猫を我が子扱いすることで起こるトラブル

猫に我が子のように愛情を注ぐことは飼い主の喜びですが、愛情の扱い方が行き過ぎると、次のようなトラブルを招いてしまうかもしれません。
愛情が原因で起きる猫とのトラブルは、なかなか気づきにくいものです。状態が悪化する前に気づけるようにしましょう。
1.分離不安症などメンタルの不調
猫は自立心が強いので健全に成長していれば、基本的にはひとりで上手に生活していけるものです。しかし、飼い主が溺愛しすぎてしまうと、猫の自立性や自由までも奪ってしまうことがあります。
たとえば、病気で寝たきりでもないのに、食事の場所を決めず、常に猫がいる場所へ持って行ったり、一緒にいるときは常に抱っこしたりする、あるいは危険を理由に高い場所へ上らせないなどです。
飼い主が過保護になると、猫は物事への興味関心を失い、飼い主への依存が強くなることがあります。その結果、留守番ができないなど分離不安を引き起こすこともあります。
2.攻撃行動や粗相などの問題行動
猫がある程度の自立心を持っているにもかかわらず、飼い主の過度な「我が子扱い」により、猫が必要とするひとりの時間や適度な距離感が失われると、猫は精神的な逃げ場を失い、慢性的なストレスを抱えることになります。
ストレスが溜まると「噛みつく」「威嚇して引っ掻く」「隠れて出てこない」「粗相をする」などの問題行動が現れますが、これらの問題が出る頃には、猫は相当限界に達している可能性があります。
飼い主が過保護に気づかないと、攻撃的な問題行動を猫の性格のせいだと誤解し、根本的な解決が遅れてしまうおそれがあります。
3.肥満のリスク
猫が足元で鳴いていると、すぐに食べ物を与えてしまう飼い主は少なくありません。猫が喜ぶのを見たい一心で食べ物を与えてしまい、猫はそれほど空腹でもないのに食べてしまうのです。
たまに与える分には、おやつは楽しいコミュニケーションになるため問題ありません。しかし、猫は遊びやトイレ掃除の要求などさまざまな理由で鳴くことがあるため、必ずしも鳴く=空腹ではないのです。
食べすぎは肥満の原因となり、糖尿病や関節疾患、心臓病などの深刻な健康面でのトラブルを引き起こします。
4.猫中心になり社会生活に支障が出る
愛猫中心の生活が当たり前になり、愛猫のためだけに生きている状態が続くと、自分の生活や人間関係まで犠牲にしてしまう危険があります。たとえば、仕事を休みがちになったり、友人との約束をキャンセルしたりするなど、社会とのつながりが希薄になってしまうケースです。
これは本人も気づかずに陥りやすい傾向ですが、もともと人や社会とのつながりが薄い場合には注意が必要です。
特に一人暮らしの人ほど、猫への依存が強まる傾向があります。本人が気づきにくい場合もあるため、周囲の家族も注意を払うようにしましょう。
なぜ猫を我が子扱いすると逆効果なのか

猫を「我が子」として扱うことは、一見愛情深く見えます。しかし、猫と人間の感じ方や生き方のズレがあり、どうしても人間は猫を溺愛しがちになってしまいます。
猫は本来ひとりで生きるようにプログラムされています。しかし人は『守ってあげたい』『一緒にいたい』という愛情から、過剰に食べ物を与えたり、いつもベタベタ干渉したりしてしまいます。そのズレが続いた結果、トラブルにつながってしまうのです。
溺愛することが、必ずしも猫の幸せとは限りません。猫を大切にするということは心や身体を壊すほど愛することではなく、猫が猫らしい生き方を尊重することなのです。
飼い主が心掛けたい猫への正しい接し方

猫を我が子のように溺愛しすぎてしまい、お互いに大変な思いをしないために猫への正しい接し方を心掛けましょう。
- 適度な距離感を持つ
- 猫の自立を尊重する
- 猫がひとりで過ごす時間を確保する
猫だけでなく、飼い主の方も健全な自立心を持つことが大切です。猫への愛情で孤独感を埋めようとしていないか、あるいは猫の幸せをよく考えるなど、客観的な視点が求められます。
猫にも飼い主にも適切な距離感を保ち、互いの生活を尊重する関係で、末永く愛猫と暮らしていきましょう。
まとめ

愛猫に愛情を注ぐことと、依存関係を作ることはまったく別物です。猫への愛情が深いほど、つい手をかけすぎてしまいがちですが、過度な干渉はトラブルを引き起こす危険があります。
健全な関係を築くには、猫が自分の時間を持てる環境を整えつつ、飼い主自身もまた、自立した生活を送ることが双方にとって快適な関係につながるでしょう。
猫に必要なのは、四六時中なにかと世話を焼く執事ではなく、必要なときに頼れる存在としての飼い主です。分離不安や問題行動が起きたときには、できるだけ早めに動物病院に相談するようにしましょう。