自閉症の子供がいる家庭に猫を迎えると、子供のストレスや不安が緩和されることが研究により分かっていますが、一方でこうした家庭に迎えられた猫はどのように環境に順応しているのでしょう。
自閉症児は感覚が鋭敏かつ繊細で、突然大声を出したり暴れたりすることもあるため、こうした予測不能な環境で猫にストレスがかかっていないことを確認するのも猫の福祉の観点からは重要です。
そこで今回、ミズーリ大学獣医学部Research Center for Human-Animal Interactionの研究チームは、自閉症の子供がいる家庭に引き取られた猫のストレスレベルを調べる研究を行いました。
10の家庭で検証
今回調査したのは、動物シェルターから保護猫を迎えた自閉症児のいる10の家庭です。
これらの家庭は、事前にスクリーニングテストを受け、気性が穏やかで落ち着いていることが確認された猫80匹の中から1匹を選び迎え入れました。
研究スタッフは保護猫を迎えてから2~3日後、さらにその後6週間ごとの計18週間にわたって各家庭を訪問。
猫の糞中のストレスホルモン(コルチゾール)の量を調べたり、体重を測定したりして猫のストレスレベルを確認しました。
ストレスレベルの減少が確認
結果として猫のストレスの指標となる糞中のコルチゾールは、時間の経過とともに減少することが分かりました。
また、ストレスがあると食欲が低下して減少することのある体重は、家庭に迎えられた後むしろ増加していることが明らかとなりました。
これは、こうした家庭に迎えられた猫のストレスが徐々に軽くなり、猫が上手に環境に順応していることを示しています。
動物シェルターの負担減にも
動物シェルターでは、猫や犬が引き取り先と相性が合わずすぐに戻されてしまうことが多くあり、こうしたことがスタッフの経済的または管理上の負担となっています。
一方、自閉症児のいる家庭のように、特に温和な気性の猫を必要としている家庭もあります。
そのため猫と引き取り先とのマッチング方法として、今回のような客観的なスクリーニングにより特定の気性の猫を選定することも有効かもしれません。
さらに、こうした研究や取り組みが動物シェルター側の負担を軽減できる可能性もあります。
今回の研究結果は、自閉症ではない子供のいる家庭に引き取られた猫と比較するなどして、さらに妥当性を裏付ける必要もあるでしょう。
とはいえ、猫にも人にもメリットのあるマッチング方法の可能性を示す研究に今後も期待したいですね。