猫が人知れず抱えている精神的なトラブル
心と体は密接に関わりあっています。体の健康状態が悪くなることで気分が滅入ることがあれば、逆に精神的なダメージがきっかけで体調を崩してしまうこともあります。
これは人間のみならず、猫も同様です。人間と同じような身体的な疾患を患うことがあるように、猫にもいわゆる心の病というものが存在します。ここでは特に多い精神的な疾患をいくつかご紹介いたします。
1.恐怖症
基本的に無害なものであるのにも関わらず、ある特定のもの(ほうき・掃除機・ダンボールなど)や場所(病院・乗り物など)に対して、強い恐怖反応が見られることを「恐怖症」といいます。
原因
過去に恐怖の対象によって苦痛を感じたことにより、怖い・危険という認識を強く持ってしまった結果によるものが多いでしょう。特に虐待を受けたことのある保護猫には、恐怖症があることも珍しくありません。
症状
- 落ち着きがなくなる
- 飛び上がって驚く
- 部屋の隅に隠れて出てこなくなる
- 呼吸が荒くなるなど
対処法
社会化(猫らしい生活を親・きょうだいとの関わりの中で学ぶこと)が不十分な場合は、ある程度の刺激に慣れることで徐々に恐怖が薄れていきます。つまり、豊富な経験が重要なのです。
虐待の場合は、恐怖対象に加えて人間にも強い恐怖を感じていることがあります。まずはゆっくりと信頼関係を築いていきましょう。そのうえで、敢えて恐怖対象を身近に感じさせながら、無害なものであることを伝えていきましょう。
2.分離不安
飼い主さんと離れることに対して強い不安を抱き、ひとりで留守番をすることが極端に苦手な猫は「分離不安」である可能性があります。
原因
原因は猫の年齢や、環境的な要因など様々なものがあります。その一部を挙げてみます。
- 高齢で強い不安がある
- ひとりになる機会が極端に少ない
- 猫の要求に応えすぎている
- 急に留守番時間が長くなったなど
症状
- 手当り次第にものを破壊する
- ティッシュやご飯をばら撒く
- 飼い主さんの姿が見えないと鳴き叫ぶ
- 体調を崩す(嘔吐下痢食欲不振など)
対処法
分離不安に対する対処法は、日頃から意識的に愛猫がひとりになる環境を作ることが大切です。これは、短時間であっても留守番をする機会は必ず訪れるからです。
そして、帰宅後は愛猫がまとわりついても鳴いても、行動が落ち着くまで構わないことを徹底します。極端に愛猫の要求に応えすぎないことも重要です。
さらに、一日の中で必ず関わりを持つ時間を設けることで、我慢することを覚えてくれるようになります。
3.常同行動
あまり意味の無い行動を繰り返すことを「常同行動」といいます。不安障害の一種に分類されます。
原因
極端に刺激の少ない生活や、スキンシップが少ないなど"関わり"が欠如することで起こることがあります。
その他にも強い不安がある場合や、脳神経系の疾患(脳腫瘍や認知症など)を患っている場合にも見られます。重大な体の病気と不安障害の鑑別が必須です。
症状
- 同じ場所を行ったり来たりする
- 過剰なグルーミングを繰り返す
- しっぽを追う
- 毛布やクッションに吸い付き、食べてしまう
対処法
猫がストレスを軽減できるように、上下運動ができる環境や安心できる穴蔵のような場所を作るなど、まずは環境を見直していきます。そして狩りに見立てた遊びを取り入れるなど、猫に備わる野生の本能を活かした刺激を適度与えるように心がけましょう。
そして、最も重要なのは身体的な疾患を見逃さないことです。常同行動は様々な疾患に伴って見られるので、環境面のみで改善が見られない場合は動物病院を受診しましょう。可能であれば常同行動を動画で記録しておくと診察に役立ちます。
まとめ
精神疾患の背景には、環境の変化やストレスなど一時的なものもあれば、重大な身体疾患が隠れていることもあります。
闇雲に"心の病"と決めつけず、気になることがあれば獣医さんに相談してみましょう。