愛猫の鼻から変な音が!!その異音の正体とは?
猫は鼻呼吸をする動物です。よって、その息づかいはとても穏やかなものです。そして、眠っている最中も思わず確認してしまうほど静かです。
しかし、時々鼻から「ブーブー」というおかしな音が聞こえることはありませんか?はじめて耳にすると驚くでしょう。この異音には様々な理由が存在します。
猫の鼻が発する異音は、特に問題のないものもあります。その一方で、動物病院を受診し適切な治療を必要とするケースもあります。今回は、代表的な理由を5つご紹介いたします。
1.激しい運動によるもの
猫種による差はあるものの、大半の猫は走ることが得意です。というのも、元々猫は狩りをして食料を得ていたため、効率よく走らなければなりませんでした。
猫が、朝方や夕方などの薄暗い時間帯に、突如として運動会を始めるのは野生の本能によるものです。そして、走ることで自ずと息も上がります。
人間は、その時々の状況に応じて鼻呼吸と口呼吸を使い分けることができます。走るときは、無意識のうちに口呼吸になっているでしょう。猫の場合は異なります。
猫は基本的に、鼻呼吸を貫き通そうとします。激しい運動の末に呼吸が荒くなったとしても、ギリギリまで鼻での呼吸を続けます。その結果、「ブーブー」という異音が出てしまうのです。これは一時的なものなので、呼吸が整う中で異音が消失すれば問題ありません。
2.いびき
皆様は猫のいびきを聞いたことがありますか?ないと感じる方が多いでしょう。猫は目立ったいびきをかく動物ではありません。眠っている猫のそばで、聞き耳を立てると「スースー」という寝息が微かに聞こえてくる程度でしょう。
しかし、寝息以外にも「ブー」や「ピー」などの音が聞こえてくることがあります。これが猫のいびきです。時々であれば問題ありません。一方、「ブーブー」や「ガーガー」などの音が頻繁に聞こえてくる場合は要注意です。鼻にトラブルを抱えている可能性があります。
猫は何らかの問題を抱えていても、人間のように豪快ないびきはかきません。だからあまり危機意識を持つことがないかもしれません。しかし、はっきりと認識できるほど、いびきをかくこと自体が稀なのです。継続するようであれば動画を撮り、動物病院を受診するようにしてください。
3.鼻に異物が入る
猫の鼻はとても小さく、異物が入るなど想像すらしないかもしれません。実は、これが思わぬこれが落とし穴です。たとえ小さくても異物が入るリスクがあります。
室内飼育の猫で、最も多いのは飲み水です。ペロペロと器用に飲んではいるものの、時々鼻に水が入ってしまうことがあります。また、においを確認する過程で、微細な埃が入り込むことがあります。
通常、鼻に入った異物はくしゃみをすることで排出することができるため、くしゃみをした後特に異変がなければ問題はありません。そしかし、日常的に異音を発しているようであれば一度診察を受けましょう。
4.鼻づまりを起こしている
猫も人間と同様に、鼻づまりを起こすことがあります。その主な原因は次のようなものが挙げられます。
- 感染症(猫風邪を含む)
- アレルギー性鼻炎
- 副鼻腔炎など
何れも適切な治療が必要です。特に猫風邪は侮ってはいけません。人間の風邪のように自然治癒することが困難で、重症化すると死に至ることがあります。
鼻から異音が聞こえる意外にも、くしゃみを頻繁にする・涙や目やにが出る・咳をする・食欲がないなどの症状が見られる場合は、動物病院を受診しましょう。
5.短頭種気道症候群
短頭種気道症候群という病気が原因で、異音を発したりいびきをかくことがあります。病名だけを聞くと複雑で分かりにくいかもしれません。
これは、いわゆる鼻ぺちゃ猫がかかりやすい呼吸器系の病気です。鼻が低いというのは外見的特徴であり、内部の特徴としては鼻腔が狭くなり、気管が曲がっている場合もあります。これにより、以下のような状況に陥るリスクがあります。
- 呼吸をする際に気道に圧力がかかりやすい
- 鼻の内部が狭く空気が通りにくい
- 鼻の奥の筋肉がたるむ
- 喉から気管にかけて狭くなる
短頭種気道症候群は以上のような状況から、気道に負荷をかけ徐々に症状が進行する恐れがあります。重症化すると呼吸困難になり、最悪の場合は死に至ることもあります。
短頭種の猫と暮らす場合は、呼吸の観察をこまめに行いましょう。安静時でも常に異音を発していたり、過剰ないびきをかいているようであれば動物病院を受診し、その猫に合った治療をしていきましょう。
鼻にトラブルを抱えやすい猫種
鼻づまりや、短頭種気道症候群などの鼻のトラブルは抱えやすい猫種がいます。いくつかの猫種をご紹介いたします。
スコティッシュフォールド
スコットランドで突然変異によって誕生した猫がスコティッシュフォールド(以下スコティッシュ)の起源です。折れた耳が特徴的ではありますが、これは軟骨の異常によるものであり、全てのスコティッシュに共通する特徴ではなく、耳が折れないスコティッシュもいます。
このように骨の変形を起こしやすいスコティッシュは、鼻の軟骨にも異変が生じることがあり、鼻づまりを起こすことがあります。
スコティッシュは穏やかで、甘え上手という性格的特徴を持っています。生活上で配慮すべきことはあるものの、人間との暮らしには馴染みやすい猫種です。現在一緒に暮らしている方は、時々異音を発することがないか確認してみてください。
エキゾチックショートヘア
エキゾチックショートヘアは、ペルシャ猫とブリティッシュショートヘア、アメリカンショートヘアの特徴を持ち合わせた猫になります。いわゆるブサカワ猫というと、エキゾチックショートヘアが真っ先に浮かぶのではないでしょうか?
エキゾチックショートヘアはその特徴的な鼻により、先ほど紹介した「短頭種気道症候群」になりやすい猫種です。食後や水を飲み終えた後には、鼻周辺を優しく拭いてあげると良いでしょう。
また、目と鼻の間にある涙を排出する鼻涙管が狭い(鼻涙管狭窄)構造になっているため、目やにや涙が出やすく固まってしまうことがあります(涙やけ)。そのため鼻と同様に目のケアもしてあげてください。
エキゾチックショートヘアはとても穏やかで人懐っこい猫です。ただし、やや嫉妬深い一面を持っており、飼い主さんが他の猫と仲良くしていると拗ねてしまうことがあります。それほど飼い主さんのことを大切な存在として見てくれるのです。
ペルシャ
ペルシャは、純血種と呼ばれる猫の中で最も古い歴史を持つ猫です。そして、エキゾチックショートヘアをはじめとした様々な交配種としても活躍しています。また、その優雅な風貌と穏やかで気品のある性格から「ネコの王様」と呼ばれています。
ペルシャはエキゾチックショートヘアの原型であることから、短頭種気道症候群や鼻涙管狭窄にかかりやすくケアが必要です。
そしてその他にも、多発性嚢胞腎や尿路結石などにもかかりやすい傾向があります。そこで、ペルシャやその交配種の猫と暮らす方は、顔周辺の手入れとともに水をしっかり飲むことができるような工夫も取り入れてください。
他の猫よりも必要とするケアはありますが、猫と程よい距離感を保ち、ゆったりと過ごすことが理想の飼い主さんにはピッタリでしょう。時々、保護猫の中にもペルシャ系の猫がいます。家族になる機会があれば、平和に暮らせるように心がけましょう。
「ブーブー」という異音への対処
時々見られるいびきや、一時的な異音であれば特別な対処は必要ありません。そしてケアを必要とする病気に対しても、先ほど説明したような配慮の積み重ねにより、元気に生活することができます。
ここからは、全猫種に共通して重要な対処法や予防策についてご紹介いたします。
鼻の手入れ方法
猫は自ら鼻をなめることから、ある程度のセルフケアは可能です。ただし鼻が低い猫や高齢の猫、まだ上手にセルフグルーミングができない子猫の場合は飼い主さんのお手伝いを必要とする場合があります。
猫の鼻の手入れは、人肌程度のぬるま湯でガーゼを湿らせて鼻を拭き取るというシンプルなものです。これにより、鼻の表面の乾燥や鼻水が固まることを予防できます。
元々猫は、眠くなると鼻が乾く傾向にありますが、これに至っては特に心配いりません。常にガビガビと乾いている場合は、一度動物病院で相談してみてください。
室内を清潔にする
日に何度も掃除する必要はありませんが、ある程度清潔感のある室内を保ちましょう。これは人間にもいえることですが、感染症予防に役立ちます。
感染症を防ぐことで、猫風邪やその他ウイルス感染による異音を未然に防ぐことができます。
湿度管理をする
冬場は特に乾燥が目立ちます。そして、暖房器具を用いることでより一層室内を乾燥させてしまいます。よって、掃除と同様に湿度の管理も行いましょう。猫が快適に過ごせる湿度は50~60%程度です。最低でも50%前後は保つようにしましょう。
湿度を上げる手段として主流なのは加湿器の使用でしょう。最近の加湿器は、使用方法が簡単で手軽に入手できるものも増えています。しかし、本体の手入れを怠ると雑菌を振りまくことになり、逆に危険な装置になってしまいます。
加湿器を使用する際は、説明書に従って正しく使用しましょう。そして手入れが苦手な方や、多忙な方は冬場だけ洗濯物を室内干しにすると良いでしょう。
猫と犬はここが違う!!猫の危険な呼吸について
犬は頻繁に口を開け「ハッハッ」と浅い呼吸をします。これをパンティングといいます。犬がパンティングを行うことは自然なことであり、問題ありません。
一方猫は、滅多なことではパンティングをしません。犬とは根本的に呼吸法が大きく異なるのです。とはいえ、猫にも時々パンティングが見られます。その主な理由は次のようなものが挙げられます。
- 熱中症
- 心肺機能の障がい
- 甲状腺機能亢進症
子猫の場合は、激しく遊ぶことでパンティングが見られることがあります。一時的で且つ稀であればそれほど問題ありません。ただし、頻繁に見られる場合や成猫にパンティングが出現するケースでは、動物病院にて診察を受ける必要があります。
まとめ
今日のねこちゃんより:Mito / ♂ / ヒマラヤン / 3.7kg
「ブーブー」という鼻の異音は、紐解いてみると奥が深いことが分かります。初めて耳にすると驚いてしまうでしょう。実際にはその全てに問題があるわけではないので、冷静に見守ることが大切です。
この音といえば、猫や犬には「逆くしゃみ」という現象があります。これは、異音とともに激しく咳き込んでいるようにも見えます。空気を急速に吸い込む発作的な呼吸が、「くしゃみを吸い込んでいるよう」であることからそう呼ばれています。
これも目撃するとかなりの衝撃を受けるでしょう。人間には起こらないそれは、まるで呼吸困難のように見えますが、通常はすぐに治まるため心配いりません。ただし、その後意識を消失したり、倒れてしまうなどの症状があれば動物病院を受診しましょう。
どのような状況においても重要なポイントになりますが、異変を感じたらその様子を動画に収めましょう。この冷静な機転が、診察においてとても役に立ちます。病気の早期発見には飼い主さんの力が必要不可欠なのです。