猫が不機嫌なときの対応
猫は些細なことで機嫌を損ねます。愛猫が不機嫌になってしまったとき、飼い主さんはどのように対応すればよいのでしょうか?少しでも早く、機嫌を直してもらうためにできることをいくつかご紹介いたします。
1.そっとしておく
愛猫が機嫌を損ねてしまった、あるいは機嫌が悪そうだと感じられる場合、まずはそっとしておくことが有効な手立てです。
無理に気を引こうとしたり、宥めようと体に触れてしまうと逆効果になってしまいます。さらに不機嫌の度合いによっては、猫パンチをお見舞いされてしまう可能性も考えられます。穏やかな雰囲気に戻るまで遠目から見守りましょう。
2.愛猫の視界に入る位置で待機する
一度不機嫌になってしまった手前、本当は甘えたくても甘えられない状況に陥ることがあります。ある意味自分勝手ですが、幼い子どもにもよく見られるような状況です。
子どもの場合、ここで距離を置いてしまうと近寄るタイミングを見失ってしまいます。猫においても、視界に入る距離感を保つことが大切です。放置しつつも、少し気にかける素振りを見せてあげましょう。
3.声をかける
猫はいわゆるツンデレです。たとえ仏頂面をしていても、完全に無視されてしまうと本格的にへそを曲げてしまいます。先ほどの気にかける素振りにも通ずるものがありますが、時々声をかけることが大切です。
「〇〇ちゃん、遊んでよ」「ほら、ネズミさんだよ」などとさり気なく誘ってみます。ここで反応がなくても、時間差で反応する場合があります。呼びかけを無視されてしまっても、飼い主さん自身はへそを曲げないでください。
そして声をかける際は、叱ったり罵るような言葉をかけてはいけません。ここでひどい言葉をあびせてしまうと、たとえそれが冗談であっても雰囲気から本気に捉えられてしまう可能性があります。今後の信頼関係にも影響を及ぼしてしまうので、くれぐれも要注意です。
4.スマホやPCに集中する振りをする
相変わらず愛猫の視界に入る位置はキープしつつ、他の対象に集中する振りをします。特に猫が邪魔をしたくなるスマホやPCなどが効果的でしょう。要は少々ジェラシーを抱かせるのです。
「〇〇ちゃんが遊んでくれないから動画観ようかな」などと声をかけ、スマホを操作します。ここでの操作はあくまでも「振り」なので、適当に操作しながら様子をうかがいましょう。ジェラシーと、ある種の危機感から邪魔しにくることを狙います。
ここでのジェラシーも、機嫌を直すことが目的です。本気で傷つけることはしないように気をつけましょう。
5.おやつをあげる
不機嫌になったきっかけが通院やお手入れなどの苦痛を伴うものだった場合、そのご褒美も兼ねておやつをあげると機嫌が直るでしょう。ただし、愛猫の策略やワガママが理由である場合はおすすめできません。これでは、不機嫌になればおやつを貰えると誤解してしまいます。
おやつは効果的に活用すればプラスになりますが、一歩方法を誤れば肥満や糖尿病などのマイナスの効果を発揮してしまいます。機嫌を直す目的でおやつを活用する場合、不機嫌になってしまった理由によって好ましいかどうか判断してください。
不機嫌のサインを読み取る
猫の機嫌の善し悪しは、仕草から読み取ることができます。そして、不機嫌を表すサインを読みとることができれば、状況の悪化を防ぐことが可能になります。
次に挙げる仕草が見られる場合は、機嫌を損ねている証です。
耳を後ろに倒す
猫は不機嫌になると耳を後ろに倒します。そして、この容姿のシルエットがイカに見えることから、イカ耳と呼ばれています。イカ耳は、不機嫌の他にも恐怖や警戒を表現しています。何れにしても不用意に触れることは避けたほうが良いでしょう。
耳を後ろに倒す行為は犬にも見られます。犬の場合は、甘えや喜びの表れです。類似した仕草であっても、その意味合いは正反対になります。猫を撫でている最中にイカ耳になったときは、「もう十分だよ」という気持ちが込められているので気をつけましょう。
しっぽをバタンバタンと床に叩きつける
猫の気持ちを知りたいときは、しっぽの動きにも注目しましょう。しっぽは感情のバロメーターです。その中で不機嫌を表す動きは、しっぽを左右に激しく振り、床にバタンバタンと叩きつける仕草になります。
これも、犬の喜びを表すしっぽの動きに似ています。遊んでいる最中や、撫でているタイミングでこの仕草が見られると「嬉しいのね」と誤解してしまいがちです。しかし、実際にはそろそろ解放してほしいという意思表示になります。
この仕草が見られたときは、そっとしておくことがベターです。
明らかに不機嫌そうな顔をしている
猫は人間のように表情筋が発達していません。猫の表情が乏しく、感情を読み取りにくいと感じるのはそのためです。恐らく猫がクールな印象を与えることも、表情に目立った動きがないことが関係しているでしょう。
しかし、苦楽をともにしているうちに微かな表情の変化に気がつけるようになります。機嫌が悪そうなときは、明らかにしかめっ面をしています。
愛猫の表情が険しく、それに加えて先ほど紹介したような仕草が見られた場合は、距離を保ちながら声をかけるようにしましょう。
毛を逆立てる
猫は警戒心が強い動物なので、事ある毎に被毛を逆立てます。その主な理由は、怒り・恐怖・興奮の表れです。この仕草が見られたときは、その原因を特定し、速やかに対処することが大切です。これは、後々の飼い主さんとの信頼関係にも影響を及ぼします。
ちなみに毛を逆立てるのは猫だけではありません。我々人間も実は毛を逆立てる場面があります。それは鳥肌です。鳥肌の原点は、この毛を逆立てる行為にあります。進化の過程で我々の体毛は薄くなりましたが、野生の本能の名残として毛を逆立てた結果、鳥肌が立つのです。
「身の毛もよだつような」という表現は、まさに思わず毛が逆立つような感覚に襲われるほど怖い体験をしたときの様子をありありと表しています。このように考えてみると、少しだけ猫の心境が想像できるかもしれません。
猫が不機嫌になるシチュエーション
猫が不機嫌になるシチュエーションは、とても些細な出来事の中に潜んでいます。そして、それは人間の感覚では気づきにくいものも多いでしょう。
機嫌を損ねているときの対応は重要ですが、それ以前に不機嫌になりやすい場面を理解することも大切です。次にあげる場面は、猫が不機嫌になる可能性があるものです。
突発的な物音
猫はとても聴覚が優れています。特に高音域においては、我々の耳では聞き取れないほどの微細な音にも反応を示します。猫が優れたハンターである理由もこの聴覚が関係しています。
一方で、野生の環境下で生きるために非常に役立つ聴力も、人間と暮らすにはストレスの原因に繋がることがあります。それが突発的な物音です。オーブントースターの音や人間のくしゃみのように、突然大きな音を耳にすると、思わず飛び跳ねるほど驚いてしまいます。
これが日常的に繰り返されればストレスになります。そして、その音を立てても平然としている人間に苛立ちを覚えるのです。不本意でありながらも、猫を驚かせてしまった際は、一言お詫びの言葉をかけるようにしてください。
苦手な人の訪問
猫は基本的に、一緒に暮らす家族以外の人間に警戒心を抱きます。たとえ、飼い主さんにとって大切な人であろうとも、愛猫もその人と親しくなれるとは限りません。
猫が苦手と判断した人間が接近してくると、警戒からイカ耳や目を丸くする仕草が見られます。これは興奮状態に突入しており、無理に触れ合おうとすると怪我をする恐れがあります。
よって、お互いに嫌な思いをする前に、訪問してきた方には猫の性格や仕草について予めレクチャーしておきましょう。
爪切りをする
人間の爪が一定のペースで伸びていくのと同様に、猫の爪も伸びていきます。そして、猫の場合は脱皮のように爪が新しくなります。これだけ聞くと、爪切りの必要性に疑問を持つでしょう。実際には、人間と猫がひとつ屋根の下で暮らすうえでとても重要な役割を担っています。
家具に引っ掛けて怪我をしたり、触れ合うタイミングが悪い状況で、我々が怪我をしてしまう恐れがあります。これらのリスクファクターを回避するためにも爪切りは大切です。
しかし、猫にとって爪切りは拷問のようなものです。だからなるべくストレスをかけずに行うことが求められます。一度に全てを終わらせるのではなく、一回の爪切りで2本程度と小さな目標を立てながら切るようにしましょう。
寂しい思いをする
猫はクールなようで、意外と人間との交流を楽しんでいます。これは、実際に触れ合うことばかりではありません。飼い主さんがどれほど愛猫に関心を持ってくれるかという部分にかかります。猫は家に着くと本気で信じ、あまり関心を寄せないでいると寂しさを感じてしまいます。
また、普段から気をつけている場合でも、多忙のあまり愛猫の様子をあまり見られなくなることがあります。このようなケースでは、悪気わなくても不機嫌になってしまいます。猫も人との触れ合いや、注目を求めていることを意識してみてください。
猫の不機嫌を予防する方法
猫が機嫌を損ねるシチュエーションを踏まえ、猫が少しでも機嫌よく過ごせる方法を考えてみたいと思います。
猫が苦手とすることは極力避ける
猫と人、双方の安全を守るための爪切りやブラッシングなどの手入れを除き、猫が苦手だと分かっている状況は極力回避するように配慮しましょう。
特に訪問客を迎える場合は、愛猫が安心して寛げる環境を整えましょう。いかなる状況においても、睡眠・排泄・水分補給・食事はできるようにしてください。
猫と過ごす時間を大切にする
猫が我々に求める触れ合いは、短期的なものです。とても甘えん坊な性格の猫を除き、猫は数分間でも付き合ってもらえれば満足します。
だから、一日の中で猫と触れ合う時間を必ず確保しましょう。そして、その僅かな時間は愛猫に注意を向けるようにしましょう。
通院後はしっかりと休ませる
持病の有無に関係なく、動物病院に行く機会はやってきます。人間でも大抵の人は病院を嫌います。それは猫も同じです。やむを得ない状況であっても、通院はストレスになります。猫によっては、帰宅後も落ち着かない様子が継続する場合があります。
たとえ愛猫の健康のためとはいえ、病院へ連れていくと飼い主さんはもれなく悪者です。帰宅後は、愛猫をゆっくりと休ませましょう。そして、なるべく刺激しないことが大切です。
まとめ
今日のねこちゃんより:マフラー / ♂ / 1歳 / ミヌエット / 3.4kg
愛猫から、不機嫌オーラがひしひしと伝わってきたときは冷静になりましょう。焦りや油断は禁物です。まずはそっとしておくこと。これに尽きます。
不穏な空気の中、一生懸命その場を明るくしようと努めるものの空回りしてしまうことがありますね。猫の機嫌も早く直してほしいあまり、撫でて宥める行動やしつこく遊びに誘うなどの行動をとると逆効果になってしまいます。
焦らず、急がず、こちらは穏やかな気持ちで見守るようにしましょう。万が一、不機嫌の引き金が我々にある場合は素直に謝りましょう。
「ありがとう」と「ごめんなさい」は良好な関係を築くうえで重要な言葉になります。これは猫との関係においても同様です。我々が仕草から猫の気持ちを理解しようとするように、愛猫も雰囲気から飼い主さんの気持ちを察しようとしていることを忘れないでください。