫の元気を支えます。日々の“変化”に気づく目を大切にしましょう。