猫が寝ながら食べる意外な理由
時々、寝転がってお菓子を食べる人がいますよね。子どもだと確実に叱られるでしょう。実は、このお行儀の悪い行動は人間に限った話ではありません。猫も食事をするときに寝転がって、お皿から一粒ずつ出して食べる癖を持つことがあります。なぜこのような行動を取るのでしょうか?掘り下げてみると意外な理由があることが分かりました。
野生の本能
猫は元々、狩りをして食料を得ていた動物です。そして、獲物である肉を少しずつ歯を使って削ぎ落としながら食べていました。この少量ずつ食べるという習慣が、狩りをしなくなった飼い猫にも残っているようです。腹這いになり、前足でちょこちょこと餌をすくって食べる行為は、野生の名残からくる本能的な行動だったのです。
皿に顔をうずめて食べることが苦手
猫はとても警戒心の強い動物です。野生時代に少量ずつ肉を食べる行動も、食事中に天敵が襲ってくることを警戒しているからです。狩りをしなくなった現代の猫も、無防備になる食事中には警戒モードに入ることがあります。
顔をうずめて食べるということは、周囲を観察することが困難になる状況です。無防備なうえに、周囲が見えないとなると危険と判断します。そしてその結果、寝そべった姿勢で少しずつ食べることが安全策だと思うのです。
ヒゲが食器に触れることが不快に感じる
猫のヒゲはデリケートです。その理由は、猫にとってヒゲは日常生活において大切な役割を果たすからです。ヒゲの役割は、平衡感覚を保つ・障害物を感知する風や匂いの方向を計る・湿度を測るなどがあります。ヒゲのおかげで猫は塀の上を歩いたり、暗闇でも障害物との衝突を回避することができるのです。
このような、生きるうえで欠かせない器官であるヒゲが食器に触れてしまうことがとても不快に感じてしまう猫もいます。寝転がって食べるのは、大事なヒゲを守るためということも考えられます。
飼い主さんが喜ぶから
人間が寝そべって食べている光景は、だらしないと感じるものです。しかし、猫の場合は不思議な光景に思わず笑ってしまうでしょう。これが、猫にとっても飼い主さんが喜んでいると思うのです。きっかけは本能的なものでも、飼い主さんの反応が良いと褒めてくれていると感じるのです。
単に食事が気に入らない
寝転がって餌を取り出しても食べない場合は、単に食事が気に入らないということが考えられます。「これ本当に不味いんだよね。だから、いらない」とわざと器の外に餌を捨てているのです。
猫が寝ながら食べるのは、お行儀が悪いからではありませんでした。また、人間の真似をしているわけでもありません。もし、このような食べ方をする猫を見かけても、飼い主さんの日頃の行動がだらしないからではないのです。ところで、この「寝ながら食べ」を続けても大丈夫なのでしょうか。辞めさせる手だてはあるのでしょうか。次の項目では、この行動に対する注意点をご紹介いたします。
「寝ながら食べ」で注意してほしいこと
猫が寝ながら食べる行動にはいくつか注意点があります。この行動からくる思わぬリスクや、その対処法についてご紹介いたします。
叱らない
先ほど紹介したように、猫が「寝ながら食べ」をする背景には様々な要因がありました。愛猫がこの行動を取っている場合、考えられる理由を探ることが大切です。ここで叱ってはいけません。
このタイミングで叱ると、食事をしてはいけないと誤解してしまいます。そして食欲不振になり、食事をすることが恐怖の時間になってしまいます。
ストレスがかかる可能性がある
傍から見ると、人間の行動とも重なり面白く見えてしまいがちです。しかし対策を考えなければストレスに晒される可能性があります。それは本能的な理由でも、物理的な理由でも同じです。猫にとって食事する環境に何かしらの問題があるからです。本能的な行動が背景にある場合は、安心して食事ができる場所を考えてあげましょう。
そして、食事中は猫から離れましょう。こちらには食事を横取りする意思はないと、はっきり行動で示すのです。ヒゲが食器に触れてしまうという、物理的な理由の場合は食器を変えてみましょう。ヒゲが触れないように工夫された商品も販売しています。食事は毎日必ず食べるものです。安全に、快適に食事ができるように配慮しましょう。
衛生面に気をつける
餌を食器から出して食べるということは、床に直接餌が触れてしまうということです。これはあまり衛生的とはいえません。そこで寝ながら食べる行動が習慣化している場合は、ランチョンマットの役割を果たすものを用意しましょう。
これは床に直接餌が触れなければ良いので、どのようなものでも構いません。ただし、ティッシュペーパーやキッチンペーパーはあまりおすすめしません。舐めているうちに湿ってしまい、誤ってペーパーを食べてしまう恐れがあるからです。誤飲の危険性がないものを活用しましょう。
猫も食べる姿勢は大事!その食べ方は危険かも
寝ながら食べる姿勢も含め、身を低くして食べる習慣は身体に負荷がかかります。具体的な危険性は次のようなものがあります。
- 吐き戻しの原因になる
- 関節に負担がかかる
猫の身体の構造は人間とは異なります。猫の場合、口・食道・胃が人間と比較すると一直線になっています。だから、食事をする姿勢が低いと極端にいえば逆立ちをしながら食べているようなイメージになるのです。
よって食べ物が逆流しやすくなり、吐き戻しの原因に繋がるのです。また、身を低くして食べる行動は関節にも負担をかけてしまいます。身体の小さな子猫であれば問題ありません。しかし成猫に成長した後は、身体が大きくなるため、いわば腕立て伏せをしながら食事をすることになってしまいます。若いうちは関節もしなやかですが、高齢期になると柔軟性を失い大きな負担になります。
猫にとって理想的な食器の高さ
身体に負担かけずに食べられる理想的な食器の高さは「5~8cm」が目安です。このくらいの高さがあることで首が下がったり、身を低くしなくても食べることができます。吐き戻しや食べ難そうにしている場合は、食器の高さを調節してみましょう。ただし、先ほどの高さはあくまでも目安です。愛猫が最も快適に食べられる環境を整えてあげてください。
まとめ
今日のねこちゃんより:ハチ / ♂ / 黒ブチ / 2.5kg
猫が寝ながら食べる光景はユニークです。その理由を掘り下げてみると、とても意外なものでした。特別不自由なく食事をしているようであれば、衛生面にだけは気を配り様子を見るようにしましょう。
餌が気に入らない場合は、気に入らない理由を考えてみましょう。でもすぐに別の餌に切り替えたり、ウエットフードをメインにはしないほうが良いでしょう。ある程度は様子を見て、空腹になったところで渋々食べるようであればその餌を続けましょう。
ただし、3日以上食べない状態が続くことは肝臓への負担が大きくなります。他の餌に切り替えましょう。そして、体調に異変がないかチェックするようにしてください。猫はとてもグルメであり、食事のスタイルに強いこだわりを持つ猫もいます。愛猫が楽しく、美味しく、安心して食事ができるように心がけてください。