猫の心臓の働きが低下する病気『肥大型心筋症(HCM)』最新の研究でわかった早期発見の方法とは?

猫の心臓の働きが低下する病気『肥大型心筋症(HCM)』最新の研究でわかった早期発見の方法とは?

ペルシャ、メインクーン、アメショなどの血統種で好発する肥大型心筋症。遺伝子がかかわると言われてる遺伝性疾患ですが、ミックス(雑種)の猫ちゃんにも実は多い病気です。早期発見は難しい病気ですが、最近は研究が進んできたようです。

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記事の監修

北里大学獣医学科卒業。埼玉県内の動物病院で勤務医をしながら教育・研究にも携わっており、大学では『伴侶動物の鉄代謝』をテーマに研究しています。『猫は小さな犬ではない』という格言のもと、何よりも猫ちゃんの健康と福祉の向上を一番に考え、日々の診療に励んでおります。

肥大型心筋症(HCM)は見つかりにくい

猫と♡

HCMの一般的な症状

HCMは、人間でも見つかっている心筋症の一種です。心臓の筋肉が厚くなり、血液を送り出す心室が小さくなってしまいます。その結果、今まで通りの運動ができなくなったり、ぜえぜえと喘いだりといった症状が出てきます。

また、心疾患からできた血栓が血管に詰まり、痛みと共に足を引きずったり、脳梗塞を起こして気が付かれることもあります。(この場合は昼夜を問わず緊急受診してください)

好発品種としてメインクーンが有名ですが、ペルシャ、アメショでも多いとされており、また、ミックスちゃん(雑種)であっても普通に見られる病気です。

猫のHCMを早期発見する新たな方法

猫心音を効く獣医

いままでは、早期発見は定期健診で心雑音がして偶然見つかったり、心不全兆候が現れて初めて病気が発覚することが多かったです。。

しかし最近、スクリーニングとして血液検査で診断の助けとなる検査方法が出てきたようです。

その検査とは、心臓の機能にかかわるタンパク質、【心筋トロポニンI】と言われる物質を測定することです。

心筋トロポニンIは高感度かつ、特異的に、他の点で健康な猫(基準値0.06ng/mL)からHCMを診断するスクリーニングテストとして利用することが可能であろう。しかし、確定診断には心エコーが必要である。

出典:Cardiac troponin I can be used as a sensitive and specific screening test for the diagnosis of HCM in otherwise healthy cats (cutoff, >0.06 ng/mL). However, echocardiography is needed to confirm the diagnosis.
(Journal of veterinary internal medicine2019May01Vol. 33issue(3))

HCMの早期発見でそなえられること

気になる品種、症状の子は早めに検査

ねこと飼い主

早期に発見し、病態を正確に把握することでACE阻害剤やARBと言われる薬、血栓を抑えたり不整脈のケアなど的確なお薬を使い始めることができます。

また、日常でも体重を適正に保ったり、ストレスをさけ、心臓に負担の少ない生活にすることができます。これは、猫の生活の質をあげ、健康な時間をのばしてあげることにもつながります。

参考文献:
ネコの肥大型心筋症の診断のためのスクリーニング検査としての敏感な心臓トロポニンIアッセイの評価

九州大学大学院

監修獣医師による補足

心臓のバイオマーカー(血液検査)は近年、スクリーニング検査で用いられるようになってきました。一般の動物病院でも外注検査で心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、心筋トロポニン(cTn)、NT-proBNPなどを測定することができ、特にNT-proBNPは簡易検査キットが販売されているので院内で即座に結果がわかります。

しかし、あくまでスクリーニングを目的とした検査なのでそれ単独で診断することは危険であり、確定診断には心エコー検査が必要となります。ですので精密な検査を行うにあたってのきっかけとなればバイオマーカーの意義は大きいでしょう。

また、バイオマーカーは他の様々な要因で変動し、腎不全や甲状腺機能亢進症などがある場合は特に影響を及ぼすので検査結果の解釈には注意が必要です。

獣医師:長谷川 諒

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