猫の多頭飼育で起こる『ご飯のトラブル』3選 改善すべき理由や対策方法も解説

猫の多頭飼育で起こる『ご飯のトラブル』3選 改善すべき理由や対策方法も解説

猫の多頭飼育では、食事の際にいろいろなトラブルが発生することがあります。特に猫同士の相性や性格、食事のペースの違いなどから、何かと飼い主を悩ませる問題が起こりがちです。そこで放置してしまうとさらなるトラブルも考えられます。そこで今回は、多頭飼育でのご飯トラブルの例と対策について解説します。早く解決して心穏やかに生活できるようにしましょう。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

猫の多頭飼育で起こるご飯のトラブル3選

ひとつの器で食べる子猫たち

多頭飼育は、単頭飼いでは気づきにくい猫の個性や行動パターンが出てきます。ふだんは仲良くしていても、食べることに関しては性格や好みによってトラブルが起きてしまうことも。

ここでは、実際に多くの飼い主さんが直面している代表的なトラブルを紹介していきます。

1.食事の横取り

猫たちを一斉に食べさせる際に、食欲旺盛な猫がほかの猫の分まで食べようとしてしまう問題があります。

たくさん食べたい猫や早食いの猫が、自分の分を食べ終わったあとに「もうちょっと食べたいな」とほかの猫の食器に顔を向けてしまうと、気が弱い猫は自分の食事をあげてしまうかもしれません。

一時的な横取りなら大きな問題ではありませんが、あまり継続すると栄養不足や体重減少につながります。特にシニア猫や体格の小さい猫は、食べ損ねが常習化すると体調を崩すおそれがあります。

同居している猫たちの力関係は、先住か新入りか、年齢差、オスかメスかなどさまざまな形で異なります。もちろん、体格差や性格の違いによる力関係も影響し、なおかつ流動的に変化しますので日頃から観察が必要です。

2.置き餌で食事の管理が困難に

猫それぞれに食器を与えている家庭が多いようですが、日中お留守番が長い家庭では、好きなときに自由に食べられるよう、自動給餌器などひとつの器にみんなの分を入れておくかもしれません。

このような「自由採食」は、食べたいときに少しずつ食べるという猫特有のちょこちょこ食いの欲求を満たしてくれます。一方で、実際にどの猫がどれだけ食べたか把握しづらいというデメリットがあります。

食事量のコントロールができないと、太る猫と痩せる猫が極端に分かれ、肥満や栄養不足などのリスクを高めます。肥満になると糖尿病や関節疾患を発症しやすくなるので注意が必要です。

また、同居猫の中に療法食が必要な猫がいる場合、食事を出したままにしてしまうと、ほかの猫の食事を食べてしまい、肝心な猫の治療効果が落ちる危険性があります。療法食は一般の食事と比べると「あまりおいしくない」といわれますから、置き餌をすると食べ逃しをさせてしまうのです。

3.食事中のストレス

多頭飼育の食事の問題は、その環境も影響してきます。たとえば、あまり仲が良くない猫同士が食事の場で一緒になったとき、落ち着いて食べられないという状況を作ります。何もしていないのに、どちらかがケンカを吹っ掛けてくることは、猫の多頭飼育ではたまに起こるものです。

あるいは、小さな子猫が一緒にいる場合、先住たちが食べているご飯を見て回ったり、先に食べ終えてバタバタ走り回ったりすることがあります。

若い猫であれば、気にせずさっさと食べて寝床に戻るかもしれませんが、年を取って食べるのがゆっくりになった猫がいる家庭では、子猫の動きや物音がストレスになり、食欲が低下することも。また、シニア猫は食事時間がずれると、消化にも大きく影響してきます。

多頭飼育の食事トラブル対策

食事中にこちらを見るチャトラ猫

多頭飼育の家庭で起きる食事トラブルは一時的なものから、永続的なものまで分けられます。

たとえば、みんなで食事中に子猫が暴れまわるなどは、数ヵ月して大きくなれば収まることがほとんどです。一方で、シニア猫が腎臓疾患による療法食を食べはじめるなら、問題は永続的になるでしょう。問題に気づいたら、すぐに対策をはじめるようにしましょう。

一番手軽にできる対策は、「食べる場所を物理的に分けること」です。別々の部屋にしたり、椅子や台などの高低差を利用して、それぞれが自分の食事に集中できるようにします。あるいは、時間差で食べる時間を分けるのもいいでしょう。飼い主さんも猫全員が正しく食事ができるように見守ることも大切です。

場所的に許されるのであれば、横開きのキャリーバッグ(クレート)やパーテーションで各々のスペースを区切って食べさせるのも良いでしょう。その際に、猫たちの食事量を記録しておくと、あとになって何かと役に立ちます。

まとめ

ボウルでごはんを食べる4匹

多頭飼育で起きる食事のトラブルは、いずれもご飯を置きっぱなしにすることで生じるものです。「ほかのコが食べちゃった!」というのは、多頭飼いならではの微笑ましいシーンでもありますが、あまり放置してしまうと健康問題にも発展します。

幸いにもこのトラブルは、食事の場所や時間を工夫することで改善することができます。また、できれば猫の食事はポンと与えるだけでなく、どのコがどのように食べているのか、できるだけ観察するようにしましょう。猫同士の食事のトラブルを防げるだけでなく、猫の体調の変化にも気づきやすくなります。

食事は猫にとっても健康のバロメーターですから、気持ちよく楽しく健康的に過ごせるように環境を整えてあげましょう。

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