猫がウロウロしながら鳴いているときの心理5つ

猫がウロウロしながら鳴いているときの心理5つ

鳴きながら部屋の中をさまよう猫と暮らすのはけっこう辛いものです。イライラさせられることもあるでしょうし、睡眠不足に悩まされることもあるでしょう。しかし、彼らは鳴きたくて鳴いているのでも、嫌がらせをしてるのでもありません。ただただ困って訴えているだけなのです。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

1.ここはオレ様のナワバリだぞ!

芝の上をこちらに来る猫

自分の居場所に自信が持てない時、猫はナワバリ宣言をします。例えば、

  • 引っ越しをして慣れない場所にいる
  • 窓のすぐ外を嫌いな猫や犬がウロウロしている
  • 新入りの猫が気に入らない

など、自分の存在が脅かされていると感じた時に、境界に印付けとしてスプレーもしくは放尿を行うのです。大抵の場合、そこはトイレではないので「粗相」と呼ばれます。

ガラス越しでも縄張り主張

しかし、ガラス越しでもライバルの気配を感じるようなら話は別です。相手は野良猫かもしれないし、散歩中の飼い犬かもしれません。また、タヌキやイタチなどの野生動物が庭に遊びに来る場合もあるようです。何がいるのか耳や鼻の利かない人間にはよく分からなくても、猫はちゃんと分かっています。ここは、どんなに怖くて不安でいっぱいでも、うなったり鳴いたりして「オレのナワバリだ!出ていけ!」と威嚇しなければなりません。

ただこの騒ぎは、家の中に相手は絶対入って来ないのだと猫が確信すれば自然と収まっていくものです。しかし、もしいつまでもウロウロ、ニャーニャーが止まないようなら、他の生き物が近寄れないように工夫するのも1つの手です。また、相手が新入り猫の場合は、いったん引き離し、初めましての状態から徐々にやり直す方が早く解決するようです。

2.安心してできるトイレはどこ!?

格子をのぞく猫

尿道結石や膀胱炎など、泌尿器科の病気に気付く1番のきっかけは、鳴いて頻繁にトイレを出たり入ったりする行動でしょう。

泌尿器に結石ができると、尿を出そうとするたびにお腹や尿道に痛みが走ります。膀胱炎の場合は、焼け付くような痛みや不快感です。つまり猫が泌尿器系の病気にかかると、なぜか毎回トイレの中で痛い目に合うという不快な経験をします。しかし、猫には何が起きているのか理解できません。しかも、何度トライしてもやっぱり同じ事が起きますから、それがニャオーという不満の叫びとなって現われるのでしょう。

飼い主さんの気付きが大切

この、鳴きながらトイレを出たり入ったりする行動に飼い主さんが気がつかなかった場合、猫は別の場所、たとえばベッドやコタツや布団の上で再チャレンジをし始めます。しかし、ここで知っていて欲しいのは、猫に粗相をするつもりなど全くないことです。

彼らはただ痛みを感じずにおしっこができる場所を探しているだけなのです。心の中は、「安心できてゆっくりすごせるトイレがなんでないんだ?」と悲しさ半分、怒り半分で思っていることでしょう。

しかも、泌尿器系は、命に関わる重大な病気です。もしトイレに何度も出たり入ったりしているようなら、すぐにでも病院へ連れて行きましょう。そして、苦しいトイレの呪いから一刻も早く解放してあげてくださいね。

3.腰が痛い!脚が痛いよ!

聴診器を当てられるオッドアイの白猫

猫は我慢強い動物です。痛みに鈍いのではないかといわれるくらい、少々の痛みでは声を上げません。しかし、関節や骨の痛みが原因の場合はつい声が漏れてしまうことがあるようです。

痛みがある時のサイン

骨や関節に問題がある場合、ある特殊な体勢を取ると痛がります。例えばトイレでは、しゃがんだ姿勢が関節を痛めつけるのかもしれません。あるいは、ベッドで横たわると、背骨に無理がかかるのでうずくまるしかないのかもしれません。いずれにしろ、猫はウロウロしたり、不自然な体勢のままじっとしたりして、触られるのを嫌うようになります。この時、もし触ろうとすれば、「シャー!痛いんだから、触るな!」と教育的指導をされるかもしれません。

しかも、脚を引きずるなど、目立った特徴が見られないことも少なくありません。触られるのを嫌がったり、猫が不機嫌そうだなと思ったに時は、まずは獣医さんに相談し、レントゲン検査で骨の不調がないか、診てもらった方がいいかもしれません。

4.みんなはどこ?おかあさ~ん!

壁のボックスから顔をのぞかせるサビ猫

飼い主さんがいなくなると鳴いて探し回る猫がいます。いわゆる後追い行動ですね。子ども気分のまま大きくなる飼い猫には、少なからず見られる行動です。しかし、その度合いが行き過ぎる時には、病的な原因が隠されていることがあります。

耳が聞こえにくくなっている場合

自分の声も飼い主さんの返事の声もよく聞こえないので、大きな声でいつまでも探し回っているのかもしれません。

ですから、もし猫が呼びかけを始めたら、飼い主さんは姿を見せて返事をしてあげてください。姿を見ればきっと安心して鳴くのを止めてくれるはずですから。

「分離不安症」という病気の場合

飼い主さんの姿が見えなくなった時、大鳴きするだけでなく、ドアをひっかいたりトイレをめちゃめちゃにしたりと、破壊的行動にまで及ぶことがあります。場合によっては粗相をすることもあるので、これを「外出したことへの嫌がらせ」「仕返し」だと考える方も少なくありません。

しかし、これは猫が飼い主さんがいないというストレスからパニック状態になっているためで、決して悪気があってやっているのではありません。この場合は、留守中のストレスを軽減するために、留守番が楽しくなるような工夫してみましょう。

  • 遊び場(キャットタワーなど)増設
  • 安心できる毛布など(飼い主さんのセーターなど)
  • パズルフィーダー(おやつを取るように工夫されたおもちゃ)
  • 快適なベッド追加

などがおすすめのアイテムです。さらに、一緒にいる時にたくさん遊んであげるのも、ストレス解消ができていい方法です。それでもだめな時は、獣医さんに相談しましょう。もしかすると別の病気(甲状腺機能亢進症など)が隠れているかもしれないからです。

5.ここはどこなの?お家はどこ?

歩道に座ってこちらを見る猫

ここでは、我が家の猫の話をしましょう。我が家の猫は甘えん坊で、子どもの頃から目を覚まして自分しかいないと、鳴いて家族を探すような猫でした。

しかし、年をとると、彼はだんだん夜中にウロウロしながら鳴くようになりました。最初は声をかけると鳴きやんでいましたが、そのうち姿を見たり撫でたりしなければ鳴きやまなくなり、最期の頃は目の前にいるのに鳴き始め、どこかへ歩き去るようになりました。おそらく彼は認知症を発症していたのでしょう。

この同じ時期、たまたま人の認知症の特集番組を見て、あることを知りました。それは、人が徘徊をする時は、

  • 好きな人に会いに行こうとしている
  • 家に帰りたいと思っている

ということでした。なるほど。ならば、私の猫が会いたくて呼んでいるのはおそらくこの私。そして、帰りたい家とは私たち家族のいるところでしょう。そう思えば、多少トンチンカンな彼の行動も、それほど気にならなくなりました。

猫の認知症問題

認知症の夜鳴き・徘徊は、深刻な睡眠不足を招きます。また、夜の鳴き声は響きますので、アパートやマンションなら騒音トラブルにもなりかねません。

人間と同じく、認知症の特効薬はまだ見つかっていません。ただ、症状を軽くする薬やサプリメントは各種あり、病院で処方してもらうことが可能です。さらに、家庭でも、快適な寝床を作ったり、マッサージやブラシでリラックスさせるのもいい方法です。とにかく猫を安心させてあげること。認知症の場合はそれが治療の要といえるかもしれません。

まとめ

鳴く猫

猫がウロウロしながら鳴く時の心の叫びを5つ挙げてみましたが、突き詰めて見れば、とにかく猫たちは不安で困っているのです。しかし、その困惑の原因を探ってあげられるのは飼い主さんだけです。

もし、猫が部屋の中をウロウロ鳴いて歩いていたとしたら、それは何かおかしなことが起きている証拠。少しだけ細かく観察して獣医さんに相談し、判断を仰いでくださいね。

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