猫の下腹部のたるみ「ルーズスキン」
ルーズスキンとは、猫の下腹部〜後肢の付け根にかけての皮膚のたるみ部分を指します。
たるみを触るとタプタプとして気持ちいいですが、一見猫が太っているからだと思われやすく、この下腹部のたるみは猫の年齢や性別、肥満に関係なく見られます。
猫は高いところからジャンプしたり、素早い動きができたりするなど、柔軟で非常に瞬発力が高い動物です。
そのため猫の皮膚は全体的にゆとりがあり、下腹部のたるみがあることで、急な動きでも下腹部の皮膚が突っ張ることがなく対応することができるのです。
猫の下腹部のたるみルーズスキンの役割
- たるみがあることで猫は俊敏な動きができる
- たるみが防御になり外傷による内臓へのダメージを防ぐ
- 保温効果
後肢の可動域が広くなることで俊敏で柔軟な動きができる
猫はネズミや小鳥などの小動物を捕食する狩猟動物です。下腹部の皮膚にたるみがあることで、俊敏な動きや獲物に気づかれないように柔軟な動きをすることができます。
また、たるみの部分が下腹部〜後肢の付け根なため、皮膚にゆとりができることで、足の可動域が広くなり高いところからジャンプしたり、急なダッシュをしたりしても、皮膚が突っ張ることがなく動くことができます。
攻撃による致命的なダメージを避けるため
単独動物でもある猫は、縄張り争いなどによる喧嘩が起きやすく、お腹部分は急所でもあります。
喧嘩の際にお腹を噛まれ内臓に致命傷を受けてしまわないように、下腹部にたるみがあることで内臓に届きにくくなり、攻撃によるダメージを減らすことができます。
保温効果
猫は暑さに強い分、寒さに弱い動物です。更にお腹には内臓があるため、冷やしてしまうと体温低下に伴い代謝が落ちたり、体調不良を起こしたり、病気にかかりやすくなります。
下腹部のたるみであるルーズスキンは保温効果があるといわれ、体温を維持することができます。
猫の下腹部のたるみであるルーズスキンになりやすい猫種
- ベンガル
- アメリカンショートヘア
- エジプシャンマウ
- ピクシーボブ
タプタプとした下腹部のたるみはどの猫でも見られますが、特にルーズスキンになりやすい猫の種類はベンガル・アメリカンショートヘア・エジプシャンマウ・ピクシーボブです。
またそれらの血統を受け継いでいる猫でも、ルーズスキンによる下腹部のたるみが見られやすい傾向があるといわれています。
猫の下腹部のたるみであるルーズスキンは、猫以外にもライオンやチーター、ヒョウ、トラなどネコ科動物も持っています。
猫の下腹部がたるむルーズスキンと肥満の違い
ルーズスキンはどの猫でも見られる下腹部にある皮膚のたるみです。
しかし、下腹部にあるたるみがルーズスキンなのか、それとも肥満で下腹部がタプタプしているのか見分けが難しいですよね。
- たるみ部分が厚い
- 摘むと弾力がある
ルーズスキンになりやすいアメリカンショートヘアですが、肥満になりやすい猫種でもあるため、非常に分かりにくいです。
またブリティッシュショートヘアやスコティッシュフォールドなどの種類は、元々の体型が丸いため、太っているのか標準なのか判断が難しいです。
一般的なルーズスキンは猫の下腹部にある皮膚のたるみですが、肥満の場合はたるみ部分が厚く、摘むと弾力を感じられます。
猫の理想体型は、触れたときに肋骨を感じとることができるか、真上から見て猫の腰のくびれが分かるかどうか比較して体型をチェックすることです。
猫の理想体重は成長期が完全に終了した1才頃といわれており、その体重よりも120%超えると肥満といわれています。
特に避妊・去勢手術後は性ホルモンの関係で太りやすくなるため、太らせないように食事管理する必要があります。
メス猫の方が下腹部がたるみやすい
メス猫の場合は避妊手術を行うことで、エネルギーを消費しにくくなるため下腹部にたるみができることがあります。
また、ホルモンバランスにより通常でもオス猫よりメス猫の方がルーズスキンが見られやすいといわれています。
避妊手術のほかに、何回も妊娠し出産を行うことで下腹部の皮膚が伸びてたるみになることもあります。
猫の下腹部のたるみが気になるときの対処法
ダイエットをする
猫の下腹部のたるみがルーズスキンであれば、猫特有であるため特に問題はありません。
しかし、下腹部のたるみが皮膚ではなく厚みがある脂肪を感じられる、下腹部だけではなく全体的に丸みを帯びた体型、脂肪に覆われくびれが見えない・肋骨が触れないなど、明らかに肥満体型の場合や、1才頃よりも体重がはるかに増えている場合はダイエットする必要があります。
感染症予防で室内飼いが好ましいですが、その反面活動範囲が狭くなり運動不足になりがちです。また予防で行う避妊・去勢手術もホルモンの関係で代謝が低下し、太りやすくなります。
丸みを帯びたボディーは可愛いですが、肥満になると糖尿病や尿石症などの病気にかかりやすくなったり、心臓や関節にも大きな負担をかけたりしてしまいます。
一気に食事量を減らし大きく体重を落としてしまうと、過剰な空腹感でストレスとなるなど、体にとってもよくありません。
少しずつ食事量を減らしたりカロリーが低いフードに替えたりしてみて、時間をかけて緩やかに体重を落としていけるようにしましょう。
異変があるときは早急に動物病院へ
ルーズスキンは伸びた皮膚の皮のように感じられますが、触ってみてしこりのようなものを感じる、下腹部がパンパンに張っており、過剰な嫌がっているなどの様子があれば、何らかの病気の可能性があるため動物病院に受診する必要があります。
猫の下腹部にたるみがあるような病気
乳腺腫瘍
お腹のしこりで多いのが、メス猫に見られる乳腺腫瘍です。
猫の乳腺腫瘍は9割が悪性腫瘍なため、再発しやすかったり肺などに転移したりしていることがあるため、予後が厳しくなります。
腹水
特に猫のお腹に水が溜まる腹水は、肥満と非常に間違いやすいため注意が必要です。
腹水が溜まる場合は、お腹の横に広がるようにパンパンと膨れあがっています。また苦しそうな呼吸をしていたり元気がなく、ぐったりしたりしています。
溜まっている腹水の量が多いと、肺を圧迫し息苦しくなってしまうため、利尿剤を投与し尿として水分を排泄させたり、場合によっては腹水を抜く必要があったり、命に関わってきたりします。
尿石症
また、同じく下腹部が張っている場合に考えられるのが排尿障害です。猫は尿石症などの下部尿路疾患になりやすい動物ですが、特にオス猫は尿道が細長いため結石が尿路に詰まってしまうとオシッコが出なくなってしまいます。
尿道が閉塞すると猫の膀胱はパンパンになるため下腹部を触ると分かります。その際には何回もトイレに行くがオシッコが出てなく、排尿痛などが見られます。
オシッコが全く出なくなってしまうと腎臓に障害をあたえ急性腎不全、尿毒症となり最悪の場合は短期間で命を落とします。
まとめ
猫の下腹部〜後肢の付け根にある皮膚のたるみはルーズスキンといい、年齢や性別、肥満に関係なく見られます。
この下腹部のたるみがあることで皮膚が突っ張ることがなく、俊敏な動きや高いところからジャンプするなどの柔軟な動きをすることができます。
また、お腹は急所であり噛まれて内臓に損傷を受けると命取りになってしまうため、下腹部のたるみがあることで噛まれても、内臓が届きにくくさせてくれる役割を持っています。
しかし、太っているかどうか見極めることが難しいですが、肥満の場合は全身的に脂肪で覆われ、触っても肋骨を感じにくかったり、くびれが見えなかったりするなどと理想体型と相違点があります。
また理想体重の目安である1才頃の体重よりも大きく超えている場合は、体重を減らす必要があるためダイエットさせることです。
このときよく間違いやすいのが腹水です。肥満と同様に下腹部がふっくらしていますが、腹水の場合はお腹の横に広がるように膨れ、溜まっている腹水の量が多いとパンパンと張り、肺を圧迫するため呼吸が苦しくなります。
そのため、お腹が張っており過剰に嫌がっていたり、触ったときにしこりを感じたりした場合などは、ただのたるみではなく何らかの病気の可能性があるため、早めに動物病院に受診することです。