ストルバイト結石とは
ストルバイト結石とは「尿がアルカリ性に傾く(pHが高い)ことでできる結石」のことです。
1歳~6歳と比較的若い猫に起こる病気です。pHが6.6以上で結晶化(結石になる前の肉眼では見えない粒子のこと)しやすくなります。治療法は食事療法や投薬治療が中心となります。症状や石の大きさにもよりますが、適切な治療をすることで約2ヶ月ほどで消失します。
ストルバイト結石の原因
ストルバイト結石になる原因は主に以下のようなものが挙げられます。
1.偏った食生活
キャットフードには「カルシウム、リン、マグネシウムのミネラル成分」が含まれています。これらの成分のバランスや、過剰に摂取してしまうと尿のpHバランスが崩れ、尿がアルカリ性に傾くことでストルバイト結石が形成されます。
また、人間の食べ物を与えることでもこの病気を引き起こす場合があります。例えば、チーズはミネラルが多いので好ましくありません。そして、おやつも多く与えてしまうとこの病気に限ったことではありませんが猫の身体にはよくないので注意が必要です。
2.水分不足
猫は元々砂漠で生活していた動物であるため、こまめに水を飲まなくても生きていけるように身体が適応してきました。
なので水分補給をする習慣があまり身についていません。これらの習慣は尿の濃度を上げてしまい、尿に溶けるミネラルを結晶化しやすい状況をつくってしまいます。ドライフードとウエットフードを併用し、水分補給をしてあげましょう。
3.トイレの環境が悪い
猫は綺麗好きな動物です。トイレの掃除が行き届いていなかったり、多頭飼育でトイレの数が足らなかったりするとトイレを我慢してしまうことがあります。
トイレを我慢すると膀胱炎を発症し、結石もできやすくなります。トイレはこまめに掃除し、多頭飼育の場合は猫の数+1個のトイレを用意することで猫にとっては心地よいトイレ環境になります。
4.ストレス
ストレスも結石ができやすい原因のひとつです。猫が感じやすいストレスは以下のようなものがあります。
- 運動不足
- 来客
- 引越しによる環境の変化
- 新たに猫を迎え入れる(相性の問題やトイレ不足)
- 猫が使う食器やトイレが変わる
- 騒音など
ストレスになりうる要素はたくさんありますが、中でも来客を避けることは不可能なので、慣れない来客と顔を合わすことなくトイレや水分補給ができるように環境を整えることがおすすめです。
猫のストルバイト結石の症状
ストルバイト結石ができると以下のような症状が出現します。
- トイレの回数が増える(健康な猫は1日2回程度)
- 頻繁にトイレに行くのにも関わらず少量の尿しか出ない
- トイレに時間がかかる(うずくまったり、痛がったりする)
- トイレ以外のところで排尿する
- 尿の色が赤、オレンジ、茶色などになる
- 腹部を触られることを嫌がる
- 腹部や陰部を頻繁に舐める
- 尿とともに砂状の結晶や結石が出る(猫砂がキラキラと光って見える)
- 尿が出ない(危険な症状)
最も危険な症状は最後に挙げた尿が出ないことです。
この症状は結石が尿道を塞いでしまうことで起こります。排尿ができないと尿毒症を引き起こします。最悪の場合3日で死に至る場合もある非常に危険な状態です。
尿が出ないと気づいたら速やかに動物病院を受診しましょう。身体の構造上、オス猫は悪化しやすい傾向にあるので要注意です。
猫のストルバイト結石の治療法
ストルバイト結石と診断された場合、中心となる治療法は療法食による食事療法です。結石の大きさや猫の状態によって異なりますが、およそ4~6週間の食事療法で結石が溶けるといわれています。食事療法だけでは改善できない状態では投薬治療や手術を行うこともあります。
猫の療法食とは何か
療法食とは症状に合わせて成分を調整されて作られた食事のことです。ストルバイト結石の場合はマグネシウムやリンなどの量が調整されています。
薬とは異なりますが、必ず獣医さんの指示に従って食べさせなければならない食事です。総合栄養食の中にも尿路結石に配慮した食事が存在します。
しかし、これはあくまで健康な猫が尿路結石を予防するために食べる予防食という位置づけです。ストルバイト結石結石と診断され、療法食に切り替えるようにと指示があった場合は療法食を用います。
猫の尿路結石は再発しやすい
一度尿路結石を発症した猫は再発することがあります。基本的には2ヶ月ほどで石が消失しますが、療法食を継続したほうが好ましいと診断された場合は獣医さんの指示の元で療法食を続けるようにしましょう。
予防食に切り替える場合も獣医さんとよく話し合って愛猫の状態に合うものを選ぶようにしましょう。
危機的状況を食事療法で乗り越えた我が家の愛猫
1.ストルバイト結石の再発
我が家の愛猫は過去に膀胱炎とストルバイト結石を発症した既往歴を持ちます。療法食をなかなか食べてくれず、市販の尿路結石に配慮した食事で様子を見ていました。
しかし、他の持病の定期検診で僅かな体重減少が認められ尿検査を薦められました。万が一の時に手術ができない(持病の影響で麻酔がかけられないため)ことを考え検査をお願いするとストルバイト結石が再発したことが分かりました。
この時点でストルバイト結石を疑うような症状はありませんでした。
2.稀な体質だった愛猫
愛猫の場合、幸いにも結石ではなく今後結石になる可能性がある結晶のみが検出されました。
しかし、問題は結晶の数にありました。砂状の結晶の数が非常に多く、獣医さんには「石の材料をこんなに多く持った猫は稀です」と言われました。
そして療法食のサンプルをいただき、療法食による食事療法を始めることになりました。この時点でのpHは8.0でした。正常値は医師により意見が分かれますが大体6.0~6.6の範囲内で、pH7以上でストルバイト結石のリスクが上がります。
pHも高くなっており、さらにストルバイト結石の値は(+++)と判定されました。また、エコー検査では膀胱や腎臓に砂が溜まっている様子がはっきりと写し出されていました。
3.食事療法の開始
我が家の愛猫はウエットフードを全く食べず、療法食はドライフードのみで対応し、獣医さんに許可をいただいたうえでちゅ〜るの「下部尿路配慮」を併用することにしました。療法食は最も好んで食べたロイヤルカナンのpHコントロール1を用いました。1ヶ月間、食事療法のみで様子を見ることになりました。
4.1ヶ月後の検査結果
危機的状況の中、食事療法のみでの治療はとても不安でした。そして元々食が細いうえに、療法食に切り替えたことで食欲がさらに減ってしまったことも心配でした。
しかし、1ヶ月後の検査結果は獣医さんも驚くほど良い結果が出ました。pHは8.0→6.0に改善し、ストルバイト結石の値は(-)を示していました。そしてエコー検査や超音波検査の結果、膀胱や腎臓に溜まっていた結晶はほぼ消失していました。
懸念していた体重減少も食事量が減ってしまった割に少し増えているという結果でした。
5.今後の治療
食事の影響を受けやすく、療法食による食事療法が愛猫には相性の良い治療法であると今回の結果から判断されたため、今後も療法食を食べさせることになりました。
現在食べている療法食は塩分を多く含むタイプなので、腎臓への負担を考慮し、別の療法食との併用を薦められました。今後は様々な療法食と併用、変更しながら良い状態を維持していくことを目標に治療を継続していきます。
先に述べた療法食に含まれる塩分は悪いものではありません。塩分を摂取することで水分補給を促すことができ、排尿によって結晶を排出させる効果があります。
まとめ
今回はストルバイト結石と食事療法のみで乗り越えた我が家の愛猫の例を紹介させていただきました。我が家の愛猫は1ヶ月間の食事療法のみで改善が見られ、食事療法の重要性が分かりました。
しかしどのような病気も必ず個体差があり、必ず食事療法のみで改善するとは限りません。それぞれのケースに合わせて根気強く治療していくことが大切です。