「マンクス症候群」で行き場を失いかけた猫がついに安住の地へ

先天性の病気「マンクス症候群」を持って生まれたタック

子猫の「タック」が猫の保護シェルターであるRocky Mountain Feline Rescue(RMFR)にやってきたのは2018年11月のことです。

里親の家で数日を過ごしたものの、一度もトイレで用を足すことができなかったタックは、獣医師から失禁の原因はマンクス症候群であると診断されます。

マンクス症候群は遺伝性の疾患で、先天的に脊椎下部の骨の奇形や肛門の奇形などがあることにより、後ろ脚の麻痺や排便・排尿の障害が起きたりする病気です。

また、尿路感染症にかかる恐れがあるためオムツを着用することもできません。

そんなタックのために新たに里親を見つけるのは、非常に困難なことでした。

スタッフを一つにまとめ上げる人気者の猫

RMFRの居住歴が最も長い猫であったタックは、頭突きをしたりフラフープをジャンプで通り抜けたり、おやつをもらう際にハイタッチをしたりする存在感の大きな猫です。

タックは施設のスタッフに一体感を感じさせ、一つにまとめてくれるような存在であるとともに、誰からも構ってもらいたがる人懐こい性格でした。

ですが、シェルターで2年10カ月暮らした後、そんなタックにもとうとう変化の時がやってきたのです。

新たな施設へ

タックが住むRMFRのシェルターから1時間ほどの場所に、「Colorado Companion Animal Sanctuary(CCAS)」という障害を持った猫が住むための保護施設があります。

このCCASがタックを正式に迎え入れてくれることになりました。

RMFRのスタッフはタックのことが大好きですが、タックが必要とするケアやスタッフの手間を考えると永久にこのシェルターにいることは望ましくありません。

CCASには特別なケアが必要な猫が自由に動き回れる設備が整っているため、タックにとっても最適な場所となるでしょう。

タックは新たな保護施設で自由に歩き回り、新しい猫の友達と遊んだり、日光浴をしたり、彼に必要な愛情を存分に与えてもらえるはずです。

障害を持つ猫が直面する困難と支援の必要性

CCASの創設者であり所長であるルーアン・ピアースさんは、タックが子猫の頃にソーシャルメディアで見つけ、一目惚れしたと言います。

ルーアンさんは時々ウェブサイトを覗いては、タックがまだ施設にいることを確認していたそうですが、ある日RMFRの方からタックの里親を見つけられないと言って相談を受けたのです。

CCASでは猫の失禁対策としてフローリング材にエポキシ樹脂を使用し、洗濯可能なカーペットを敷いていますが、極力普通の家に見えるようにしているとのこと。

また、積極的に猫に刺激を与え、十分に日光浴をさせ、十分に遊ばせて家庭で暮らしているのと変わらない充実した暮らができる環境を心掛けているそうです。

タックを教訓に新たな基金を設立

一方、タックを手放すことになるRMFRでは、彼が与えてくれたものを忘れないために、2022年から特別なケアを必要とする猫のための基金が設立されます。

RMFR役員のナオミ・ルーゴさんは、タックに出会うまでRMFRのような施設がどれだけ重要か、本当には理解できていなかったと言います。

マンクス症候群のような先天性の病気で排便や排尿に問題のある猫は、里親が見つかってもすぐに施設に戻されてしまったり、場合によっては殺処分となることも珍しくありません。

ナオミさんは「こうしたケアを必要としている猫のためにもっとできることがあること、そしてそのためにはコミュニティー全体で猫を助けなければならないことにタックは気づかせてくれた」と言っています。

▼参考サイト▼

https://www.dailypaws.com/pet-news-entertainment/feel-good-stories/manx-syndrome-cat-colorado-sanctuary