「SFTS」ってなに?猫や犬もかかる命にかかわるウイルス感染症

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、ウイルスを持ったマダニに咬まれることで感染する病気で、人や動物にも感染します。ウイルス名はSFTSウイルス(SFTSV)といい、現在は日本、中国、韓国などの一部地域で報告が増えている「新興感染症」です。
発症すると、発熱・下痢・嘔吐・血小板や白血球の減少などの症状が見られ、人の致死率は最大30%にもなる重い病気です。国内では、人が猫にかまれて感染し、死亡した例もありました。
2021年のViruses誌に掲載された研究では、長崎県内の動物病院で「SFTSが疑われた猫133匹」のうち、約3割(44匹)が陽性だったと報告されています。特に注意すべき点は、感染した猫の体液(唾液、涙、便など)にもウイルスが含まれていたこと。つまり、飼い主が“かまれる”だけでなく、“舐められる”“糞尿処理をする”際にも感染リスクがあるということです。
猫がかかったらどうなる?知っておきたい症状と致死率

猫におけるSFTSは、人よりも致死率が高く、約58%が命を落としたという研究報告があります。発症年齢の多くは若い猫(平均3.5歳)で、若いからといって安心できる病気ではないのが特徴です。
主な症状は以下の通りです。
- 高熱(発症初期)からの体温低下
- 元気消失、食欲不振
- 血小板白血球の著しい減少
- 嘔吐、下痢、出血傾向
- 臓器障害(肝臓腎臓)による異常値(ASTなど)
中には一見軽症に見える猫もいますが、ウイルス量が体内に多いと急激に悪化することがあります。
さらに恐ろしいのは、唾液や便に含まれたウイルスから人へうつるリスクがあることです。実際、動物看護師や獣医師でも、感染歴(抗体陽性)が確認されており、人への“猫→人”感染が現実のリスクであることがわかります。
飼い主が今できること。SFTSから愛猫と自分を守るために

では、飼い主として何に気をつければよいのでしょうか?以下がポイントです。
1. マダニ対策を徹底する
- 完全室内飼育でも油断禁物。人間が持ち帰ったマダニが感染源になることも
- 毎月のマダニ予防薬の使用を徹底(市販の首輪では不十分なことも)
2. 猫の体調に変化があれば、すぐ受診
- 高熱、食欲不振、嘔吐などはすぐに動物病院へ
- 特にSFTSが多い西日本(九州中国地方など)では要注意
3. 感染が疑われる場合は直接触れない工夫を
- 手袋マスクの着用、患猫の体液や便尿の処理には十分注意
- 絶対に口移しや顔を舐めさせることは避ける
4. 病院でも「SFTSの可能性がある」と伝える
- 早期検査隔離により、他の動物や人への感染防止につながります
まとめ

SFTSは、飼い主にとっても他人事ではない感染症です。予防は「マダニ対策」と「早期発見」がカギ。愛猫と自分自身を守るため、正しい知識と備えを大切にしましょう。