猫にとって『ドライフルーツ』が危険な理由3つ 命に関わる可能性も?

猫にとって『ドライフルーツ』が危険な理由3つ 命に関わる可能性も?

成分が濃縮されているドライフルーツは、猫にとっては命にも関わる危険な食べ物です。飼い主が与えていなくても、好奇心旺盛な猫が気づかないうちに、誤飲してしまう危険もあります。そこでこの記事では、ドライフルーツが危険な理由について解説します。猫にとって危険な食べ物への理解を深めて、大切な愛猫の安全を守りましょう。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

1.特定の有害成分による中毒

いろいろなドライフルーツ

ドライフルーツの原料となる果物の中には、猫にとって中毒を引き起こす危険な成分を含むものがあります。

これまで犬での死亡例が複数報告されている「ぶどう」は、猫は犬と体の構造が似ていることから同様に害があるとされています。とりわけ、成分が濃縮されているレーズンは、急性腎不全を引き起こし、命に関わるといわれています。

また、柑橘系の皮(オレンジピール・レモンピールなど)は焼き菓子によく使用されますが、リモネンという有害物質が下痢や嘔吐、痙攣、ひどいときには意識障害などの中毒症状を起こします。

そのほか、イチジクやマンゴーも猫が食べると口内炎や嘔吐、下痢などの症状が出る可能性があります。いずれのフルーツにも危険性があると考えて、注意が必要です。

2.濃縮糖分による便の異常

トイレに入る猫

ドライフルーツは製造過程で水分が抜けているため、生のフルーツよりも同じ量あたりの糖分(果糖)がかなり濃縮されています。急激な高濃度の糖分摂取は、猫にとって病気を引き起こすリスクも高まります。

ドライフルーツのように高濃度の糖分が小腸に流れ込むと、小腸内の浸透圧が急激に高まります。すると、この浸透圧を調節し体液とのバランスを取るために、大量の水分が体内から腸管内へ引き込まれます。その結果、便の中の水分量が増えて下痢や軟便を引き起こすのです。

これは、猫の苦手成分や中毒とは異なり、単に糖質の過剰摂取による物理的な反応です。糖分を濃縮したドライフルーツは、猫が誤食した際にこの浸透圧性下痢を引き起こすリスクが高い食品といえます。

ドライフルーツ自体が食物繊維を多く含み硬いため、消化に悪いことも下痢や軟便につながりやすい食品である原因の一つです。

実際に猫が日常的にドライフルーツを大量に食べるケースは多くないので、慢性的な糖尿病よりも浸透圧性の下痢や軟便のほうが比較的起こりやすい傾向にあります。

3.糖分過多による急性高血糖

元気のない猫

糖分の摂りすぎは、浸透圧の影響による下痢だけでなく、『急性高血糖』と呼ばれる血糖値の急上昇を引き起こす危険もあります。

血糖値の急激な上昇は、慢性的な糖尿病とは違い一過性のため、健康な猫であれば、膵臓からインスリンが大量に分泌され、通常は数時間で血糖値は正常に戻ろうとします。この急激な高血糖は体にとって大きな負担となり、その結果、一時的な多飲多尿や、倦怠感による元気消失、食欲不振などの体調不良につながることがあります。

ただし、これらの症状が一時的で済むのは、猫が健康で、かつ過剰な量を摂っていない場合に限られます。糖代謝がもともと苦手な個体にとっては大きな負担になってしまう危険性があります。

人間が少量だと思っても猫にとっては限度を超えてしまう危険を考え、ドライフルーツの誤飲には十分に注意するようにしましょう。

まとめ

ドライフルーツと紅茶と猫

以上の点から、ドライフルーツが猫にとって危険な食品であることをご理解いただけるかと思います。

結論としては、たとえ少しであっても猫にとってはドライフルーツが危険なケースがあるため、飼い主が与えないようにするのはもちろん、猫の好奇心による誤飲にも注意してください。

ドライフルーツ入りの食べ物の中でも、ミルク系の香りがするパン類や猫のドライフードのようなカサカサ音がするグラノーラは、猫がいたずらしてしまう可能性があります。保管場所は猫の手が届かない場所にし、食べ残しや包装もすぐに処分するなど、日常的な管理が大切です。

また、猫がドライフルーツを口にしたことに気づいたら、家で無理に吐かせようとせずに、すぐに動物病院へ連絡して受診するようにしてください。ドライフルーツの種類によっては、ごく少量でも腎不全や中毒症状を引き起こすため専門的な判断が必要です。

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