猫も「認知症」を発症する
生活環境や、フードの質の向上は長寿に繋がるポイントのひとつです。一方で、認知症の問題も無視することはできません。猫が認知症になること自体が意外なことかもしれません。しかし、長く生きられるようになったことで、猫が認知症を発症するケースも見られはじめました。
ここでいう認知症とは、人間でいう「アルツハイマー型認知症」に相当します。これは、一度発達した脳が萎縮する(縮んでしまうこと)により、本来のはたらきが出来なくなるものです。
主に、「新しく記憶すること」、「自分がどこにいるのか把握すること」、「何をすれば良いのか判断すること」、「自分が誰であるかを理解すること」などの基本的な情報が徐々に失われていきます。
猫が認知症になる原因は加齢とストレス
年齢を重ねると、体が思うように動かせなくなることと同様に、脳のはたらきにも変化が生じます。脳の働きを低下させる要因は、次のようなものが挙げられます。
- 小さな脳出血や梗塞(血管が詰まること)
- アミロイドベータと呼ばれる物資が脳に蓄積すること
- タウタンパクからなる神経線維束が蓄積し、脳神経が正常に活動できなくなること
また、ストレスも認知症になりやすくなる要因の一つです。ストレスによって脳内の酸化物質が蓄積するスピードを早めてしまいます。これにより、脳の活動を低下させてしまうのです。
猫の認知症の症状とは?
猫が認知症になると次のような症状が出現します。
- 同じ場所を行ったり来たりする
- ドアの前で立ちすくむようになる
- 大声で鳴き叫ぶようになる
- トイレの失敗が目立つようになる
- 異常に食べるようになったかと思うと、逆に食への興味を失う
- 飼い主さんに対して愛情表現をしなくなる
- 名前を呼んでも反応しなくなる
- 知っているものに対して異常なほど驚く
今まで、当たり前のようにできていたことが徐々にできなってしまいます。また、飼い主さんや一緒に過ごしてきたご家族のこと、やがては自分が誰なのかも分からなくなってしまいます。
食事をしたことを忘れ、何度も欲しがる時期を通り越すと、やがて食事に対して興味を持たなくなり場合もあります。これは、食事以外でも同様です。
猫は比較的トイレを覚えやすい動物ですが、認知症にになるとトイレの失敗も見られるようになります。
猫の認知症を治療する方法
認知症に対する有効な治療法は、人間同様に確立されていません。人間のアルツハイマーにおける治療薬と同じような働きをする猫用の薬は存在しているものの、効果が見られないことが多いのです。
そこで大切なのは、ストレスを予防することです。ストレスは認知症の原因の一つであり、悪化の原因にもなります。よって、できるだけストレスのかからない生活を送ることが愛猫にとっての幸せに繋がるのです。
ストレスを軽減させるためには、次のようなことを意識してみましょう。
- 優しく声をかける
- 失敗しても叱らない
- 安心できる場所を作る
- 危険物は戸棚にしまう
脳の機能が低下すると、失敗が多くなります。たとえ失敗しても絶対に叱らないでください。叱られてしまうと不安を感じてしまいます。不安は認知症の悪化に大きな影響を与えます。
安心できる環境を整えることや、あたたかく見守ることが大切です。認知症特有の徘徊と呼ばれる、うろうろする行動も猫の場合は安全を確保したうえで見守る必要があります。状況によっては、子ども用のプールを活用する方法も有効です。
認知症にかかりやすい猫とは?
認知症の場合、猫種による差はありません。7歳を過ぎたら、あらゆる病気に対して意識を向けるようにしてください。認知症はあくまでもそのひとつです。
そして、10歳を過ぎたらより穏やかに生活できるように心がけましょう。この頃からは、新しい猫を迎えることもなるべく控えましょう。高齢の猫にとって、子猫の存在は良い刺激ではなくストレスになることのほうが多いのです。
まとめ
認知症は脳の機能低下が原因です。問題行動と呼ばれるような行動も見られるようになりますが、本人の意思ではなく病気が引き起こしていることです。よって、躾をし直すことでは改善できません。
人間同様に、猫の介護もたいへんな日々を送ることになるでしょう。誰か一人に任せるのではなく、"皆で協力し合う"ことが重要です。介護の中心となる人を支える手段はたくさんあります。ほんの僅かな時間でも、猫を見守る役目を買って出るだけで十分助かります。
また、認知症に似た症状が出現する他の病気である可能性も否定できません。高齢の猫に異変を感じたら、迷わず動物病院に相談しましょう。