猫が分離不安症になる原因とは?

分離不安症になってしまう猫は、過去の経験や生活環境が原因であることが指摘されています。
たとえば、幼いときに母猫や兄弟と早くに離されてしまい、十分な自立心を持てなかった場合や、飼い主との関わりがあまりにも密になりすぎた場合に発症しやすくなります。
その背景には、もともと慎重で、甘える相手が一点集中型の猫は、ひとりになることに強い不安を感じやすい傾向にあることが挙げられます。猫は父猫の性格を強く受け継ぐといわれているため、人慣れしていない野良猫の子などは、保護主さんに依存してしまうこともあるでしょう。
引っ越しや家族構成の変化など、生活リズムの急な変化も引き金になるため、猫の性格・飼い主との関係、そして生活の変化が重なることで、不安が強まりやすくなるのです。
猫の分離不安症によくある6つの兆候

猫の分離不安症の症状の中には、分離不安という精神的な原因だけでなく、身体の病気が原因で出てくる症状も含まれています。
そのため、もし、いずれかの症状があてはまった場合は、分離不安症も含めた上で、動物病院で相談するようにしてください。
1.異常に鳴き続ける
飼い主が外出した直後から、ドアの前や窓の近くでウロウロしながら大きな声で鳴き続けることがあります。ふだんはあまり鳴かない猫が留守中だけ激しく鳴く場合、不安や寂しさの可能性があります。
2.在宅時の過剰な甘え
ふだん家の中にいるときでもしつこくつきまとったり、帰宅したとたん、過剰に鳴きながら甘えたりしてくることがあります。単なる寂しさというよりも、離れていることへの強い不安感が原因になっている可能性があります。
3.トイレ以外での排泄
留守中などに、トイレ以外の場所(特に飼い主さんのニオイがついている場所、ベッドやソファなど)に排泄することがあります。ひとりで過ごすことへの不安からくる行動です。飼い主さんがいる時もトイレ以外で排泄している場合は、泌尿器系の病気などの可能性もあります。
4.過剰なグルーミング
猫の毛づくろいは、生活を保つためだけでなく、ストレス解消の目的もあります。不安を感じると、落ちつこうとして体をしつこく舐め続けることがあります。特に脱毛や赤みが見られるほど舐めている場合は、分離不安症のほか、皮膚炎などの病気も疑われます。
5.食欲に波がある
帰宅後に一緒にいると問題なく食べられるのに、留守中にまったく食べられない場合はやや注意が必要です。食事のタイミングにもよりますが、食欲よりも不安が勝るようなら分離不安症の傾向があります。
6.物の破壊やいたずら行動
不安を発散するために、カーテンやクッション、ドアなどを引っかいたり噛んだりすることがあります。爪とぎの癖とは違い、特に破壊的で、留守中に限って起こるような場合は、分離不安症に注意が必要です。
分離不安症かなと思ったときの対処法

愛猫の分離不安症に関して、もし不安な行動が見られる場合は、次のような対処方法を試してみてください。
在宅中にいつもべったりと一緒にいる場合、家族がいなくなった部屋にいると喪失感を強く感じることがあります。猫用ベッドを置いた特別なスペースを用意して、ふだんからそこを使わせるようにしましょう。
猫がそのスペースで過ごしている間に、飼い主さんが別の部屋へ移動するなどして、猫がひとりで過ごす時間を少しずつ増やしましょう。最初のうちは後追い行動があるかもしれません。
落ち着いて過ごせるようになるまでは、定期的に猫の不安を和らげるスプレー(フェロモン製剤)などを使用するのも効果的です。
そして、外出前後に過度な声かけをしないようにしましょう。精神的な刺激がきっかけとなり、猫の不安をあおることがあります。
また、問題行動がひどい場合や、改善が見られない場合は、行動診療科の獣医師に相談することも大切です。特にトイレ以外での粗相や食欲不振は健康問題にも関わりますので、慎重に判断しましょう。
まとめ

今回紹介したように、猫の分離不安症は一見、甘えん坊と紙一重なところがあります。最初は気がつかない飼い主さんもいますが、もともとの気質や経験、環境の変化などが複雑に影響して起こる心の不調です。
飼い主と離れることで強い不安を感じ、鳴くことが増える、粗相をするなどの問題行動が出てきます。こうした行動はしつけの問題ではないため、見逃さず早めに気づいて対応することが大切です。
もし、ちょっとおかしいなと感じたときは、専門家の手を借りることもひとつの手かもしれません。愛猫と気持ちよく生活していくためにも、飼い主自身も焦らず向き合っていきましょう。