猫の『体内時計』が正確なワケ

毎朝同じ時刻になると起こしに来る猫に、一定の時間になると特定の場所に向かう猫。これらの行動に"もしかして時計が読めるのでは"と驚くことがありますよね。
実は、猫はある程度"時間が読める"動物なのです。その手段とは『体内時計』に従うこと。猫の体内時計は驚くほど正確なので、まるで時計を理解しているように見えるのです。
今回は、『猫の体内時計』がピッタリ合う理由とその秘密を5つ紹介いたします。
1.遺伝子に刻まれているから

猫の優れた体内時計は、もはや遺伝子レベルで組み込まれた能力です。なぜこのようなスキルを得たかというと、厳しい野生の世界を単独で生き延びるためでした。
集団生活を送らない猫は、あらゆる行動を自力で管理する必要があります。これができなければ命が危ぶまれるといっても過言ではありません。
そこで『狩りをする時間』『安全な場所で休む時間』『パトロールをする時間』などが正確にわかるように進化したというわけです。
そしてこの能力は、現代を生きるイエネコにもしっかりと刻み込まれています。おそらく、毎朝同じ時間に叩き起こしに来るのは"正確な腹時計"のせいでしょう。
2.時間の間隔を識別できるから

1976年に行われた実験において、猫は『5秒』と『20秒』の違いを識別できることが明らかになりました。
つまり腹時計がピッタリ合うのは、遺伝子レベルの能力に加え、時のリズムを体で刻むことができるからというわけです。
3.太陽の位置を把握できるため

さらに猫には『太陽の位置を把握する』という能力があります。日々観察している太陽の位置からおおよその時間を割り出し、"今何をすべきか"という行動に結びつけているのです。
そしてその能力は食いしん坊の猫の腹時計のみならず、『帰巣本能』にも影響を与えています。
猫は迷子になったとき、『この場所に太陽が見えるのはおかしい』と気づくのだそう。そして、そのズレを修正する中で自宅に辿り着くことができるのです。
とはいえ、無事に帰宅できる保証はありません。仮に家の位置を特定できたとしても、事故に遭うリスクや他の猫に攻撃されるリスク、子猫の場合はカラスにさらわれるリスクを伴います。安易に外出させるのはやめましょう。
4.タンパク質中心の食生活によるもの

早稲田大学理工学部の研究により、『タンパク質やアミノ酸が体内時計を同調させる』ことが明らかになりました。
猫は純粋な肉食動物なので、まさにその食生活はタンパク質が中心です。つまり、元々猫に備わった能力を支え、維持させてきたのは"猫の食性"だったというわけです。
5.観察力・学習能力・ルーティン化

これまでお話してきた内容だけでは、『完全室内の猫はどうなの?』という疑問が残るかもしれませんね。家でまったり過ごす猫の体内時計はなぜ狂わないのでしょうか。
その秘訣は、優れた観察力と学習能力、ルーティン化した生活にあります。愛猫の1日を振り返ってみてください。
飼い主さんの生活リズムとリンクする部分はありませんか?そう、現代っ子の猫の"太陽"は飼い主さんの行動なのです。
飼い主さんの睡眠状態や行動を観察しては覚え、自身の食事や排泄、お昼寝時間などをルーティン化させているからこそ正確なリズムができるのです。
もちろん家の中からも本物の太陽を観察することはできます。遺伝子レベルの能力や野生の勘、室内猫ならではの判断材料を総合的に合わせた結果、令和の猫においても体内時計は健在というわけです。
ちなみに飼い主さんが不規則な生活を送ったり、不必要に構いすぎると猫が不安定になるのは、この体内時計(ルーティン)が乱れてしまうからです。愛猫が心穏やかに過ごせるように、猫のリズムは壊さないように配慮してあげてください。
まとめ

猫の体内時計が正確である理由は、遺伝子レベルで獲得したスキル・時間の間隔の理解・太陽の位置の把握・猫特有の食生活・室内猫ならではの判断材料が組み合わさった結果でした。
改めて野生の過酷さや、猫の逞しさ、人間との共存スキルの高さを思い知らされた気がします。
ちなみに余談ですが、早朝の奇襲(激しく起こす行為)を阻止したい飼い主さんにおすすめの方法があります。就寝前に少量の食事を取らせてみてください。深夜の運動会も含め、行動が穏やかになるでしょう。
もし余裕があれば『自動給餌器』の活用も検討してみてください。正確なリズムによって飼い主さんを起こすのではなく、機械に吸い寄せられるはずです。