1.基礎代謝の低下

高齢になると、猫も人間と同じように基礎代謝が低下します。そのため、以前は完食していたご飯を残すようになったり、食欲が全体的に落ちたりすることがあります。これは病気ではなく、老化に伴う自然な変化のひとつです。
食欲が落ちてきたら、カロリー密度の高いフードや消化吸収の良いシニア向けのご飯を選ぶなどで、少量のフードでも十分な栄養を摂取できるよう工夫することが大切です。
ただし、これは見た目だけでは判断はできません。急激に体重が減ったり、まったく食べなくなったりした場合は、病気が隠れている可能性もあるので注意しましょう。
2.消化器の衰え

猫も年を重ねるにつれて胃腸の機能が衰え、食べたものをうまく消化吸収できなくなることがあります。そのため、若い頃のようにたくさん食べられなくなったり、胃もたれのような不快感を覚えたりして食欲がなくなる場合も。
また、腸の動きが鈍くなって便秘がちになるシニア猫も多く、食欲不振の一因となりえます。
こうした消化器の衰えには、消化しやすい食事を与えるのが有効です。消化吸収に優れたシニア猫用フードに切り替えたり、ドライフードをふやかしたり、ウェットフードに混ぜたりして、消化器への負担を減らしてあげましょう。
3.嗅覚の低下

猫は食事をするときに、味覚よりも嗅覚で食べるかどうかを判断します。そのため、嗅覚が低下すると今まで好んでいたご飯にも興味を示さなくなっていくのです。当然、食欲にも影響します。
このような場合は、食事のニオイを強くしてあげると良いでしょう。たとえば、ドライフードやウェットフードを人肌に温めるなどして、香りを立たせるのが効果的です。また、魚や鶏肉など、香りが強めで猫が好む食材をトッピングするのもおすすめです。
高齢の猫には、嗜好性を高めつつ、栄養バランスを崩さない工夫が求められます。
4.口腔内・内臓の疾患

シニア猫がご飯を食べなくなるのには、口腔内や内臓に病気を抱えている場合もあります。たとえば、歯周病や口内炎、慢性腎臓病などの内臓疾患が考えられるでしょう。
口内炎があると食べるたびに痛みを感じて食欲が落ちます。とくに、歯周病は3歳以上の猫の80%がかかっており、年齢とともにリスクが高くなっていきます。
また、高齢の猫に多い慢性腎臓病をはじめとする内臓の疾患も食欲低下の原因となります。慢性腎臓病では、水をたくさん飲んでたくさんおしっこを出す(多飲多尿)の症状が見られるようになります。早期発見のための目安にしましょう。
いずれにしても、食欲不振を単なる老化現象と決めつけず、一度は動物病院を受診することをおすすめします。
ご飯は無理にでも食べさせる?

シニア猫がご飯を食べないまま放置すると、筋肉量が減少するサルコペニアや免疫力の低下による感染症リスク、肝リピドーシスなどの深刻な健康被害につながります。そのため「食べないから仕方ない」と放っておくのは危険です。
とはいえ、口へ押し込むなどして無理矢理食べさせるのは、ストレスや誤嚥を招くためおすすめしません。必要な場合は、獣医師の指導を受けた上で行いましょう。
ごはんを人肌に温めて香りを引き立てる、ウェットフードやスープ状のものを与える、嗜好性の高いトッピングを少量加えるなど、猫が自発的に食べたくなるように工夫しましょう。
まとめ

シニア猫がご飯を食べない原因には、基礎代謝や消化機能の低下、嗅覚の衰え、口腔内や内臓の疾患などさまざまな要因が考えられます。放置すると健康を損ない、最悪は命にかかわる恐れすらあります。
食欲が落ちてきたら、ご飯を温める、好物をトッピングするなどして、食欲を刺激する工夫をしてあげましょう。
ただし、病気が隠れている可能性もあるため、食欲不振が長引くようなら早めに獣医師に相談してください。